「んじゃ、世話になったな。」
マイキーはそう言うとバイクに乗ってエンジンをかけた。
「おー、死ぬなよ。」
半間くんはそう言って俺らに手を振った。
ちなみに、俺はまたマイキーの後ろに乗っている。
千冬は猛反対していたけど、俺がいいって言ったら「じゃあいいけど…。」と言って俯いた。
春千夜くんはどっちにしろ嫌そうだったけど。
「絶対騒ぎそう…。」
俺がそう言うと、マイキーも「確かに。」と返してくれた。
…着いたらなんて言おう。
まず、謝罪かな。
俺はそんなことを考えながら、少し笑った。
「はい、着いた。」
マイキーはそう言うとゆっくりとドアを開けた。
「あ、やっと来た。」
竜胆はそう言ってため息を吐いて、蘭くんは「遅すぎ~♡」とにこにこ笑いながらキレていた(おそらく)。
「おかえりなさい、総長。」
ココくんは律儀に頭を下げて言った。
「ん。あ、どら焼きある?」
マイキーはこんなときでもマイペースだ。
「たい焼きならこっちに。」
斑目くんはそう言って手招きした。
マイキーはたい焼きがある方へと行き、俺はとりあえず立っていた。
それに気づいた千冬とカクちゃんは、「こっちこいよ。」と俺を誘った。
「大変だったな。お前らも。」
カクちゃんにあの一連の出来事を話すと、そう返事を返してくれた。
「って、反応薄いな…。」
千冬は意外だったようで、そう呆れた声をして言った。
「ま、こんなもんでしょ。」
俺がそう言うと、二人は
「「こんなもんでしょじゃない!!!!!」」
と俺を叱った。
…俺の価値観がおかしいのか、それとも周りがおかしいのか。
俺にはわからないが、とりあえず「え~…。」とだけ返した。
「ってか、千冬。野良猫見にいくって言ってなかったっけ?」
俺がそう聞くと、「見に行ったけど逃げられた。」と千冬からふてくされた声で返事された。
「そういや、俺らがいない間、鶴蝶はなにしてたんだ?」
千冬がそう聞くと、カクちゃんはため息交じりに答えた。
「暴れ馬抑えてた。斑目とかココとか蘭とか他数名。」
「わーお、すごいハード…。」
頑張ってたんだね、カクちゃんも。
「とりあえず、帰ってきたからそれでいいかとは思ってるけどな。」
カクちゃんは少しだけ寂しそうな笑みをこぼして言った。
「…って、もうかなりの時間話したな。さ、俺は飯を作るか。」
カクちゃんは時計を見てそう言い、椅子から立ち上がった。
「カクちゃん!手伝う!」
「あ、俺も!」
千冬と俺もそう言って椅子から立った。
「タケミチ、お前は飯を消し炭にすんだろ?w」
「は!?しねーし!」
「絶対嘘だw相棒は飯を炭にしてくれることを祈ってるぜw」
「千冬まで!?」
…そんな下らない会話をしながら、俺らはキッチンへと向かった。
:ここから鶴蝶視点です:
…しばらく時間が経って、みんなは就寝したのだが…。
「今日は寝れねぇ。」
俺はなんかずっとベッドに入っておくのもなんかなぁ、と思い、少し外を散歩することにした。
みんなが寝ている部屋から静かに外へ出て、ベランダの方へ向かう。
「しっかし、外は暗いな…。今日は新月かよ。」
俺はそんなことを独りでつぶやきながらベランダの方へ出た。
そこには、静かに星を眺めるマイキーの姿があった。
俺が声をかけるのをためらっていると、マイキーの方が俺に気づき、「こっちに来いよ。」と言ってくれた。
「よく気づきましたね…。」
俺がそう言うと、「気づかねぇ方がおかしい。」とマイキーは答えた。
「…あのさ。鶴蝶。」
「何ですか。」
「…俺さ、あと14日で死ぬんだけどさ、俺、死ぬ前にタケミっちに「大好きだ」って伝えたいんだよ。で、どうすればその思いが伝わるかなって。」
…一気に情報量が来た。
まず、マイキーがあと14日で死ぬってことと、タケミチに大好きって伝えたいこと。
で、どうすれば思いが伝わるか。
…俺に言ってくるってことは直接言うのは恥ずかしいってことか?
…イザナだとどう返すかな…。
…イザナ…。
…あ。
「後悔しなければなんでもいいと、俺は思います。」
「…どうして?」
「俺は、親が交通事故で死んでから、施設に入って、イザナに救われました。確かに、周りから見ればただの主従関係ですけど、イザナの精一杯の愛情表現が偶然それだったってだけで、特に嫌と思ったこともなかったです。…けど、関東事変でイザナを失って、初めて後悔したんです、もっとイザナの愛情に応えてあげれば良かったって。…だから、俺は、俺のような最後をお互い辿ってほしくないと思います。」
俺は泣きそうになったのを頑張って堪えた。
いろいろめちゃくちゃではあったけど、これが伝われば何でもいいと思った。
マイキーは、少し間を置いて、俺に言ってくれた。
「まだ、兄貴(イザナ)の事、好きでいてくれるやつがいてよかった。」
「理由を聞いたのは、少し試しただけ。後悔しなければ、か…。」
マイキーはそう言うと、俺の方を向いて少し微笑んで言った。
「ありがと。じゃあ、思いついた案を試してみる。あと、お前は兄貴のことを好きなままでいてくれ。お前しか、兄貴を語れないから。」
マイキーはそう言って「じゃあ、先に戻るな。」とベランダを去った。
…誰もいない場所になったからか、抑えていた涙が一気にあふれ出した。
「…イザナ…。」
静かなその場所には、俺の泣き声だけが聴こえていた。
~第三部 休日編 完~
マイキー殺害まで あと 14日
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