テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
💛「舘さんが取り憑かれてる?」
岩本の帰宅を首を長くして待っていた渡辺は、岩本が帰るなり、ことのあらましを説明した。
💛「ちょっと何言ってんのか全然わからないんだけど」
💙「だから、涼太の家に俺がいんの!」
💛「は?どういうこと?翔太が舘さんの家にいるなら今ここにいる翔太は翔太じゃないの?」
💙「本物は俺だよ!でも、そっくりなのがいんの!!」
話の要領を得ないまま、渡辺はとにかく来てと言われるままに2人で宮舘の家を訪ねた。
インターホンを鳴らすと、中から出てきたのは、あの『花』だった。
🌸「あっ」
岩本は驚いて後ろを振り返る。
後ろにも渡辺がいる。前にも渡辺そっくりの花がいた。花は渡辺をみとめると、警戒するように足をもつれさせて逃げて行き、今度は宮舘が出て来る。
❤️「なに?俺たちに何か用?」
💙「用っていうか…気持ち悪いだろ、俺にそっくりの同居人とか」
岩本は驚いたまま、固まっている。宮舘の後ろに隠れた花の姿を凝視していた。
💛「舘さん、噂の花屋に行ったって本当?」
❤️「行ったよ。そして、大きな球根入りの鉢植えを貰ってきた。育って、咲いたのが翔太だよ」
💙「だから俺の名前で呼ぶなって」
🌸「同じ名前なだけだろ」
💛「だったらその花俺にちょうだい」
❤️「は?」
💛「だって、翔太は俺のだもん。舘さんに取られるわけにいかない、返してよ」
💙「俺ここにいるけど?」
❤️「やだよ。なんで照にやんなきゃいけないんだよ」
🌸「そうだぞ、俺は涼太のだ」
💙「お前、俺と同じ顔と声で変なこと言うな」
❤️「いいからもう帰ってくれ。俺たちに構うな!」
宮舘はそう言い放つと、玄関ドアの外に2人を締め出した。それからはいくらインターホンを鳴らされても出なかったし、震える花を抱きしめて懸命に背中をさすってやった。
翌朝。
いつものように日の光で目を覚ますと、宮舘は花の頭頂部にあった双葉の芽が一枚、落ちてしまっているのに気づいた。朝日を浴びると元気よく目を覚ますはずの花も、今朝はどこか顔色が悪い気がする。
宮舘は、花の頬をそっと触ってみた。
❤️「どうした?お外行こうか?」
花は力無く首を振る。
そして、弱々しい声で土に還りたい、と言った。
❤️「やだよ、翔太…」
宮舘は花の華奢な身体を抱きしめた。
❤️「水、飲む?」
弱々しく頷き、血色の悪い唇に少しずつ水を含ませると、花は微笑んだ。このまま花が消えていきそうで、宮舘はたまらない気持ちになる。ベッドから出て、窓を開けると、こんな日に限って外は曇っていた。昼間の最低限の明かりはあるが、今にも雨が降り出しそうだ。
🌸「涼太…」
自分を力無く呼ぶ声がして、ベッドに戻った。空を彷徨う手をそっと握り、唇に口付ける。
🌸「俺、あいつの代わりなの?」
❤️「そんなことないよ。翔太が好きだよ」
🌸「でも、あいつも翔太って…」
❤️「たまたま同じ名前なだけだよ」
はっきりそう言うと、花は嬉しそうに笑って、ゆっくりと目を閉じた。そして、長い長い眠りについた。
コメント
2件
寄こせとか言い出す照がほんとにもう……人の気も知らないで🥺