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#TL
瀬名 紫陽花
14,533
#BL
多 動 症 .
30
「そ、そうだったんだ…それは、辛かったね……」
「ふっ、慰めてくれるんですか? 先輩やっさし~♪」
いつもの憎まれ口に戻ったけれど、その声の底には、過去の苦い記憶に対する拒絶と
どこか小さく怯えるような寂しさが滲んでいる気がした。
「まあ、それ以来、お酒の席の一気コールのノリとか、ちょっとトラウマなんですよね」
「そっか…なら、そんな無理しなくていいからね。お酒なんて自分のペースを守って、楽しく飲むのが一番なんだから!」
私が少しお姉さんぶって胸を張ると、佐藤くんは一瞬呆気に取られたように目を丸くし
それから珍しく少し照れたように頬を掻いた。
「……ありがとうございます。先輩」
そのときだった
店内の照明が一段と賑やかに明滅し、スピーカーからコールが鳴り響く。
「はーい皆様ご注目~!!宴会も中盤ということで、今から景気良く『王様ゲーム』やりま~~っす!!」
幹事役の先輩のテンション高い声に、座敷が一気に拍手と歓声で包まれた。
私はリアルな王様ゲームなんてテレビの中でしか見たことがない。
少しの緊張と、不謹慎なワクワク感を抱きながら、隣の佐藤くんに小声で話しかけた。
「王様ゲームって、あれだよね?番号がついている割り箸を引いて、当たった王様の命令には絶対服従、っていう……」
「そうですね。でも男女混合の社内飲みだと、たまにハチャメチャな命令が飛び出して大惨事になりますよ。……先輩、大丈夫ですか?」
佐藤くんがニヤッと意深に笑いながら、私を覗き込んでくる。
「え?な、私は大丈夫だよ!」
「ほんとですかー?だって先輩、お酒弱いし。変なこと命令されたら、断れずに押し切られちゃうタイプだし……」
「だ、誰が!私だって、嫌なことはちゃんと断れるわよ!」
「そうですかねー?じゃあ、もし先輩が王様になったら、俺が喜ぶような面白い命令、期待してますね?」
「へ、変なプレッシャーかけないでよ!大体ランダムなんだから分かんないし…」
そうして、いよいよ割り箸が配られて王様ゲームが始まった。
ただ、【今のご時世、コンプライアンス的に男女ペアへの命令は良くない】
という上司の鶴の一声により、今回は変則ルールが適応された。
「王様が指定した『番号の1人』が、王様の指示に従う」という、1人制の王様ゲームだ。
(そもそも、王様ゲーム自体を無くしてもいいと思うけど……)
心の中でそんな冷静な突っ込みを入れつつも
周囲の熱気に流されるように、私も自分の引いた割り箸の数字を隠した。
「じゃあ、記念すべき第1回目!王様は誰だ───!?」
「はーい、私!」
立ち上がったのは、派手なメイクのギャルっぽい年上の先輩社員だった。
彼女はニヤニヤしながら、手元の割り箸を掲げる。
コメント
1件
ここで王様ゲーム入れてくるのは最高すぎ!!