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夏の風物詩が泣き叫ぶ中、僕は病院のベッドにいた。
ここに入院した理由は、僕の足が骨折した……というより骨折させられたからだ。
“白い化け物に襲われて骨折した”というのが本当の理由だが、当然周りの人達は信じないだろうし言わないことにしている。
いい加減暇になったから、スマートフォンでSNSを開く。
そして、自分自身の名前で思いついたように検索をかける。
『桐生翔(きりゅう かける)』
すると画面には、とあるネット記事のリンク先が貼られたものがヒットする。
そこに飛ぶと、当然ながら僕のことを書いた記事が表情される。
【中学記録を持つ未来のホープ桐生翔! 事故で足を大骨折!? 競技継続は──】
大袈裟にそう書いてあった。
自慢になるが、自分は陸上競技で中学時代に記録を作れるくらい速かった。
ただ高校に入ってからというもの、伸び悩んでしまった。
そのせいかネットでも散々な言われようで、早熟だったとか指導者が悪いとか悪口が溢れていた。
直接、嫌がらせを受けたこともある。
そのせいか、色んな人に迷惑をかけてしまった。
ただ自分が事故に遭ってからというもの、流石にそういう悪口や嫌がらせも無くなってきたらしい。
……とんだ手のひら返しだ。
ネットが正義というわけではないが、情報社会故にどうしてもそういうものは嫌でも目にしてしまう。
情報というものにみな惑わされすぎだ。
自分も、この社会を生きる皆も。
実際、事故に遭ったその日には特に痛感した。
僕が怪我をした場所は、都市伝説で有名な館。
死神人形が出るという噂の館で、僕は本当にその子に出会った。
都市伝説では、死神人形に出会った者は殺されるらしい。
でも死神人形と呼ばれたその子は、本当は物凄く繊細で優しかった。
ネットであれやこれやと噂を立てられたせいで、殺されると思っていたがそんなことはなかったのだ。
ほんと、自分を含めて人間ってしょうもない。
そう思えた。
……だからこそ、あの事件が信じられない。
適当に僕は、最新のネット記事を閲覧する。
すると、僕の事故に関連したものが画面に現れる。
【桐生翔の指導者、自宅で死亡。死因は何者かによる他殺か】
僕の指導者である先生、三浦湊(みうら みなと)先生が、僕が怪我をしてから数日後に殺された。
僕が都市伝説スポットに行こうとしたきっかけを与えたのもこの先生だ。
色々ぶっ飛んでいた先生だったけど、明るくてよく陸上に関するアドバイスをよくしてくれた。
指導者として、僕としてはいい先生とは思っていた。
そんな三浦先生が、殺された。
僕はきっと知っている。
その犯人が誰なのか。
理由は、その現場に残されていたものが物語っている。
血の跡が残った汚れた黄色いレインコート。
子供サイズだ。
僕が出会った死神人形が着ていたサイズと、恐らく同じだ。
もちろん、それだけが理由ではない。
彼女が時折、僕の学校や先生について聞いてきたというのもある。
その時は追求しなかったが、よくよく考えればなぜそのことを聞いてきたのか。
答えはやはり、先生の情報を聞き出したかったのだろう。
なぜあの子は、先生を殺したのか。
そこまでのことを、あの先生はしたのだろうか。
分からない。
本当に訳が分からない。
「クエリィ……どうしてなんだ……」
僕は死神人形が名乗った名前を、ボソリと呟いた。
……分からないといえば、三浦先生に関する記事だ。
三浦先生の遺体の状態としては、めったざしにされていて穴だらけ。
出血多量での死亡。
悲惨な最期だというのに、記事の文章だけ読むと先生の死に顔が異常だったらしい。
“笑っていた”のだ。
……三浦先生、貴方は一体何をしたんだ。
ふと、僕はあの時のことを思い返す。
僕が都市伝説スポットに行こうとした、あの日を──。