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第59話:家庭のサイコパス動画
夕暮れどき。
リビングの照明がやわらかく灯り、水色のパーカーに短パン姿のまひろは、ソファに寝転がってヤマホを操作していた。
隣では、ラベンダー色のブラウスにベージュのスカート姿のミウ。
イヤリングを揺らしながら、コップに入ったエターナルシェル水を手にしている。
「ほら、また“おすすめ”に出てきたよ」
まひろが画面を見せると、タイトルには大きく「サイコパスとは?」と表示されていた。
再生を押すと、明るい音楽とともに協賛エンターテイナーの映像が始まる。
緑のスーツを着たさんかくという男性のキョウテイが、満面の笑みで語りかける。
「サイコパスは危険な言葉を使う人たちです。たとえば──」
直後に画面はぼかされ、ピー音が流れる。
「こうした言葉を口にすると、安心が壊れてしまうのです」
まひろは首をかしげながらヤマホを持ち直す。
「でも、なんでぼかしてるの? ちゃんと教えてくれたほうがいいのに……」
ミウはふんわり笑い、エターナルシェル水を一口飲んだ。
「え〜♡ ぼかしてあるから安心なんだよ。
危ない言葉を知らなくても、サイコパスは悪いってわかるでしょ?」
動画の最後には、明るいナレーションが響く。
「サイコパスを避けて、安心の未来を! 今日もアンズイでしめくくりましょう」
画面に「オワリ」の文字が流れた瞬間、まひろとミウは自然に声を合わせて言った。
「アンズイ!」
小さなリビングに、安心の呪文のような声が響いた。
カメラの赤いランプが、二人のやり取りを静かに記録していた。