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第60話:3つの政治
昼下がりの教室。
水色のシャツに短パン姿のまひろは、机の上に置かれた学習端末をのぞき込んでいた。髪は寝ぐせで少し跳ねていて、目は真剣そのもの。
教師は濃い緑のスーツに縁メガネをかけ、黒板の前に立っている。後ろには「政治のちがい」と書かれた文字と3つの項目が並んでいた。
民主
独裁
大和国政治
「今日は“安心の政治”を学びます」
教師が淡々と話し始める。
端末の画面に映し出された映像。
一つ目は「民主」。人々が列をなし、投票箱に紙を入れているが、映像はすぐに混乱した群衆と喧嘩の場面に切り替わる。
ナレーションが響く。
「民主は意見が分かれ、時間がかかり、安心を壊す」
二つ目は「独裁」。一人の男が演壇に立ち、群衆を怒鳴りつけている映像。人々は顔を伏せ、恐怖に震えていた。
「独裁は市民を不幸にし、安心を奪う」
三つ目は「大和国政治」。
緑に光るカナルーン入力端末の前で、子どもから大人まで笑顔で「ガッコウ」「スーパー」と入力し、最後に「オワリ」と唱えている映像。
「大和国政治は、すべての市民がカナルーンで安心に参加し、未来を守る」
まひろは無垢な瞳で画面を見つめ、小さく首をかしげた。
「民主も独裁も安心じゃないのに、大和国だけは安心なんだね……」
教師はにっこりと微笑み、黒板を指差した。
「そうです。呼び出しカナルーンとアンズイカナルーンがあるから、市民は安心の入口と終止符を必ず守る。だから混乱も恐怖もないのです」
窓の外、校庭に立つ高いアンテナが、ヒスイリンクの光を受けてきらめいていた。
教室の片隅で、防犯カメラの小さなレンズが赤く点滅する。
その光に気づいたまひろは、心の中でつぶやいた。
「でも……全部見られてるのかな」
教師の声が続く。
「民主は古い。独裁は危険。大和国政治は未来の安心。それを胸に刻みましょう」
教室全体で唱和が始まる。
「大和国は未来の安心政治!」
子どもたちの声が響く中、カメラは静かにすべてを記録していた。
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