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2件
初コメ失礼します~😖💞 わかるかは分かりませんが 【⠀愛衣 】の転生垢なんですけど 覚えてますかね…?良ければ仲良くしたいです .ᐟ 書くのが本当に上手で作品自体が好きです 😭
食器の音がひと段落したあと。
台所に少しだけ空白ができた。
その空白にみことが言った。
「……外の空気、どうする?」
それだけの言葉なのに、
指がぴくりと動いた。
外
道路
人
声
思考が勝手に並び始める。
___見られる
___聞かれる
___変だと思われる
LANがすぐに口を挟む。
「今は考えなくていい。
思考、暴走しかけてる」
すちが視線を逸らしたまま言う。
「過去が引っ張られてる。
今の話じゃない」
いるまは何も言わない。
ただ、暇72の感情を見る。
怖い
逃げたい
それと同時に、
少しだけ___知りたい。
その混ざり方を見逃さなかった。
「今日は、出ないでいい」
いるまが静かに言う。
命令じゃない。
判断だった。
こさめが頷く。
「こさも、嘘は見えてない。
『今日は出ない』は、本当」
みことは息を吐く。
「今日は、家にいる未来のほうが穏やかかも」
誰も暇72を見つめすぎない。
答えを急かさない。
俺は胸の奥に溜まっていた息を少しずつ吐いた。
「……今日は、いい」
その言葉は逃げじゃなかった。
「うん」
「それでいい」
「今日は、家の日だね」
短い肯定が重なりすぎず返ってくる。
窓の外では朝の音がしていた。
車の音。
人の声。
妖怪たちは窓辺や天井の隅で静かにそれを見ている。
___無理しなくていい。
誰かが、そう言った気がした。
俺は、カーテン越しの光を見た。
外はまだ怖い。
でも____
今日は
“ここにいていい”
そう思えたことが
少しだけ、誇らしかった。
昼前。
家の中ではゆっくりした時間が流れる。
誰も指示を出さない。
誰も時間を区切らない。
テレビはついているけれど、
誰も真剣には見ていない。
音だけが、部屋を満たしている。
俺はソファの端に座っていた。
逃げ道が見える場所。
でも、誰も追ってこない。
いるまはキッチンでマグを洗っている。
水の音が一定で、うるさくない。
LANは床に座って何かをいじっている。
たぶん、スマホ。
たぶん、どうでもいいこと。
すちは窓際で本を読んでいた。
文字を追う目が穏やかだ。
みことはソファの反対側で、目を閉じている。
寝ているのか起きているのか、分からない。
こさめは床に座って、天井眺めていた。
俺からしたら、妖怪たちの方。
家の中に、普通にいた。
正確に言えば、丸くなっている影。
それを、こさめは見ている。
カーテンの裏で揺れている気配。
匂いにつられて台所を覗く小さなもの。
誰も追い払わない。
誰も指をささない。
___ここ、追い出されない。
その事実が胸の奥で、ゆっくり広がる。
俺は自分の手を見る。
何も持っていない。
何もしていない。
……怒られない。
時間が流れる。
すちはページをめくる音だけを立てる。
LANはあくびをして、そのまま床に転がった。
いるまは暇72の方を一瞬だけ見て、
何も言わず、視線を戻す。
___見られている。
でも、監視じゃない。
みことが目を開ける。
「……今、未来、静かだな」
それは、
「問題がない」という意味だった。
こさめがぽつりと言う。
「こさ、嘘見えない。
ここ、安心」
俺は喉の奥で、息を詰まらせた。
“安心”という言葉を
自分に使っていいのか、分からない。
妖怪のひとりが、俺の足元に、ちょこんと座った。
逃げない。
触れない。
ただ、そこにいる。
俺はゆっくり、背もたれにもたれた。
体の力が少し抜ける。
___何もしなくていい。
その事実が少し怖くて、
でも、悪くなかった。
時計を見る。
まだ、昼前。
今日は、
何も起こらない。
それでいい。
俺は、初めて知った。
何も起こらない時間が、こんなにも