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#ハッピーエンド
芙月みひろ
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「今回は全教科赤点回避おめでとうございます、私!!」
クラッカーの引き紐を引くと、『パンッ』という音と共に色とりどりでカラフルな細い何本ものテープが宙を舞った。
あれから、天馬くんと別れた僕と葵は、近所のスーパーでお菓子やなんとなくパーティーの雰囲気に合ってるかな? と思われる唐揚げや大盛りのポテトフライなどをしこたま買い込んで帰宅した。
鈍器ホーテには行かなかった。なんとなーく嫌な予感がしたから。誰かに会うんじゃないかと。普段なら別に誰に会っても問題ないんだけど、今日に限っては断固拒否をした。さすがにノーブラで行くのはちょっと……。
「おめでとう葵。よく頑張ったね」
「でしょでしょ! 私ってやっぱり天才なのかも。えへへっ」
「そ、そうだね。でも、この飾り付けはどうかと思うけど……」
葵は部屋の壁に、今回のテスト用紙をペタペタと貼って自慢げに胸を張った。そのせいですっごいシュールになっちゃったんですけど。部屋の雰囲気が。そもそもこれ、飾り付けなのかな……。
そんなことを考えていたら、『ピンポーン』と、来訪を教えるインターフォンが鳴った。
「来た来た! ピザー!!」
足早に。そして軽快に玄関へと向かった葵だった。部屋を出る際に部屋のドアを閉めてくれたから、僕は先程あった出来事を思い出す。
天馬くんのことで。
最近はちょっとだけ状況が変わってきたとはいえ、まだまだクラスの皆んなと溶け込むことができていない僕にとって、天馬くんがどのような人物なのかを詳しく知らないのだ。全くと言っていい程に。
だからこそ、あの捨て台詞が気になるのだ。
それだけではない。葵の対応の仕方についてだ。
普段、葵は嫌な目に遭ったとしても、あのような態度を見せるような人間ではない。だからこそ、驚いた。あそこまで敵意を露わにした葵を見たのは初めてだったから。
天満颯真。一体どんな人間なんだ?
「じゃーん! 憂くん届いたよピザ! ピザピザ!」
「あ、ああ。うん、あ、ありがとう」
葵が抱えているそれを見た時、驚愕した。だって、どう見てもLサイズであろうピザを三箱持っていたからだ。な、何人分あるのさ、これ。
「うふふふっ。ピザなんてすっごい久し振りでちょっと頼みすぎちゃった」
ペロッと舌を出して戯けてみせているけど、それ、ちょっとじゃないから。僕も大食漢というわけでもないし、しかも買い込んできた食べ物も山程あるのだ。食べ切る自信が全くない……。
「ちょっ!? 何やってるの!?」
持ってきたピザの入ったボックスを胸に抱き抱えながら、葵はぐるぐるお回り始めたのだ。な、何事だ!?
「ん? ピザ職人のまね。よくテレビとかでやってるじゃん。ピザを片手で回すやつ」
それ、ピザを作る工程でやることであって、すでに完成したピザを回しても意味がないと思うし、箱をぐるぐるしてもそれはせっかくのピザがぐちゃぐちゃになっちゃうよ……。
でも――
「あははははっ!」
「な、なんで笑ってるの?」
「いや、葵はいつでも葵のままだなって思ってさ」
「どういう意味よ!」
『むーっ』と膨れっ面を作り、ちょっと不満気に回るのをやめた葵だった。
「ううん。最近さ。僕も葵もちょっと変だったじゃん? 妙に距離ができてたというか。でも、なんか安心した。葵が変わってないことが」
「喜んでいいのかな?」
「もちろん。いつも通りの葵と、いつも通りの僕でさっそくパーティーを始めようか」
太陽のように眩しく、花が咲いたかのように美しい笑顔を見せ、葵は元気いっぱいに僕に言葉を贈ってくれた。最高の宝物を手渡すように。
「うん! 始めよう! 一緒にピザでも食べて!」
「そうだね、お祝いしないとね」
「あ、ピザのことなんだけど、憂くんってちょっと食が細いじゃん? だから私がこの二枚を食べてあげるからね」
「う、うん。どうぞ今日の主役様」
Lサイズのピザ二枚を一人で食べる女子って一体……。
【続く】