テラーノベル
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道明寺は挨拶だけすると席について注文をした。変に近づくと拒絶されると長命寺が助言したのだ。
「ごちそうさま!」
ちんすこう達は食事を終えると満足そうに店を出る。もうこの星には用がないので次の星に向かうつもりだ。しかし、店を出た三人に話しかける者がいた。
「おたずね者のちんすこ……」
「タックル!」
憲兵NPCである。即座にタックルを仕掛け、不意をついて転ばせる事に成功したちんすこう一味はダッシュで町の外へ向かう。
「町の外に出れば憲兵は追ってこない。さっさとおさらばしようぜ!」
だが、さすがに憲兵は強い。すぐに立ち上がって銃を構える。
「やめなさい!」
すかさずサーターアンダギーが恫喝すると憲兵は硬直状態になった。
「ひぃっ!」
悪党を捕まえるために存在する憲兵ですら彼女の眼光にはすくみ上がるのだ。
「これでも喰らいな!」
ダメ押しとばかりに愛玉子がボトル状の物を投げる。ボトルの口からは怪しい煙が噴き出している。催涙ガスだ。
「ゴホッゴホッ、お、応援を……ゲフッ」
動けない憲兵は応援を呼ぼうとするが、愛玉子の催涙ガスに目と鼻と口をやられて上手く応援が呼べなかった。
「あばよ~とっつぁ~ん!」
どこで知ったのか非常に気になる言葉を投げかけて、ちんすこうは仲間と共に街から出ていった。
「あら、楽しそうね」
その様子をサボテンステーキを食べながら眺めていた道明寺がのんびりとした様子で笑っていた。
「悪人プレイはデメリットばかりが多いのに、なんでやりたがる奴が多いんだろうな?」
呆れつつ、普段から疑問に思っている事を口にする長命寺に、道明寺は笑顔のまま答える。
「そんなの、現実では出来ない事を経験したいからに決まってるじゃない」
そんなものかと思いながら、どんどん小さくなっていく三人の背中を眺める長命寺だった。
「それにしても本当にここのサボテンステーキは美味しいわね。前に現実世界で食べたやつはそこまでじゃなかったのに」
「へー、現実のサボテンステーキなんて食べた事ないな」
二人は他愛の無い会話をしながら、名物を味わっていた。次の星ではおそらく競争相手になる三人組の能力を確認し、頭の中で対策を練りながら。
◇◆◇
「もうー、しょうがないなぁマーラーカオ君は。わちきが手伝ってあげないと何もできないんだから」
とある星で、マーラーカオからの連絡を受けた人物が独りごちた。
「ふふふ、わちきの最強マシンで宇宙を混乱させるのだ☆」
彼女の名はホワイトロリータ。マーラーカオの仲間である。
愛用の宇宙船に乗り込み、宇宙へと飛び立つ。そのシルエットは実に禍々しい形をしていた。
◇◆◇
「さて、次の星はー?」
一方、ちんすこう一味はまんまと月下美人の町を脱出し、宇宙船に乗り込んでいた。
「次の中継地点は、惑星オラトリオ。クラシック音楽の一種を名に冠する星ですわ」
ふーん、と気の無い返事をする二人。音楽には興味が無いようだ。いかにもそんな感じである。
「それで、名物は?」
もう宇宙グルメ食べ歩きしか頭にないちんすこうはオラトリオの名物を尋ねる。
「……ちんすこうさんが求める名物は食べ物ですわよね。マカロンが有名らしいですわよ」
マカロンは有名な洋菓子である。作る手間のわりに小さくてあまり値段を高く出来ないので、提供するお店としてはコストパフォーマンスの悪い食べ物だ。裏を返せばとても贅沢なお菓子なのである。だが仮想空間なら材料費や手間賃を考える必要はない。素晴らしい!
「おー、いいじゃんいいじゃん! さっそく向かおう!」
こうして宇宙海賊達は惑星カクタスを脱出し、次の目的地である惑星オラトリオを目指すのだった。
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