テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
惑星オラトリオを目指して宇宙海賊は宇宙を行く。
「途中の宙域に大型の宇宙怪獣が現れるみたいですわね」
サーターアンダギーが何気なく言った言葉に、ちんすこうが食いついた。
「よし、倒そう!」
「言うと思ったよ」
即座に返すちんすこうに、呆れ顔で、だが賛成の意志を表す愛玉子。サーターアンダギーは続けてその宇宙怪獣の特徴を説明し始めた。
「宇宙空間での戦闘を練習するのにちょうどいいですわね。目的の宇宙怪獣は巨大な鳥の姿をしていて、名前はクドア・セプテンプンクタータ」
「寄生虫じゃねーか!」
即座にツッコミを入れる愛玉子。ヒラメに含まれる寄生虫の名前をよく知っているものである。アイテム作成が趣味なだけあって料理にも明るいのかも知れない。
「くどあせぷ……なに?」
「クドア・セプテンプンクタータですわ」
名前が長すぎてちんすこうは覚えられない。いや、彼女が特段おバカという事ではない。通常、クドア・セプテンプンクタータなんて名前を聞いたらこういう反応をするものである。
なにはともあれ、三人は宇宙怪獣が出没するというポイントへ進路を向ける。宇宙空間では方向感覚が狂うが、宇宙船のモニターに周辺のMAPが表示されているので安心だ。行先をタップすれば自動でそこまで行ってくれるので地図が読めなくても大丈夫。
「なんかMAPに赤丸がついてるんだけど」
「それがクドア・セプテンプンクタータですわね。ボス級の敵はMAPに表示される親切仕様ですわ」
ちんすこうは赤丸をタップした。
「あ」
「え?」
ボスマークをタップすると自動的に攻撃を始める親切設計だ。なんたらファイアー号は加速してクドア・セプテンプンクタータに向かっていく。
「おおおおお!」
急加速するファイアー号のコクピットではしゃぐちんすこう。マジパン(サーターアンダギーの愛機)と飛龍(愛玉子の愛機)は後方に引き離された。
「おい、なんだその仕様! 突出は危険だぞ」
焦って赤丸をタップし後を追う愛玉子。サーターアンダギーも続いた。間もなく、ちんすこうの目に宇宙を飛ぶ虹色の鳥の姿が見えてきた。
「あれがセプなんとかか! カッコいい!」
カオスユニバースに来て初めてまともな見た目の宇宙怪獣に出会えたちんすこうのテンションはマックスだ。
「おいおい、あんなラスボス張れそうな見た目で大丈夫か? 衛星並みのデカさだぞ」
クドア・セプテンプンクタータは全身が虹色に輝く孔雀のようなシルエットの怪物だ。自分に近づいてくる宇宙船を認めると、翼を広げて鳴くような動作をした。
「威嚇……いえ、攻撃に移る準備動作ですわね」
サーターアンダギーの言葉が終わらないうちに、クドア・セプテンプンクタータが翼から虹色の光弾を大量に発射した。無数の光弾がファイアー号を襲う!
「なんとぉっ!!」
ちんすこうが操縦桿を握り、宇宙船を器用に操って光弾を避けていく。だが次から次へと発射される光弾を避けるので精一杯だ。
「待ってろ、今援護する」
愛玉子の飛龍が追い付き、主砲で攻撃を開始した。現在の主砲はタキオンレーザーだ。
【以下SF的兵器説明】
タキオンとは超光速で飛ぶ粒子であり、攻撃速度は最高だが超光速という性質上あまり威力は高くない。何故ならタキオンは速さとエネルギーが反比例するからだ。遅ければ遅いほどエネルギーは高いが、タキオン粒子を使う意味は薄れる。更に内包するエネルギーが如何に高かろうと、破壊力は攻撃対象が吸収したエネルギー量に比例するため、速すぎると攻撃対象の内部を通過するのにかかる時間が短くなり、エネルギーを相手に渡す事無く貫通してしまうのだ。よってどんなにエネルギーを高くしても光速を下回らないタキオン粒子では一定以上の破壊効果は見込めないのである。
【説明終わり】
「マジパン、最大出力!」
サーターアンダギーも攻撃を開始した。こちらは高威力X線である。X線とはヴィルヘルム・レントゲン博士が発見した放射線だが、光の一種である。光なので当然光速で進む。エネルギーが高いほど貫通力が高くなるが、高質量のものに吸収される為、威力は敵の質量に依存する。
二種類の攻撃を受けたクドア・セプテンプンクタータは光弾の発射を止め、苦しそうに身を翻す。巨体の割に打たれ弱く、逃げようとしているのだ。すかさずちんすこうが追撃をかけた。
「いっけー、スーパーウルトラデラックスハイパーギガンティックファイアー号!」
よく覚えているものだ。それならクドア・セプテンプンクタータの名前も覚えてやれ。こちらの主砲は液体酸素爆弾である。説明は省くがとにかく凄い爆発をする。発射速度は前二者と比べると非常に遅いが、物理的破壊力は飛び抜けて高い。
光弾をかいくぐり至近距離まで接近していたちんすこうの攻撃は、巨大なクドア・セプテンプンクタータの身体に命中し大爆発を起こした。
「やったー!」
見事に大ダメージを受けたクドア・セプテンプンクタータはその場で身体が縮んでいき、最後には消えて無くなった。
「やはり三人で戦うとかなり有利ですわね」
勝鬨をあげるちんすこうと愛玉子を見ながら、サーターアンダギーが満足そうに呟くのだった。