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さてさて、昼下がりの猫鳴町にございます。ここは質屋「雪乃屋」、

その奥で昼寝をむさぼるは、この町きっての怪盗、鷹丸どのにござりまする。

夜は闇を裂き、昼は高いびきを響かせるという、何とも呑気な御仁にございまして――。


「ちょいと鷹丸!いつまで寝てるんだい!」

どこからともなく聞こえしは、女の声。質屋の主、お雪どのが寝床に近づき、容赦なく一発蹴りを入れたのでござる。

「いてぇな!なんだよ、寝かせとけよ!」鷹丸は体を丸めて不満げに言い返す。

「昼間っから男が寝てるなんざ世間様に申し訳が立たないってもんさ!」

「へっ、こっちは夜通し働いてんだ。昼ぐらい寝かせろってんだよ」

鷹丸がふてぶてしくあくびをひとついたすと、その目の前にお雪どのがどんと一升瓶を置き申した。

「お?酒か。お前も気が利くようになったじゃねえか」

手を伸ばす鷹丸、されど、その手をお雪どのはぴしゃりと払いのけたのでござる。

「バカ言ってんじゃないよ。あんたに仕事が入ったんだよ!」

「仕事?」鷹丸は眉をひそめ、興味なさげに返す。

お雪どのは小さくため息をつき、先ほど訪ねてきた武三どのの依頼を語り始め申した。

「教会にある絵画を取り戻してほしいって話さ。昔、酒問屋の旦那が持ってたもんで、

その旦那が火事で亡くなって、絵も消えたと思いきや、教会に隠されてたんだと」

「へぇ、それを盗み出せってわけか。ま、俺にゃ朝飯前だな」

鷹丸はのんきにあくびをこぼし、ひとつ肩をすくめる。

「でもさ、なんだかこの話、きな臭いんだよねぇ」お雪どのは目を細め、続ける。

「ただの形見ならいいけど、教会が隠してるってのがどうにも怪しいのさ」

されど、鷹丸は話半分に聞き流し、一升瓶を手に取り申した。

「おい、何やってんのさ!」お雪どのが声をあげる。

「大丈夫だってよ。その絵を取ってくりゃいいんだろ?」

「そうだけどさ、気をつけなよ。裏があるかもしれないんだから」

鷹丸はぐいっと酒を飲み干し、くいっと身を起こす。

「心配するな、俺を誰だと思ってんだ?天井から忍び込むも、

影に潜むも、猫鳴町随一の俺様の得意技よ。じゃ、ちょっと下見に行ってくるぜ」

そう言うが早いか、鷹丸は軽やかな足取りで質屋を飛び出したのでござる。

その後ろ姿を見送るお雪どのは、呆れたようにぽつりとつぶやく。

「まったく、呑気な奴だよ……」

かくして、鷹丸は教会へと向かい申した。

この話が後にどれほどの波乱を巻き起こすやら――その時、まだ誰も知る由はござりませぬ。



――さてさて、皆々様、お聞きくだされ。この世には、猫の世に馴染めぬ者が数多おる。

されど、その中にて、ひときわ異なる男がひとり――その名を鷹丸と申す。

銀の髪を風になびかせ、紅き瞳をぎらりと光らせる長身の男。さればこそ、

尋常の猫とは一味も二味も違う。その血の内には、三百年を生きたという大化け猫の因果が滾っておる。

猫たちは皆こう呼ぶ「妖混(あやかしま)じり」――この世の理にそぐわぬ存在として、

世間の者どもは彼を厄介者と忌み嫌った。

「妖混じりは、体に異形を宿し、心もまた欠けておる」と囁かれ、仕事も得られず

村々を追われる者も少なくない。世間の風は冷たく、共に生きることなど夢のまた夢。しかし、鷹丸は違った。

ある日、一匹の猫に拾われた。名をお雪。のんきで陽気なその性に包まれ、鷹丸もまた、

厄介者から一歩、世に受け入れられる存在へとなりつつあった。

されど、妖の血は決して消えぬ。果たして彼は、この世に己が居場所を見つけることができるのか――

さぁて、これより語るは、妖の血を継ぐ者の物語。皆々様、耳を澄ませてくだされよ――。



「鷹丸、教会を訪う」

猫鳴町を歩くは、鷹丸の姿。背丈はすらりと高く、銀の髪は夜空を切り裂く流星のごとく

紅のごとき赤い目は町の猫たちをして憧れ抱かせるほど。羽織る着物は鮮やかに

風に揺れて目を引くも、そんな彼を町の住人は、

ただ昼間からぶらぶらと遊び歩く気楽な遊び猫としか思わぬのでございます。

「おう、鷹丸じゃねぇか!」と声をかけたのは、川沿いでひなたぼっこを決め込む魚屋のオス猫。

「今日も釣れもしねぇ魚釣りかよ?」

鷹丸は肩をすくめ、「うるせぇな。今日こそ大物釣ってやるぜ」と軽く言い返す。

「へっ、良いご身分だぜ」と笑い飛ばす雄猫。

そこへ通りかかった若いメス猫が「鷹丸~、うちに寄ってきなよ」と声をかけるも、

「わりぃな、魚が逃げちまうからよ」とさらりとかわして、鷹丸は悠々と足を進める。


その先、町外れに立つ異国じみた建物、教会へとたどり着いた鷹丸。

「ほぉ、これが教会ってやつか。普段は縁のねぇ場所だが、

じっくり見ると不思議なもんだな」と口元に笑みを浮かべ、建物をじっと眺める。

すると、不意に背後から澄んだ声が響いた。

「どなたですか?」

振り返れば、手にロウソクを持った一匹の雌猫。清楚な装いに身を包み、その目には警戒の色が浮かんでおる。

「おお、悪いね。ちょいと魚釣りに来たんだが、珍しい建物があったんで、つい見とれちまってね」

「魚釣り?」と首を傾げるシスター猫。「あなた、漁師さんですか?」

「いや、俺はただの風来坊さ」と鷹丸はあっさりと答える。

だが、これがシスター猫の気に障ったか、その顔は厳しくなり、言葉も冷たくなる。

「風来坊?そのような身なりで、この辺りをうろつかないでください。あなたのような下品な者がいるのは迷惑です」

鷹丸は一瞬だけ目を細めたが、すぐに笑みを浮かべ、

「あぁ、そりゃ悪かったな。じゃ、失礼するよ」と軽く手を上げて、その場を後にする。

だが、立ち去る振りをしながらも、ちらりと教会の庭を見やる。その視線の先、奥に小屋の姿があるではないか。

「ふーん、あそこか」と、鷹丸は小さく呟き、口元に不敵な笑みを浮かべた。

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