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身支度を終え、山中に住む一人の巫女と一人の魔法使いは、星空輝く寒空の下を駆け出した。
「あてはあるの?」
「逆にあると思うか?」
「はぁ……行き当たりばったりってことね」
「そのうち辿り着くべ!」
「楽観的すぎるのがあなたの悪い所ね……」
「まぁ一旦街に出てみましょう。街行けば知り合いにも会えるし、もしかするとなにか有益な情報が得れるかもしれないでしょ?」
向かう場所は近くの街。その街になら知り合いに会える確率が高く情報収集も容易だと彼女は踏んだからだ。
街につき地上に降りる。時間は掛かるが徒歩で知り合いを探して情報を集めるしかない。空から探すのも考えたが常識的に考えて、突然空から人が降ってきたら付近の人間は恐れてしまう。そんな観点から面倒ではあるが地に足をつけて調査することにしたのだった。
予想はしていたが人の多さが尋常ではない。クリスマスというイベントは、もとより活気あるこの街を更に活気に溢れさせ、人々が笑顔で過ごす。もちろん全員が全員とは限らないが……
スーツ姿の人は大抵顔に生気が宿っていないことが多く、近くのコンビニでちょっと買い物をしてとぼとぼと歩く姿がよく見かけられる。また反対に、男女のペアが歩く姿も見かけられる。私はその辺に疎いが、きっと恋人同士ではこの日は特別なだろう。私には分からないし、分かることも金輪際無い。
今分かることは、この人混みが私の進路を阻害してることだけだ。全く、イベントというのは億劫なものでしかない。
情報収集は魔理に任せて自分はゆっくりしたいものである。しかし、仮にも自分は治安を維持する巫女という役職なので諦めて情報収集をする。
効率を考えて街に着いたら解散して各自の友人に当たるということをした。私の方はすぐには終わりそうにないから、正直魔理からの連絡待ちの方がいい気がしてるは内緒である。
幽無と分かれて行動することになった。一応何人か当てがあるのでそいつらに話を聞いてみることにする。ちなみに、友人に時を操る神《時械神》がいるが、ぶっちゃけそいつが犯人かと言われれば、まぁ否定するところだ。理由としてはあの神様は邪神レベルで性格が歪んでいる。己の力を行使する時は大体暇つぶしとして人々を苦しめたりする。例えば、月曜を永遠と繰り返す、とか。ほんとに良い性格だと思うが、今回の件はアイツは絡んでないだろう。だって今繰り返してる時間はクリスマスとかいうイベントで、人々が幸せそうにしてるからな。こんな日を繰り返すなんて、あの神様がやるかと言われれば、私はNoと答えるレベルである。
いや、まてよ?このクリスマスとかいうイベントで苦しむ人々もいると思う。もし、そいつらを苦しめたりするのを目的としてたら、あいつの性格と一致する…。ありえなく無い話になってきたな。保険で一応あいつの元を訪れるか。まぁ、最後になるんだけどな。
さて、こんな考え事をしていたら最初の目的地に着いたぞ。ビルとか立ち並ぶこの街に不似合いな茶屋《まち丸》て言う私の友人がやってるお店だ。
「ごめんくださーい」
「はいー?」
返事を返し厨房から一人の少女が出てきた
「あれ?魔理さんじゃないですかー!今日は何食べていきます?」
彼女はこの店の店主である。
《小野町 茶々》(おのまち ちゃちゃ)
彼女は鬼の技術を習得しその技術で茶菓子を作る菓子職人。
鬼の技術を習得するには最低でも50年は必要とされていたものをたったの3年程度で会得し、生ける伝説とも言われるほどである。
「あー、わりぃ今日実は客として来たんじゃねぇんだわ」
「と言いますと?」
「変なこと聞くけど、今日に違和感ない?」
「違和感ですか?」
「なんか見たことある光景だなぁ、とかない?」
「うーん……」
「まぁ、無いならないでいいんだ。すまないな変な事聞いて」
手応えがなかったのを感じた魔理は、彼女の仕事を邪魔せぬよう足早に帰ろうとした。
「あっ!待ってください!ひとつ確かに違和感があった事あります!」
「本当か!?」
「はい!」
「今日来たお客さんの中に不思議な事を話す方がいて、確か『突然変な事言うが、今日を知ってる気がすんだよなぁ』だった気がします。」
「今日を知ってる、ね…」
「正夢とかの話ですかね?」
「まぁ、そんなとこだろ」
「こんな情報しか渡せないですが、何かの役に立ちますかね?」
「あぁ助かった。今度はちゃんと客としてまた来るよ」
「はい!では、お待ちしてますね!!」
軽い挨拶をかわし、その場を離れていく。今の話を聞く限り、やはり一般人でも今日に違和感を感じる人物がいるのは確かみたいだ。この異変の中心人物は探せなかったが、一般人も違和感を感じるという確かな情報を得れた。
次はこの異変の中心人物になってるやつに関する情報を集めるか。まぁ、前提として知り合いでかつ、ループしてる事に気づいてるやつ限定なんだけどな。