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首を傾げる絹に、信愛は改めて自分たちのことを説明する。
自分には霊感があり、霊視や除霊ができること。
友人たちと「怪異探求倶楽部」というクラブ活動をしていること。
そして朝陽から、毎晩聞こえてくる女性の声の正体を調べてほしいと依頼されたこと。
信愛は包み隠さず、これまでの経緯をすべて話した。
「そんな事が・・・」
絹は信じられないというように小さく呟く。
信愛は静かに頷いた。
「話を元に戻しますけど」
一呼吸置き、まっすぐ絹を見つめる。
「虐待をしていないんなら
絹さんは何で逮捕されてしまったんです?」
「確かに・・・」
焔垂も腕を組み、真剣な表情で頷く。
絹はしばらく沈黙したあと、小さく微笑んだ。
「ちょっと話が長くなるけどいいかしら?」
「は、はい・・・」
信愛が返事をすると、絹は遠い昔を思い出すように目を細め、淡々と語り始めた。
「あれはまだ朝陽が4歳だった頃の話でね」
その一言に、一同は自然と耳を傾ける。
「その頃の朝陽は癇癪がとにかく酷かったの」
「癇癪・・・」
信愛が小さく呟く。
「気に入らない事があれば、泣き叫びながら
暴れ回って、そりゃもう大変でね・・・」
絹は苦笑する。
「今の朝陽くんからは想像もできない・・・」
茜が驚いたように漏らす。
絹は静かに頷いた。
「いっその事、この場から逃げ出したら
どれだけ楽か・・って思ったりもした」
その言葉には、当時の苦悩が滲んでいた。
「けど、旦那を事故で亡くして」
一瞬、声が詰まる。
「朝陽を護れるのは私しか居ない」
そう自分に言い聞かせるように続けた。
「女手ひとつで朝陽を立派に育てるんだ
って必死に喰らい付いたわ」
焔垂は何も言えず、ただ黙って話を聞いている。
「そうしてればきっと、朝陽の癇癪も治る
そうなれば穏やかな生活を送れる」
絹は静かに俯いた。
「そう思っていた矢先に、警察がやって来たの」
「何で警察が?」
さくらが思わず尋ねる。
「近隣住民からの通報があったそうなの」
絹は苦々しく笑う。
「『あの家で子供が虐待されてる』って」
「なるほど・・・」
信愛は静かに頷く。
そして、何かに気付いたように目を見開いた。
「実際は癇癪を起こして泣き叫んでるだけなのに
虐待されて泣いてるって勘違いされたって事ですか」
「ええ・・・」
絹はゆっくりと頷いた。
「私は必死に弁解したわ、朝陽の癇癪の事も伝えた」
少し間を置いて、苦々しく続ける。
「けど朝陽の体の痣のせいもあって
警察は私の言葉に耳も傾けなかったわ」
「痣って?」
茜が首を傾げる。
絹はゆっくりと頷いた。
「朝陽は癇癪を起こして暴れ回った時に
よくタンスやテーブルの角に腕をぶつけてたの」
焔垂は納得したように目を見開く。
「なるほど・・・その痣が
虐待せいだって疑われたって事か」
「その通り・・・」
絹は寂しげに微笑んだ。
「最初っから私を子供を虐待している親だと
信じて疑わなかった警察には私の言葉が
ただの言い逃れの様に見えたんでしょうね」
その声には怒りではなく、諦めにも似た悲しみが滲んでいた。
「そんな・・・」
さくらが思わず言葉を失う。
「私はそのまま弁解の余地も
与えられずに警察に逮捕された」
静まり返った店内に、その一言だけが重く響く。
「それから朝陽は姉に引き取られたの」
絹は視線を遠くへ向けた。
「それから出所した私は朝陽とまた一緒に暮らすために
ありとあらゆる方法を模索したわ
胡散臭い宗教や霊能者にも縋ったりもした」
自嘲気味に笑いながらそう呟く。
「そんな時・・・警察に通報した人物が誰だったのか
やっとの思いで突き止めたの!」
「え? 誰だったんですか?」
さくらが身を乗り出す。
絹はゆっくりと答えた。
「実の姉──」
焔垂が息を呑む。
「あ、姉って・・・まさか」
絹は静かに頷いた。
「今の朝陽の母親よ」
その瞬間。
「え・・・」
信愛の声が震える。
「うっそ・・・」
さくらも信じられないというように目を見開く。
「まぢ・・・」
茜も言葉を失った。
誰一人として次の言葉が出てこない。
絹の告白は、その場にいた全員を凍り付かせていた。
しばらく沈黙が続いたあと、絹は静かに口を開く。
「私は姉を問い詰めたわ」
コメント
1件
×××さん、今のエピソード、すごく重くて胸が締め付けられました…。絹さんが逮捕された真相が、まさか実の姉の通報だったなんて。癇癪に必死に向き合っていただけなのに、痣が虐待の証拠だと決めつけられて、言葉さえ届かなかった無力感。そして「今の朝陽の母親」というラストの一文で、すべての意味が一変しましたね。この裏切りの構図、本当に衝撃的でした。続きが気になります。
#普通
野々さくら
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ありあ
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