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人間様

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与えられた物だけじゃ無理がある

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2024年02月29日

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『それは、世界から愛された故の力だ』


朝は嫌いである。…いや、嫌いでは無いのだ。そう、明確に言えば朝起きるのが嫌いである。

ふかふかの布団が、自分の体温で程よく温まって虚ろな目を開きたくない衝動に駆られる。手を布団から出せば部屋の冷たい空気が少し心地いい。寒くなって布団の中に手を入れて、温める。なんて、素敵な時間。私はこの時間が大好きである。故に、朝起きるのが嫌い……と言うより苦手である。ちなみに生まれつきなのでどうしようもない。朝に用事がある時は夜通しである。そうじゃないと無理だ。

あの後、情報が集まらなくて早3日。今日こそ貴族様の情報が欲しい所だが私は今布団に囚われている。私は出たいのだ。そう、布団が私を離してくれないのが悪いのだ。私は悪くない。……言い訳も虚しく、時間を浪費している感覚が段々罪悪感となって私を襲う。うっ…。私は悪くない…。そうだ、布団から出ればすぐ準備できる。この時間は無駄じゃない。そう、言わば私は無駄を愛している。……流石にここまで来たら無理があるか。そう思い布団から出て準備をする。とほほ……私の暖かい布団……。



あの日以降、貴族様はパーティーをやる回数自体が減った。流石に暴れすぎた。自覚はある。……でも、顔がバレなかったのは不幸中の幸いだ。今ではすっかり貴族殺しの指名手配犯である。ここの主のアシッド教教祖代理補佐様は仕事が早いようだ。嫌いだけど。

そして、指名手配犯ということは私の首に価値が出来たということ。つまり、一攫千金にはぴったりなのだ。なので、恐れつつパーティーを開く者、恐れつつ殺人鬼見たさで来る馬鹿者達。お望み通り殺してあげようかな。…でも、私の目的は私を殺した貴族様への仕返しだ。そして、たまに気まぐれでその貴族様と同じような貴族様を殺している。

今日はその怖いもの見たさでパーティーを開いている人間を、殺しに行こうと思う。



何故パーティーは夜に開かれる?と疑問に思ったことがある。まぁ答えは出てないけど。と言うよりも考えるのを辞めた。だって、そんな時間無駄だと思ったから。私には分からない。

だけど、私がパーティーの時に殺しをするのには理由がある。簡単な話、纏まってる時に殺すのが1番手っ取り早いからである。悪い人には悪い人がついてまわる。だから、集まっているうちの方が効率がいい。いい人は……まぁ己の運命を恨んでね。世界に愛されなかったってことで。

まぁ、本当なら貴族様達を回って殺すのがいいのだけど私はやらない。一つ、回るのが面倒。二つ、回ると顔がバレる可能性あり。三つ、昼間から体を動かしたくない。四つ、昼間は人が多くて人混みに酔う。これが理由である。私、人混みめっちゃ苦手。なんでなのか分からないけど生まれてからこんな感じなので多分生まれつきだ。

さて、今日の仕事をしよう。大嫌いな貴族様を、派手に殺そう。



さて、本日の貴族様は〜?まぁなんということでしょう。入ってくださいと言わんばかりに警備隊が片付けられている。これは……本当に来ないと思ってそのスリルを楽しむタイプの変態だ。間違いない。

仕方ないので扉も蹴飛ばさないで開けてみた。すると、なんということでしょう。中はもぬけの殻でした。これには私も思わずびっくりである。

……なんて、言うと思った?後ろから視線を感じる。部屋が暗い。それでも分かるくらい血の匂いが充満している。きっと光が灯ったら目の前に広がるのは惨殺の後だけだ。


「……誰、さっきからそこにいるの」


そう言うと、部屋の電気が付いた。思わず一瞬目を閉じた瞬間に、部屋から出られた。逃がした。残念。

そして、こちらの惨状は予想通りだった。目の前に広がる私に殺される予定だった貴族様達。抵抗した後がまるでない。そして、私が使わない銃の様なもので殺されていた。生憎、私は殺人で銃を使わない。使い方は母から教わったが才能がまるで無かった。どれ程使って体に馴染ませても、どれ程死にたくなる訓練を己に課しても無駄だった。まるで体が否定しているみたいだった。それ以降、私は銃を握っていない。……それでも、分かるくらい手練の犯行だ。もし、さっき後ろにいた奴ならもう二度と会いたくないとすら思ってしまう。それくらい強い相手だ。きっと世界から選ばれた人間だ。

まぁいいや。嫌いな人間に思考を割くのは無駄である。完全に。私は嫌いな人間は思考から削除したいタイプである。……というより、嫌いな人間に対して考えるという行為すら無駄である。思考はもっと有意義なものに使いたい。私は、嫌いな人間に対して「人の形を保った醜い何か」くらいにしか捉えていない。それくらいになるまで人は嫌いにならない。それより前は「苦手な人」だ。

私の話はどうでもいいか。さっさとこの場から離れることにしよう。さっきの相手はもう居ない。明日からまた情報集め再開だなと憂鬱な気持ちを抱えつつ私は家に帰った。

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