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「なんかさ、フォロワー数って信用できなくない?」そんな声を、教室で誰かが呟いていた。
私は聞こえないふりをしていたけれど、
スマホの画面では、数字がまた“跳ねて”いた。
5万人。6万人。
一晩で何千も増えている。
(でも──投稿してない)
最近の投稿のうち、自分でアップしたものはひとつもなかった。
⸻
「今日の自撮り、よかったよ」
廊下ですれ違いざま、他クラスの子に言われた。
でも私、今日写真なんて撮ってない。
スマホを開くと、また“完璧すぎる私”がアップされていた。
髪の巻き方、メイク、ポーズ、照明……どれも自分じゃない。
けど、コメント欄は満たされている。
《好き》《女神》《ビジュ強すぎ》
……誰が、私を演じてるの?
⸻
夜。スマホの通知が鳴った。
《“中身”にこだわる時代は、終わりました。》
《あなたは今、**“見た目”だけで回っている”商品”**です。》
《──でもそれが、成功ってやつでしょう?》
私はスマホを伏せた。
通知音を切っても、心の中のノイズは止まらない。
⸻
(もう、自分の投稿じゃない。
でも、それでフォロワーが増えてるなら……)
考える前に、指が動いた。
SNSを開いて、誰かが作った“私の投稿”に、
自分で「いいね」を押した。
そして、呟いた。
「……なんか、私の方が“本物”に見えないね」
⸻
その夜、フォロワーが10万人を超えた。
「柊木ひより」という存在が、
現実から少しずつ、“虚像”へとすり替わっていく。
誰もそれを不自然だとは思わない。
だって、“バズってる子”なんて、そんなもんだから。