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静まり返った廊下で、どす黒い後悔だけが心臓を支配していく。
純一があれほどまでに激しい怒りを露わにし
傷つき、子供のように泣き叫ぶほど悲しむなんて、想像していなかった。
本当は、彼が仕事帰りの俺のために作ってくれたあの豪華な夕飯だって
“今日という日を特別な記念日にしよう”という、彼なりの精一杯の愛情表現だったんだ。
それなのに、俺は──。
(仕事を言い訳にしても、こればかりは絶対に許されることじゃない。ましてや、純一は俺にとってかけがえのない存在なのに……)
壁に頭を打ち付けたいほどの自責の念に駆られていた
そのとき
俺の脳裏に電撃のような記憶が蘇った。
(そうだ……プレゼント…!1ヶ月前から、ちゃんと用意してあったんだ……!)
俺は、自室のクローゼットの奥深くに
大切に仕舞い込んであった純一へのプレゼントのことを思い出し、すぐに自分の部屋へと走った。
クローゼットを開け、綺麗にラッピングされた長方形の箱──
彼に似合うと思って選んだ上質なブランドのネクタイを取り出す。
それをしっかりと手に握りしめ、リビングへと戻った。
プレゼントをダイニングテーブルの真ん中にそっと置くと、俺はメモ帳とペンを取り、震える手で文字を綴った。
『純一、今からでも誕生日を祝わせて欲しい。本当に最低なことをしてごめん。今からケーキを買ってくるから、その間に、このプレゼントを見て待っていてほしい。泣かせて本当にごめん。 理仁』
◆◇◆◇
夜の街に響く、深夜の風が冷たく頬を刺す。
リビングのテーブルの上に
ネクタイの箱とメッセージカードを残し、俺は財布だけを掴んで夜の街へと文字通り走り出した。
時刻は20時を回っている。
近所の個人経営のケーキ屋は閉まっているが
駅前の24時間営業の高級デパートなら、まだホールのケーキが手に入るはずだ。
息を切らしながらアスファルトを蹴り
俺は純一が一番好きな、濃厚なチョコレートのホールケーキを必死の思いで購入した。
帰り道
自転車を飛ばしながら、胸の中は底知れない不安で押しつぶされそうだった。
純一は、今もあの暗い部屋の中で一人、泣き続けているんだろうか。
俺の残したメッセージとプレゼントは、彼の心に届いてくれただろうか。
あんなに寂しく、惨めな思いをさせてしまった償いは、今からでもできるのだろうか。
そんな恐怖に似た思考を巡らせながら、俺は祈るような気持ちで、急いで家に帰宅した。
「ただいま……」
恐る恐る玄関を開けると、家の中は相変わらず静まり返っている。