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心臓の鼓動がうるさいほど跳ね上がるのを感じながら、足音を消してリビングに向かうと
そこには──。
テーブルの前にぽつんと座り
俺が用意したプレゼントのネクタイを愛おしそうに両手で握りしめながら
静かに涙を流している純一の姿があった。
部屋から出てきてくれたようだった。
「じゅ…純一……?」
掠れた声で名前を呼ぶと、純一はビクッと肩を震わせ、驚いたようにこちらを見上げた。
「り、ひとさん……」
その声はまだ涙でひどく湿っていたけれど、いつも通りのあどけない瞳の奥には
ほんの少しだけ、俺の帰宅を喜ぶような安堵の光が戻っているのが見えた。
「ごめん、純一…すっごく遅くなっちゃったけど。ちゃんと、今から純一の誕生日を祝わせてほしい。……ケーキ、買ってきたから」
そう言って、腕に抱えていたケーキの箱を、そっとテーブルの上に置いた。
それを見た純一は、小さく息を呑み込み
赤くなった頬にまた新しい透明な雫を溢れさせた。
「うっ、ひっ、うぅ…もう、今日が終わっちゃう…のに……っ?」
「…仕事に追われて頭から抜け落ちてたなんて、言い訳にもならないし、本当に最低な恋人だと思ってる。許してくれとは言えないけど……今からでも、純一がこの世界に生まれてきてくれたことを、ちゃんと祝わせて欲しいんだ」
俺は真っ直ぐに彼の目を見つめ、ケーキの箱を差し出した。
「ぼ…ぼくのために、走って、買ってきてくれたの……?」
「うん、純一が一番好きなお店の、チョコケーキだよ。これじゃなきゃダメだと思って」
純一はしばらく黙ったまま、震える手で箱を受け取り、その中をそっと覗き込んだ。
可愛らしい色鮮やかなフルーツと
艶やかなチョコレートクリームが綺麗に乗った丸いホールケーキを見て、瞳をぱちぱちとさせた後──
「…ごめん、なさい……っ」
純一の口から飛び出したのは、予想だにしない「謝罪」の言葉だった。
「どうして…どうして純一が謝るの?悪いのは全面的に俺なのに」
俺の言葉を遮るようにして、純一は再び子供のように顔を覆って泣き出してしまった。
「……うぅ、うわぁんっ……!ぼく、全然いい子じゃないのにぃ……っ!」
「そ、そんなことないよ。純一はいつだっていい子だよ?」
「いい子じゃないよぉ……っ!りひとさんに、ひどいことばっかりして…!物投げつけて、ひどいこと、たくさん言っちゃった……っ。えぐっ、えぐっ……」
「ごめんなさい…ごめっ、なさ……っ、うぅぅっ……ひっく…」
純一はしゃくりあげながら、必死に言葉を繋ぐ。