テラーノベル
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翌日。なんとかならないかと思い、出社後社長に頼んで朝いちばんに銀行に行かせてもらった。窓口で確認してもらったら、新しい口座に入っていたはずの私のお給料は既にほとんど引き出された後だった。マイナス額が記帳された通帳が戻ってきた。
次こそ建真には渡さないっ!!
私はその場でキャッシュカードを紛失したための再発行手続きを行った。今度はまったく別の数字にした。忘れっぽい私は暗証番号をほとんど同じにしていたが、もうやめる!
新しい番号は『9636』。語呂合わせアプリ(自社で作ったアプリ)で出してきた数字で、『9636(きんさん)』だ。なぜこれで金さんになるのかわからないけれど、これなら絶対忘れないからよしとした。
家にいないことも多いため、カードの送付先は職場にした。これでもう絶対に建真の手には渡らないし、お金もこれから金さんに預けておこうと思う。持ち歩いている現金が少なければ、取りようがないもんね。
金さんはお金に対してはきっちりしているし、他人のお金を使ったり盗んだりというようなことはしなさそうなので、安心して預けられる。彼はお金に正直で、金融業もしているからその面の信用もある。賢くなった私はいろんなアイディアが思いつくようになった。
もう今までとは違う。
絶対に自分で自分の物語をハッピーエンドに持って行くんだ。そのための努力をしなきゃいけないことに気が付いた。
幸せは誰も運んでくれない。
自分で掴むものなのだ、と。
自分でも思う。強くなった。昨日、建真に言い返すことができたことが一番大きい。
この思いをなんとか他のくすぶり悩んでいるすべての人たちに届けたい。北都さんと同じ気持ちになり、私はゲーム開発に勤しんだ。このアプリが完成させることも、私の中で大きな目標となっている。
(ん――…今日も頑張った!)
退勤時間となったので会社を出ると、ちょうど北都さんからメッセージが入って来た。大吉に来い、という内容だったので店に急いだ。
「いらっしゃい、ノリ」
「北都さん!」
今日も美人で癒しだ。しかし大吉には全然お客様が入っていない。なんでだろう…。建真と離婚したら毎日美味しいご飯とお酒を飲みに通っちゃおうかな!
この店がなくなったら困る人が大勢でてくると思うし。私も困る。
「こんばんは」
航大さんもやって来た。萌絵ちゃんは実家のお母さんが面倒を見てくれているようなので、時間に多少融通がきくようだ。
「紀美さん、順調ですか?」
「いやそれが…」
昨日の出来事を話すと、北都さんがトレイをミシミシさせていた。銀トレイではなく鉄製の重いものになったので壊れなかったが、多分何度か続けたら壊れてしまいそうな気がした。
「ほんとうに許せないですね。制裁は僕に任せてください」
航大さんも静かに怒っていた。嬉しいな…私のために怒ってくれる仲間がいるだけでこんなにも心強い。
「あのね、ノリ。そろそろケンにとどめを刺そうと思う。いいかな?」
「はい。もちろんです!」
「ちょっと早い気もするけれど、アプローチも半端なくなってきたし、夜の方をずっと誘ってくるのよ。近々行うわ。だから覚悟しておいてもらおうと思って」
「覚悟もなにも、既に腹は括っています。こんなことを北都さんにお願いするのは心苦しいですが、どうか、よろしくお願いします」
私は頭を下げた。
「ノリの決意表明が聞けてよかった。これで、心置きなく殺(や)れるわ♡」
妖艶に微笑む北都さん。すごく美人で頼もしい。私もこんな強い女性になりたい!
「ケンを殺ったら、次はコウの嫁だよ。あんな社会のゴミみたいな奴ら、全部まとめて私が一掃してやる。あんたたちみたいな弱者やこれから産まれてくる子供が、生きやすい世に変えてやるの!」
にっ、と北都さんが笑った。その時、彼女のスマートフォンが鳴った。
「あ。呼び出しだ。ケンが来た!」
金さんからの着信だ。建真がバーの方に来たら着信が入るようになっているみたい。
「ちょっと行ってくる。バッティングしないように気を付けて、ノリは早く帰りな」
「はい。そうします」
隣に夫がいると思うとぞっとする。バレないように気を付けなきゃ!
北都さんはポニーテールを解いて髪を下ろしてさっと容姿を整え、居酒屋大吉のトレードマークである法被を脱ぎ捨てて出ていった。ほんと、絵になるくらい綺麗なひとだ。女の私が見ても惚れ惚れする。
「夫に見つかってはいけないので、長居はせずに帰ろうと思います。航大さんはどうされますか?」
「僕も帰ります。あまり萌絵と離れたくないので。離婚が進んだら子供は僕が引き取るつもりでいますから」
「じゃあ、帰りましょうか」
会計を済ませて店を出た。早足で表通りに出る。航大さんと肩を並べて秋葉原の駅まで歩いた。
「不思議な方ですよね、北都さんって」
「今まで私が出会った中でも、あんな女性は初めてです」
「きっと、これまでにたくさんの理不尽さに耐えてきた方なんでしょうね」
「でしょうね」
「僕たちも誰かの助けになれるように、頑張りたいですね」
「航大さんはもう既に私の助けになってくださっていますよ。ありがとうございます」
「紀美さん…」
航大さんが嬉しそうにはにかんでくれた。素敵な人だな。ほんと、こんな人と出会いたかった。きっと彼のような人だったら、幸せな家庭を築けていたことだろう。奥様はバカだ。こんないい人をATM扱いして、かわいい娘に酷いことを言って、家族を傷つけて。浮気相手もろとも地獄へ行けばいいと思う。
談笑していると駅に着いた。じゃあ、と別れようと思った時、改札前で私を待ち構えていた人物がいた。とても追い詰められた表情をした…
――晴奈だ。
――戦闘開始!!
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コメント
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みぅです🤍 ノリミちゃん、ちゃんと自分のお金を守ろうとしててえらすぎる…「金さん」に預ける発想、賢いね🥺そこに北都さんの「殺(や)る」宣言きたーー!カッコよすぎて鳥肌たった。航大さんもノリミの味方でいてくれて心強いよね。このタイミングで晴奈が待ち構えてるの、もう続き気になって仕方ないよ…!😭