テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
2話 [君がくれた居場所]
勇斗と話すようになってから、
学校が少しだけ怖くなくなった。
朝、教室に入る。
前までは憂鬱だったその瞬間が、
今は少しだけ変わった。
「おはよう」
「……おはよう」
たったそれだけ。
でも、勇斗が笑ってくれるだけで、
昨日までの嫌なことが少し薄れる気がした。
「今日眠そうじゃん」
「え?」
「昨日寝てない?」
「なんで分かるの」
勇斗は当たり前みたいな顔で笑った。
「顔に出てる」
「そんなに?」
「うん。めっちゃ」
思わず笑ってしまった。
誰かとこんなふうに自然に話したのは、
いつぶりだっただろう。
「僕、そんな分かりやすい?」
「分かりやすいよ」
「じゃあ気をつける」
「無理じゃない?」
「ひどい」
そんなくだらない会話。
本当に何でもない時間。
でも僕にとっては、
今まで欲しかったものだった。
昼休み。
僕が一人でいると、勇斗がやってきた。
「また一人?」
「うん」
「一緒に食べよ」
「いいの?」
そう聞くと、勇斗は不思議そうな顔をした。
「なんで?」
「いや……迷惑じゃないかなって」
「迷惑なら誘わないよ」
その言葉が、胸に残った。
僕はいつも、
誰かに迷惑をかけないようにしていた。
頼らない。
期待しない。
邪魔をしない。
そうやって過ごしてきた。
でも勇斗は、
当たり前みたいに僕の隣に座った。
「ねえ」
「ん?」
「勇斗って、なんでそんな優しいの」
僕が聞くと、勇斗は少し考えた。
「うーん……」
そして笑った。
「困ってる人を放っておけないだけ」
その答えに、
なぜか少し寂しくなった。
でも、その理由が分からないまま、
#ご本人様には関係ありません
透楽※お知らせ必読願います
5,108
僕は笑った。
「そっか」
「なに、その反応」
「いや、勇斗らしいなって思った」
「どんな意味?」
「優しいってこと」
勇斗は照れたように笑った。
その顔を見て、
また思った。
この人のことをもっと知りたい。
好きなものも。
苦手なものも。
嬉しいことも。
全部知りたい。
そんな気持ちが、
少しずつ大きくなっていた。
でも。
放課後、廊下を歩いていると、
勇斗が別のクラスの人に声をかけられていた。
「勇斗、ありがと!本当に助かった!」
「いいよ、気にしないで」
優しく笑う勇斗。
その姿を見て、
僕は気づいた。
勇斗は僕だけに優しいわけじゃない。
誰にでも優しい人なんだ。
分かっていたはずなのに。
なぜか胸の奥が少し痛んだ。
この時の僕はまだ知らなかった。
僕が特別だと思っていた優しさは、
勇斗にとってはいつもの優しさだったことを。
コメント
1件
第2話、じんわりと胸が痛くなりました……。「僕が特別だと思っていた優しさは、勇斗にとってはいつもの優しさだった」という一文、すごく響きました。勇斗が「誰にでも優しい人」だと気づいた瞬間の、主人公の寂しさと切なさが伝わってきて、二人の距離感の描き方が繊細だなと。この先、勇斗の中で主人公が特別になっていくのか、それともこのままなのか、続きがすごく気になります。素敵なエピソードをありがとうございます🌷