「逢魔が時にあの池を覗き込んだことはあるかい?」2人で蜜柑を食べていた時、にっかり青江がそう呟いた
あの池と言うのは本丸の池の事だろう私の本丸には池がある目立った傷や汚れなどはない至って普通の池だ、最近はドタバタしていて掃除はしていない。
いいや、と首を横に降ると青江は”なら良かった”と微笑む、私はそれがなんか気に食わなかったので詳しく問いただすと少し表情を歪ませながら答えてくれた
「最近あの池から嫌な気を感じるんだ、夕方になるとそれは多くなる。ほら、ここは幸運なことに御神刀(石切丸、太郎太刀)がいるだろう?その2人に相談したらやっぱり”なんかいる”らしくてね、また害を成してないからいいけど…話し合って1番危ない時間、逢魔が時には近づかないよう皆に忠告することにしたんだ、ほら、その時は主がいなくて伝えれなかったから」
そう話終えると ごめんね とばかりに微笑みかけられ私の剥いた蜜柑を1粒食べられた。うん、明日の馬当番は彼にしよう。
それから数日たったある日、”へし切長谷部主催本丸大掃除”と題して掃除が行われたちなみにきっかけは私が勢い余って書類をばらまいたことだった、申し訳ない。粟田口の皆は廊下掃除、新撰組の皆は庭掃除など役割分担をして掃除をし、昼に集合となった。
私は自室の掃除だったのだが意外と早く終わり、手伝おうと部屋を出ようしたが疲れが溜まってたのだろうか、段々と眠くなりその場で寝てしまった。
…………いつまで寝ていたのだろうか、目を開けた時はもう夕方だった、背伸びをして眠い眼を擦る、夕暮れの日差しにウトウトしながらも部屋を出る…もう皆掃除は終わったのだろうか?そういえば昼に集合と長谷部が言ってた気がする、あんまり覚えていないが。
…今の状況を話すと”え?みんな居る??”と言わんばかりの静寂に包まれていた。見渡してみても誰もいない、ただ日差しが訴えかけてくるのみ。
……まぁいい、誰か探すとしよう
うん…そのつもりだったのだが、いつの間にか池の前に来ていた少し好奇心があった、というのは否定出来ないが何故か引き込まれるように池の前にたっていた……確か青江が「逢魔が時にあの池を覗き込んだことはあるか」と聞いてきた気がする。
そっと池を覗き込んでみた
…………特に何も無い”やっぱり青江の作り話だったのか?”と腕を組み考えるいや、でも御神刀がなんちゃらなんちゃらと青江が言ってた気がするからここには何かある、多分。
再度池を覗き込む…ずっと覗き込めば何かあるだろうか
否。答えは”何も無い”である
やっぱり何もないじゃないか、と呟き戻ろうと振り返ったその時
私の服を誰かが掴んだ気がした
結構力強かったから思わず池を見る、すると池から誰かの手が伸びていた、私の服を掴んで何か言ってるようだった。
……あ、これまずいやつだと秒で察した、だって池にどんどん引き込まれるんだもん好奇心は身を滅ぼす と言うがその通りだ
もう無理助からない、来世は家猫になりたいと願っていた時誰かの呼ぶ声が聞こえた
「主……っ!?」
救世主!と言わんばかりに駆け寄ってくる、私の手をグッと引っ張り抱きしめられる、暖かい。
その後石切丸さんの所に行って祓ってもらったあとにっかり青江から詳しい話を聞いた。要約するとここは前にも本丸として使われていたらしい、そこの主が自分が不甲斐ないからとさっきの池で自殺したそうだ、私を引き込んだのは寂しいからという理由だそうな、なんだそれ。
「まぁ主が何事もなくて良かったよ」と青江は微笑む、”あの焦った顔は可愛かった”と揶揄うとやめてよ、と目を逸らされる。
結局あの池はどうなったかというと石切丸さんにお祓いをしてもらって取り壊しになったまぁ成仏する直前は笑顔だったから良かったのだろう。
それと何かあっては危ないからと今日から近侍はにっかり青江になった、青江も快く承諾してくれたしありがたい。
皆も好奇心のままに行動しないように。
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