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「──まさか。魔女化を外部からの干渉で解くとは。大したものだな」
声のした方を仰ぎ見る。
そこには、全身を真っ赤に染め
もはや死体同然で転がっているブロンクスの隣に
見るからにバーテンダーのような格好をした一人の男が立っていた。
そして、その背中には、神々しくも禍々しい
白く巨大な羽が静かに羽ばたいている。
「………アルベルト…っ、私、なにをしてたの……っ?ダイキリを…殺してしまったところから…記憶が、なくて…」
私はエカテリーナを抱き寄せたまま
「…魔力の許容量を大幅に超え、戦い続けたことで精神を乗っ取られ、一時的に魔女と化していました」
「そんな……っ」
「しかし、ご安心を。なんとかユニーク魔法で正気に戻すことができましたので──」
説明しようとした刹那。
「MASTAR様……!こいつらはすぐに──」
地面に転がっていたブロンクスが突然声を上げた。
血塗れの顔を歪めながらも、背後に控える
「MASTER」を敬うように頭を垂れている。
だが。
「──黙れ」
空気が凍り付いた。
背中に生えた巨大な白翼を持つ男──
MASTERは、まるで虫でも払うかのように軽く指を鳴らした。
次の瞬間、信じられないことが起きた。
ブロンクスの喉仏が、内側から破裂したのだ。
鮮血が噴水のように迸る。それは普通の出血ではなかった。
皮膚が内側から押し破られ、骨すら容易く砕かれながら飛び出してくる肉塊──
それが無惨にも宙を舞った。
ブロンクスの表情が恐怖と絶望で極限まで歪む。
「ぐっ……あっ……!?」
絶叫する間もなかった。
MASTERの口が、常識を超えて大きく開いた。
牙とも言える鋭利な歯列が並ぶその奥へと、宙を舞ったブロンクスの首が吸い込まれていく。
ごりゅ……ずしゃ……と湿った咀嚼音が静寂を裂いた。
「…………………」
言葉にならない恐怖が私たちの間に満ちる。
エカテリーナが私の腕の中で小刻みに震え始めたのがわかる。
(喰った……?)
ブロンクスは単なる仲間ではなく、やはり玩具程度ということなのか──
「……そろそろお前達も“味”を見せてもらおうか」
MASTERは口元を血で汚しながらも平然とした様子で言い放つ。
その声には微塵の感情も感じられない。
ただ飢餓感だけが滲んでいるかのようだ。
「アルベルト…ごめん」
エカテリーナがか細い声で囁いた。
彼女の顔色は青ざめているが、瞳にはまだ闘志が残っていた。
「私…アルベルトの言葉を聞かずに、ひとりで突っ走って」
「いえ……こんな状況では無理もない」
私は静かに答えた。