???「そろそろ兎白くんたちも動き出したかな?」
ここは、鬼灯刑務所。「堕天」が襲来し、「紫雲雨花」は天使たちと闘っている。
「お前は……!」
「あの時の!」
雨花「ん?誰?」
「忘れたとは言わせねぇぞ!!」
「お前のせいであの何でも屋から「レブルキー」取れなかったんだからな!」
雨花「あぁ、あの時の雑k……天使たちか!」
「今お前「雑魚」って言いかけただろ!!」
「ふざけんな!者共かかれ!」
「「おぉ!!」」
「俺たちは絶対間違ってない!!それを邪魔するやつは全員間違いだ!」
雨花「相変わらずだなぁ……ねぇ「堕天」って大きい組織だけどそれでも天使の中の一部に過ぎないでしょ?あなたたちのもっと上は何してんの……もう……」
「あいつらは「浄化」という力を持ってるにも関わらずそれを積極的に使おうとしない。俺たちは世のため人のためにもっと力を使うべきなのに……あいつらは何も分かってねぇ!」
雨花「それは……あなたたちの本性を知ってるからでしょ?あなたたちはただ……」
「うるさいうるさい!!黙れ!!俺たちは絶対に絶対に正しいんだ!!」
天使たちが大群で押し寄せてきた。
雨花「はぁ、本当は天使の輪を奪った方が楽なんだけどな!!」
雨花は、天使の手に触れないようにして気絶させた。
雨花「わたし何となく分かってきたよ。妖怪の人たちと関わっていって。ただ自分の理想を押し付けるんじゃなくて、ただ自分と違う考えの人を攻撃するんじゃなくて、相手の大切にしたい部分を自分が大切にしたい部分があるようにちゃんと知ろうとしなくちゃいけない。どんなに自分が理解できないことでも、理解できないからと投げ出したりはしちゃいけない。……お互いにとって最善の考えを考え続けないといけない。それがみんな難しいから。考え続けると途方もなさを感じて絶望するから。それができない人が多いから。だから、「共存」や「協力」は難しいんだ。それができるかできないかは「考え続ける覚悟」ができるかどうかにかかってる。わたしもあなたたちが自分たちを正しいんと信じ込んでるように、考え続ける。あなたたちを押し潰したりしない。綺麗事だとしても、わたしたちは考え続けないといけない。「共存」するにはそれが必要なんだ。……だから、わたしが過去傷つけた天使たちや妖怪のことを決して無駄にしないようわたしは考え続ける。……消えるまで。」
雨花は、自分が傷つけた天使や妖怪たちを想い出す。法律や任務で許されていたから。そして、自分の目的のために多くの天使や妖怪を傷つけてきた。
どうして傷つけることしかできないのだろう。
いつも、いつも、いつも、ずっと、
────ここでも、わたしは大罪人なんだ。
「…………何言ってんだ?お前。」
「何度も言ってるだろ。俺たちが「正しい」んだ。それを邪魔する奴らは「間違い」なんだよ。「間違い」は排除しなくちゃいけない。お前は「間違い」だ。だから徹底的に排除する」
雨花「……それはできないよ。わたし約束したからさ!」
雨花は、傘で銃を撃ちまくり、柱やテーブルを使って攻撃を避けて、天使の輪に傷をつけたり、蹴りを入れ込み拳で殴り飛ばすなど、様々な攻防戦を繰り広げた。
「たった一人でよくここまでやったな。貴様」
雨花「!」
そして、ほとんどの天使を倒し続け、残ったのは……
雨花「…………あなたが大天使でしょ?」
天使の中で一番大きい真っ白な翼。ティアラをつけた中性的な顔立ちに天使だった。
「己ら、恥ずかしくないのか?こんな小童に負けおって……」
雨花「…………」
「おい、お前さん」
雨花「ん?ぬらりひょんさん?」
話しかけたのは、ここで妖怪の長……ぬらりひょんだった。今は、手足を柱に固定されているが。
「あやつが妖怪の長と契約した天使だ。あいつを倒せば、この闘いは終わる……!」
雨花「情報ありがとうございます。パパっと終わらせるのであと少し辛抱して欲しいです。ごめんなさい」
大天使は、倒れた他の天使の頭を何度も踏みつけにしている。踏みつけられた天使から血が流れ出ている。
雨花「(わたしたちと同じ赤い血……)」
「私たちはただ間違いを排除しているだけ。それに貴様も同じだろう。貴様にとって私たちは間違い。貴様だって間違いを排除しようとしている。私たちと貴様がどう違うのだ?」
雨花は大天使をみつめる。
雨花「確かにそうだね。自分にとっての間違いを排除しているという部分において、わたしたちは同じだよ。でも、一つ違うところがある。それは、わたしたちは自分たちのしたことを正しいと思ったことは一度もない。疑って、考えて、反省して、悩んで、また疑って、考えて、反省して、悩んで、それを何度も何度も繰り返す。その先にあるものが正しいものじゃなくても、人に迷惑をかけることになっても、傷つけることになっても、その中で必死で求めた答えならそれは自分たちにとって意味のあるものだとわたしは想うから。わたしたちだけにある、分かる、確かな意味があるから。間違ったって後悔したって遠まわりしたって人を苦しめたって良いから、その先にある自分だけのものをわたしたちは手に入れたい。あなたたちだってそうなんだよ。自覚してないだけで、あなたたちが誰かにとって先にある答えだったかもしれない。答えじゃなくたって、答えをみつけるためのヒントになっているはずなんだよ。わたしはそう想いたい。綺麗事だけど、あなたたちのこと大嫌いだけど、わたしの大切な人が言ってたんだね。幸せを望んでくれる相手がいるくらい良いんじゃないかって。……まぁわたしはそういう人いらないけど。だからね。あなたたちとわたしたちとでは考え方が違うんだよ。」
大天使は目を伏せたまま、動かない。そして、
「くっくくはははは!本当に綺麗事だなぁ?貴様はそれが一番嫌いなのではなかったか?「黒い彼岸花」」
雨花「綺麗事は嫌いだよ。今もね。でも、その綺麗事の言葉を中には求める人がいるくらいは良いとわたしは想う」
「もういい。お前には雷をくれてやろう。裁きの雷をな!」
大天使は持っていた素敵を天にかざし、そこら中に雷を落としている。
雨花「裁きの雷?閻魔大王の目の前で「裁き」なんて言葉よく簡単に口にできるね?本当の「裁き」をみせてあげるよ!!!!」
雨花は、狂気じみた笑顔になると、髪色がどんどん紫色に変わっていく。そして、雨花の髪は暗い紫に染まりきってしまった。
雨花「あは……あはははははは」
「お、お前さん!」
雨花は、手を大天使の方に向けて広げた。
「ふん、何しようと言うのだ」
次の瞬間、雨花が広げた手をぎゅっと結ぶと……
ポキッ
「な、何!?私のステッキが折れた……!?このステッキはダイヤモンドより硬いぞ!?」
雨花「あはははは!!!!」
雨花は勢いよく飛び上がったかと想えば、空中で瞬間移動した。そして……
「あっっがぁぁぁあああ!!!!」
雨花は、大天使の後ろに回り、耳の中に細かい斬撃を入れ、そのまま脳みそまで渡り、傷をつけた。
雨花「あはははははははは!!!!!」
雨花は、狂気じみた顔でずっと笑い続けている。
「あぁ、分かっ……た……から……この攻撃を……やめ……てくれ」
雨花「ひゃはは!」
「雨花!もうやめろ!わしらの拘束も解かれている!もう大丈夫だ!」
しかし、雨花は大天使の声も妖怪の声も届いていない。ずっと暴走している。
「雨花!ほら契約書だ!今からこいつにサインを取り消させるから!な?」
そういうと、妖怪の長は大天使にサインを消すよう促した。
「……ふ……ん……サインなぞ……消すわけ……ないだろ」
「何言ってるんだ!このままだと雨花の攻撃はお前さんの脳みそに響き続けるだろう。そうなったらいくらお前さんでも死んでしまうかもしれないぞ!」
「な、何で……私たちはお前たちを利用して、挙句の果てに拘束したのだぞ?」
拘束が取れて、妖怪たちが立つ。妖怪たちが天使の目をみつめている。
「雨花が言っていただろう?「相手の大切にしたい部分も知ろうとすること」「考え続ける覚悟をしなくてはならないこと」わしらはそれをしたいんだ。その先にはわしらが想い描く幸せがあると、その先に掴んだものには自分の望む意味があると信じているから」
「!」
大天使は、妖怪たちの目に自分たちと契約した時とは全く違う。明らかに優しくて希望の光をかざした目をしていた。
そうか。この目を守ることがもしかしたら……
「雨花。もう降参だ。この攻撃をやめてくれ」
雨花「…………」
雨花はやめる気配がない。
???「いい加減にしなさい!!雨花!!」
「「!」」
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刑務所に入ってきたのは……
「お前さんたちは……雨花の友人の……!」
???「もう……だから一人で乗り込むのはやめた方が良いのに……」
???「早く雨花さんを止めましょう」
???「外にいた天使たちは全員確保したぞ。あとは……」
???「あの馬鹿閻魔を元に戻すだけだな!」
刑務所に入ったのは、「不山橙」「桃時」「兎白」「瑠璃人」たちだった。
雨花「…………ひひっ」
橙「桃時さん!行きますよ!」
桃時「えぇ!」
橙と桃時は、橙によって強化された拳で想いっきり殴りかかった。
雨花「あ”あ”あ”あ”!!!!」
しかし、その拳は雨花の神通力によって跳ね返されてしまった。
兎白「みんな神通止めは持ってるな?雨花はまだ神堕ちして日が浅い!もしかしたらこの神通止めが効くかもしれない!」
瑠璃人「早くやるぞ!!」.
兎白は、壁を作り、雨花を囲んだ。そして、頭上から神通止めを打ち込もうとした。
雨花「あぁぁぁ!!!!」
雨花が地響きを起こして、神通止めが潰れてしまった。
兎白「ぐはっ!!」
瑠璃人「ぐっ!!」
橙・桃時「兎白さん、瑠璃人さん・兎白、瑠璃人!!!!」
兎白と瑠璃人も地響きで潰れそうになる。しかし、雨花を押えることができた。
桃時「あんた本当n((橙「いい加減にしろ!!」
桃時・兎白・瑠璃人「!」
桃時より大きな声で橙は叫んだ。
橙「いっつもいっつも、独りで私たちの知らないところで闘って、そのくせ闘ってるような素振り一つもみせないで、何なんだあんた!!!!いい加減にもっと他人のこと考えろよ!!こんなに心配かけてるんだぞ!!あんたがしてることは全然かっこよくない!!めちゃくちゃ迷惑なんだよ!!!!この大馬鹿野郎!!!!だから……」
「「した約束くらい守れよ!!この野郎!!」」
雨花「…………」
雨花の地響きが止んだ。そして……
雨花「……へへっ。ガ……ツンと殴られ……た気分だよ。」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」
雨花「あぁ、もう……まぁいいや。とりあえ……ず……神通止め……貰え……ます?」
雨花は汗を沢山かき、軽い地響きが起こし、顔も体も血管が浮き出てピキピキしているが、笑顔で伝えた。
「や、」
「「「「やったぁぁぁぁ!!!!」」」」
雨花は神堕ちから脱却できたのだった。
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「捕まるのか。天使たちは」
雨花「そうですね。あの人たちの暗躍で何人も犠牲になっちゃったから」
橙「どうなるんでしょうか」
兎白「そもそもあの天使たちは西洋の生き物。日本という他国の彼岸を支配しようとしたからここの法律で裁かれ、西洋に送出移送されるそうだ。」
天使たちは大天使が降参したのと、雨花が天使の輪に傷をつけたため、とても不機嫌で、少し反抗しているが、今の状態では死神組組員に傷一つ付けられない。
「大天使さんや。」
「?」
「ここで、いつでも待ってる」
妖怪たちは天使たちを見送る。
今まで否定しかされなかった天使たち。
そんな天使たちに暖かい言葉をかけてくれた妖怪たち。
一時的とはいえ協力関係にあったのと、人を傷つけたという共通の罪を持っているからこそ、
お互いを、
自分自身を、
救うことができるのではないかと想った
雨花「あなたの言うとおり、わたしとあなたは同じかもしれないね」
大天使は、少し驚いて雨花の方をみる。
雨花「わたしたちとの違いは、考え方の相違。それだけでどこぞの国はミサイルを作り、どこぞの国は戦争をして他国に影響を与える。考え方が違うだけで多くの者が傷つき、恐れて……興奮する。あはは!これほど罪深くて恐ろしくて……良くも悪くも笑わせてくれる生き物なんだね。人間って。そんなもんなんだよ。人間も。もちろん神も。だから天使のあなたたちだって罪深くて恐ろしくて良くも悪くも笑わせてくれるほどの要素を持ってるんだから。同類もの同士、仲良くできなくても、分かり合えなくても、何となく一緒にいれることはできるんじゃない?」
その言葉をきいていた天使たちは一気に静まり返った。自分たちの敵だったのにも関わらず、今まで天使たちのしてきたことを全て踏まえて「一緒にいて良い」と言われたのだ。天使たちはとても驚き、そして……
「……その言葉。一応覚えておこう」
雨花「……あはは!はいはい」
そうして、天使たちは妖怪たちに、雨花たちに見送りながら、刑務所を去っていた。
雨花「…………」
橙「雨花さん?」
桃時「どうしたのよ。雨花」
雨花「ん?いや、この刑務所に来て、色々変わっていったものがあったなぁって」
わたしは……
最初はただ自身が強くなるために妖怪と闘っていたし、
自分のことを正しいと信じ込んでいる天使たちが大嫌いだったはずなのに……
そんな風に思っていた者たちと「共存」をするのも悪くはないのかもしれない……なんて想ったり……
「やめてよ」
…………想ったり……
「黒花ちゃんとは」
……想っ……
「二度と関わりたくない」
…………
雨花「…………」
桃時「そりゃあそうよ。アタシたちが沢山頑張ったんだから!」
瑠璃人「お前は刑務所まで来た時、オレたちをガードに使ってたじゃねぇか!」
桃時「アタシはか弱いんだから、守ってもらって良いの!」
兎白「お前は充分強いと想うが……」
瑠璃人「それな!」
橙「まぁまぁ喧嘩はやめましょうよ。やっと長い長い闘いが終わったんですから」
「さぁ、」
「「帰りましょう!」」
桃時・兎白・瑠璃人「えぇ・あぁ・おう!」
外は満月。月光が「鬼灯刑務所」をさっきまでの緊迫感をほどくように照らしていた。
雨花は、
この光が妖怪や天使たちを導いてくれることを願いながら橙たちと一緒にそれぞれ帰路に着いた。
────自分にはできないからと想いながら。
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