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魔獣は巨大な水牛のような形をしている。小さな家くらいの大きさはある。しかし水牛のような見た目だが、全身を覆うのは毛皮ではなく、トカゲのような皮膚だ。しかも剣も矢も通らなさそうに硬い。皮膚の|鱗《うろこ》の隙間から毒素を出し、四方八方に撒き散らす。その毒を吸い、討伐隊の皆が失神してしまった。
リオは魔獣がいる場所へと走る。何度も転び、全身を雪まみれにしながら走り続ける。
魔獣の近くへ着いた時には、足がガクガクと震えて立っていられなかった。
膝をつき、荒く呼吸を繰り返すけど、一気に冷たい空気を吸い込んで|噎《む》せてしまう。
リオの後ろを走ってきたアンが、心配そうにリオを見上げている。
リオは、何度も深呼吸をして息を整えると、魔法で自身とアンの身体に透明な膜を貼った。
討伐隊の皆が倒れる瞬間を遠くから見ていて気づいた。魔獣の周囲の雪が舞い上がるなり、皆が次々と倒れていった。魔獣は動いていないのにだ。それは毒を出したからに違いない。
岩陰に身を潜めて、リオは魔獣の気配をうかがう。魔獣は雪山の斜面に伏せて、目を閉じている。規則正しく背中が動いており、どう見ても眠っているようにしか見えない。なのになぜ、皆が近づいたことがわかったのか?皆の殺気を敏感に感じたのか?
空が白み始めるとすぐに、討伐隊が魔獣を囲んだ。王城の五人の騎士が、強弓に矢をつがえた。ギデオンが攻撃の合図の剣を突き上げようとした瞬間、雪煙が上がり皆が一斉に倒れた。
人が|蟻粒《ありつぶ》のように小さかったけど、目の良いリオは見えていた。一部始終を見ていて悲鳴をあげた。
しかしすぐに激しく動く鼓動を落ち着かせると、マントを羽織りアンを抱き上げて、屋敷を飛び出た。そして裏山の洞窟に行き、アンに中で待っているように告げた。だけど何度連れ戻しても、アンはリオの後を追ってきて離れない。仕方なくリオはアンを抱いて馬に乗り、休まず雪山の|麓《ふもと》まで走らせた。麓で馬を降り皆が倒れている所まで一気にかけ登った。必死だった。呼吸をするのも忘れるほどに。だから現場に着いた時には、ひどく疲れて立っていられなかったのだ。