テラーノベル
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「ま・・・政宗君・・・あの―」
桜が何か言いかけた時だった
プルルルルル♪
桜のスマートフォンがテーブルの上で軽快に鳴った、画面を見ると「奈々」の文字が光っている、桜は政宗を一瞥してから、スマホを手に取った
「もしもし?」
『サク?』
「奈々? どうしたの、こんな時に―」
『ちょっと待って、今外に出る』
ガサガサと衣擦れの音がして、奈々の息遣いが近くなった
.:・.。. .。.:・
【同時刻・大阪】
御堂筋の中心部にそびえるガラス張りの高層ビル、その30階にジンのITアプリ開発会社「WaveVibe」はあった
夕方のオフィスフロアは朝からいきなりジンの社長辞任のライブ配信放送で大騒動だった
社員達は皆仕事に成らず、二人、三人と固まって、廊下に出て声を潜めながら何かを話している
―社長が辞任する、しかも今日付けで―
奈々はカウンターの内側でそっとスマホを取り出し、素早く桜の番号を押した、受付嬢らしく背筋を伸ばしたまま、口だけを小さく動かす
「もしもし、サク?」
奈々は「少し席を外します」と同僚に目配せして、エレベーターホールの隅へするりと移動した
受付嬢らしく紺色の制服に、ピンクと紺のストライプネクタイをきりっと締め、一昔前の女優の様な斜めに被った小さな帽子の姿の奈々が、顔周りのカールしたおくれ毛をひとつ耳にかけてスマホにむかって話す
「ターザン社長が今日付けでこの会社の辞任表明をしたわよ!」
『ええ?』
スマホの奥の桜の声が裏返った
「いったいどういうこと?社長は結婚報告しにあなたの実家に一緒に行ってるんじゃないの?」
『・・・それが・・・』
歯切れの悪い桜の声に奈々の中で何かがすっと繋がった、社長の突然の辞任表明、桜の落ち込み様、実家に行ったはずなのに、なぜか桜一人、今も淡路島にいる
奈々はさらに声を潜めた
「まさか・・・偽装婚、バレたの?」
沈黙が答えだった
『・・・バレたというか・・・ジンさんが自分でバラしたの・・・』
「はぁ?」
奈々は絶句した、エレベーターホールの壁にそっと背中を預けた、小さな制服帽に収まっていたカーリーヘアのひと巻きがひとつ、ぱさりと頬に落ちた
コメント
3件
辞任を発表…ジンさんのせっかく築いてきたものが…このままでは良くないよ💦 どうにかならないかな、まだ間に合うかもしれないよー💦桜ちゃん、ジンさんを助けてーー涙😭
奈々同志よ😭連絡ありがとう🙏桜ちゃん愛してるんだよね?後悔しない?ターザン社長推しだよね?彼を守れるの桜ちゃんだけだよ? 優秀な桜ちゃんが当面社長になるとかさ、何か手はある!とにかく走れ〜🚩 とはいえ、どうなるんだろ😣
何とかならないものかしら😔