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内容が内容なだけに、少し真面目な書き方に戻す。高校2年生の秋頃だったと思う。

当時は厳しい家庭環境に耐えられずにグレて、付き合っていた彼氏の家に転がり込んで、しばらく半同棲のような形で住んでいた。

当時の彼氏はかなり小柄で、原付バイクをこよなく愛する、茶髪のまあまあヤンチャな雰囲気で、誠実な奴以外認めない私の母は相当毛嫌いしていた。

付き合って2年ほどしたある日を境に、変な夢をよく見るようになった。

まず登場する人は、

・黒髪癖毛のちょっと根暗そうな若い男

・金髪ストレートと濃いメイクが特徴の、気性の荒そうな若い女

・小柄で細い茶髪の若い男で、こいつだけ何故か顔が毎回はっきり見えない

このメンバーは必須だった。どれも高校を卒業したかしてないか、くらいの年代だと思う。

始めに見たのは、何処か高い建物の屋上で、黒髪の男が女とモメていて、いきなりナイフで女を刺すというもの。

それだけでも夢見が悪いのに、次の日また同じ人達が夢に出てきた。

今度は、金髪の女が茶髪の男と2人でバスに乗っている場面。

それはほのぼのとしていたのだが、更に翌日には最初に出てきた黒髪の男が、2人が乗るバスに乗車してくるという夢。

そして、更に翌日の夢では茶髪の男と黒髪の男が口論になっていた。場所までは分からないが、外ではなく室内に見えた。

何故か毎回その場面を最後まで見てはいけない気がして、途中で無理矢理目を覚ましてしまうのだ。

その夢は、次第に一巡するとまた最初に戻ることが分かった。

①マンションらしき建物の屋上で黒髪の男が女とモメて、男がナイフで女を刺す。

②場面は飛び、女は茶髪の男と一緒にバスで出掛けていて、実にほのぼのした田舎の景色を見ながら談笑している。

③そのバスに黒髪の男が乗車して、女は驚き、茶髪の男と黒髪の男が口論になる。

④女の居ないところで、男同士がかなり大喧嘩をしている。

⑤また振り出しに戻って、黒髪の男が女を殺してしまう。

ずっとその繰り返し。いい加減、嫌気がした私は、自分の彼氏に相談してみようと考えた。

「ねえ、ちょっと明日でいいから相談事があるんだけど」と言うと、「すまん、明日は用事ある」と返された。

詳しく訊けば、彼氏の先輩(男)が友達の葬儀で忙しく、彼氏も関わりがある友達だったから葬儀には出ることになった、ということだった。

実はその彼氏、本来なら週末だかにその先輩(男)の家に泊まりに行く予定だったのね。だから予定を立てるためにメールをしていたら、そんな展開になったそう。補足すると、当時はまだガラケーで、LINEすらなかった。

で、気になったのが「友達の葬儀」っていう話。嫌な予感がして訊いてみたら。

「あぁ、先輩の友達な、(先輩から見て)タメの女友達が男友達とモメて殺されたんだと」

……少しゾッとした。

「それ……もしかして凶器はナイフ?」

「……なんでそれ知ってんの?」

言わなきゃ良かった、と後悔した。

「男の先輩は黒髪癖毛で、女の先輩は茶金髪のストレートでちょっと高飛車なタイプじゃないよね?」

「……だから、なんで知ってるん…?」

冗談抜きで、図星だったらしい。私は素直に「夢で見た」と伝えると、オカルトの苦手な彼氏は震えていた。

その日の風呂上がり。髪を乾かそうとして居間に視線を移すと一瞬、夢に出てきた金髪の女が、居間に立っているのを鏡越しで見た。

一体、何が目的で現れたのかと身構えたが、彼女は立ったまま鏡越しでこちらを見つめるだけで、微動だにしなかった。無関係の私に取り憑くなよ、という思いが伝わったのかもしれない。

しばらくそのまま無言で目が合っていたが、やがて彼女は私の彼氏を無言で指差した。これが何を意味するのか、最初は分からなかった。やがて、ふっと彼女の姿が消えた。その後、彼女の姿を見かけることはなかった。

その事件はニュースとして一時的に広まった。

「怖いよねえ」と、後日夜ご飯を一緒に食べていた親友が言った。彼氏と親友は同じ高校で、ニュースの内容が意外と身近で起きていたことに驚愕していた。

私はあの日以来ずっと気になっていたことを彼女に尋ねた。

「あのさ、○○(私の彼氏)って事件の金髪の人と知り合いだったりしないよね?殺された方の……」

「……ちゃんと見たことはないけど、○○が仲良い先輩繋がりで接触はしたこと何度もあるはず。この間も隣の市まで2人で遊びに行ってたらしいよ。……あ、気分悪くしたらごめん。もしかしたら浮気かもしれないなって、正直思ったから……ここだけの話ね」

「浮気してるのは何となく気付いてたから大丈夫。でも、隣の市って?もしかして原付じゃなくて高速バスで行ったりしてた?」

「知ってたの?殺された先輩って彼氏がいてさ、雪の彼氏と遠出したってこと相当怒ってたらしいんだよね。当事者じゃないから、あくまでも見聞きした情報だけど」

そこで夢の内容を思い出す。茶髪の男だけ顔がはっきり見えなかった。でも、背格好が私の彼氏に似ていた。流石にそれはないだろうと潜在意識で拒否していたが……。

それ……もしかして凶器はナイフ?

 ……なんでそれ知ってんの?

この会話の時、まだニュースにもなる前だったから、凶器について情報なんてなかったはず。身近な事件だったから、友人繋がりで情報が回ったのかな、と思ってその時はあまり気にしていなかった。

ふと、金髪の私の彼氏を無言で指差していたのを思い出した。もしかしたら、彼女が犯人や犯人に繋がる人物を私に伝えたかったのかもしれない。

「……繋がりあるから迷惑かけたらすまん。私あいつと別れるわ。理由聞かれたら、浮気してただろテメェ!って言ってたことにして欲しい」

「……分かった」

親友に夢の話はしていない。単純に気分を害した結果だと思ったのだろう。口裏合わせとくよ、と快く了承してくれたのを後押しに、私はその日のうちに彼氏に別れを切り出した。

もちろん彼氏は理由について「俺浮気なんかしてねえよ!」と反論していたが、これ以上面倒事に巻き込まれるのもダルいので、問答無用で切り捨てる形をとり、荷物をまとめて彼氏の家を出た。

そこから半年後、黒髪の男が逮捕されたと親友から聞いた。ニュースでも少しの間、犯人逮捕と流れていたのを覚えている。

親友が言うには、犯人の男は「夢に彼女が出てくる」と怯えた様子で出頭したという。その怖がる様子は異様で、 男の友人、つまり親友の先輩達の中では「やっぱりあいつが殺ったんじゃね?」と噂になっていたようだ。その噂は後輩にも知れ渡り、ついに出頭に至ったという。

でも、噂では黒髪の男が「俺カッとなって刺しちゃったけど、あの時あいつまだ生きてたんだよ。あいつ逃げて外に出てって、俺追いかけてねえからその後のことは知らねえ」と言ったらしい。

これはあくまでも私だけの仮説だが、少し疑ってしまった。刺された後に逃げた先は、もしかして私の彼氏……いや、元彼のところだったのではないか、と。逃げる途中で出血多量で亡くなったのか、それとも更にその後トラブルがあったのか。

真意は不明だが、かなり後味の悪かった話だ。この話は事件当時、実は別のサイトにかなり濁した形で投稿していた。もう15年ほど経つから、あの時の詳細を書いても、誰も困らないだろうと思って投稿した。

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