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使用人の朝は早く、主人の起床はいつだって遅い。柔らかい朝日。独特の冷たくてよく澄んだ空気。
そして俺自慢の…
「おはようございます、ご主人様」
全てを見透かすかのような宝石に似た何かを感じさせる瞳。整えられた短い髪。1度目にしたら決して忘れられないほどの美貌を持つ彼の名は、エドマンド・ハリントン=スミス。俺の友人であり、今は専属の使用人だ。
…待て。本来、来るはずの視覚情報ではないものが俺の脳に届いている
…何故男であるエドマンドが女性使用人の装いをしているんだ?
違う、俺は指示をしていない。では何故。
「なぁ、エドマンド。説明をくれ」
何か問題でも?と言いたげな表情。問題しかない。
裾の長い黒色の装いとは対照的に、柔らかく控えめなレースのついた白のエプロン。ご丁寧にヘッドドレスまでもをつけている。エドマンドの外見と相まって、随分と様になっている。
……俺の屋敷には存在しない服装。わざわざ取り寄せてまで?まさかそう言う趣味が?
そんな俺の考えをいつものように見透かして、
「勘違いなさらず。ご主人様の女嫌いを治すためでございます。」
ヤブ医者の方がまだマシな治療をするだろう。女嫌いを治すために自らを女の身なりにするとは。彼は没落すると同時にプライドまでも殴り捨てたのだろうか。
さっさと状況を理解しろ、と言う視線を向けるエドマンド。
それは無理な話だ。どんな人生を送っていれば、元貴族の友人がメイド服を着て起こしにくると言う状況を味わうんだ。
「過去のトラウマからいつまでも逃げるおつもりですか?」
彼の残酷なまでに澄んだ瞳が、俺の内面を反射する。
耳の痛い話だ。
彼の言う過去のトラウマとは、俺が幼少期に家族から受けた性的被害のことである。内容は語らないが、俺の中での影響力は凄まじく、かろうじて女性と話せるようになったものの、触られるなどをされれば一瞬で俺の頭は過去に戻してしまう。
「私はあなたを待てても、時間はあなたを待ってはくれませんよ」
「ですが、幸い時間はたっぷりあります。この身を持ってご主人様の女嫌いを治して見せましょう」
こうして、俺と奇妙な女装メイドとの生活が幕を開けたのであった。