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それから……
明日以降の段取りをあれこれ話して、あべちゃんと舘さんは帰っていった。
岩本くんはずっと付き添ってくれていたあべちゃんと交代で、病院に残る。
「目黒が居るから大丈夫だとは思うけどさ。お前も疲れてんだろ?ちょっとは休めよ」
「いや……俺は平気だよ。全然眠くないし」
「いいから休め。負担はないってお前、言ってたけど……明日から周りを警戒して、自分の身も佐久間の身も護んなきゃなんねぇんだぞ?」
「それは……」
「な?佐久間も寝たし、お前も寝ろ。ここまでソファ引っ張ってやっから」
「えっ」
俺の頭をクシャッと撫でて、岩本くんは壁際のソファをベッドのすぐ脇へ引っ張ってきた。
その隣にパイプ椅子を置いて、自分はそこへ腰を下ろす。
「これならちょっとは安心して眠れるだろ?」
「岩本くん……頼れるパパ過ぎない?」
「バカ言ってないで、さっさと横になれ。ほら、ブランケット借りてきてやったから」
促されるままソファに横になると、岩本くんがその上からブランケットをかけてくれた。
少しだけ足がはみ出すけれど、寝心地はそれほど悪くない。
「んん……れん……」
「……佐久間くん?」
掛け布団からはみ出した佐久間くんの手が、何かを探すように動く。
横になったまま咄嗟にそれを握ると、彼はまた穏やかな寝息を立てた。
可愛い。
可愛くて、頬がゆるゆるになってしまう。
態勢的にちょっとしんどいけど、このまま眠ってしまおうか。
そう思っていると、岩本くんがぽつりと呟いた。
「……お前さ。佐久間のこと、好きなんだろ?」
「…………それ、あべちゃんにも言われたんだけど。……なんでみんな、分かるの?」
「そりゃあ分かるだろ。何年一緒に居ると思ってんだ」
呆れ声でそう言って、岩本くんはため息を吐き出す。
「お前って、誰にでも平等に優しく接してるけどさ。……佐久間が相手の時だけ、ちょっと違うんだよ」
「……そんな、あからさまにしてるつもりないんだけど」
「ま、メンバーじゃない人間が見ても分かんねえとは思うよ。でも、俺たちには分かる。……佐久間を見てる時のお前の目、なんつーかさ……こっちが照れるくらい甘いんだよ」
「え……っ、そんなに?」
あべちゃんにも『恋をしてる人の目』と言われたけれど、そんな自覚はもちろんなくて。
岩本くんはクスッと笑って、横になっている俺の顔を見下ろした。
「そりゃもう。他のメンバー見る時と全然違う」
「…………」
「いいと思うよ。目黒はさ、心配になるくらいストイックなとこあるじゃん?でも、佐久間と居る時はいい感じに力が抜けてるっつーかさ……なんかいい雰囲気なんだよ」
「……そう?」
「ああ。佐久間は佐久間で、目黒と居る時は俺らといる時とちょっと違うんだよな」
「えっ……佐久間くんも?」
それってつまり、
佐久間くんも俺と同じ気持ちかもしれないって
少しは期待してもいいってこと?
思わず起き上がりかけた俺の肩を押さえつけて、岩本くんが苦笑する。
「そんな期待に満ちた顔すんなよ。なんとなくそう感じるってだけだ。……佐久間は誰に対してもニコニコキラキラの笑顔向けるだろ?」
「ん、まあ……そうだね」
「それが、お前相手の時はいつも以上に楽しそうにしてるって感じてるだけ。ま、お前は俺らとは違う関係性がプラスされてるじゃん?」
「先輩後輩で、風呂友?」
「そ。だから余計に可愛がってるってのもあると思う。……どっちにしろ、だ。外にはお前の気持ち、漏れないようにしとけよ?自分がアイドルだってことは、忘れんな」
「うん……分かった」
それはそうだ。
外に漏れれば、とんでもない騒ぎになることくらい分かっているつもり。
「……佐久間くんも、俺のこと好きになってくれれば嬉しいんだけどなぁ」
「お。天下の目黒蓮らしからぬ台詞。お前のこと好きにならねぇ奴なんかいないだろ」
「そんなことないよ」
人気が出た分だけ、アンチも増える職業だ。
俺のことを嫌いだという人は、ファンで居てくれる人と同じだけ……いや、それ以上に居るだろう。
でも、佐久間くんには……好きな人には嫌われたくない。
「いいから寝ろ。明日は個人仕事入ってんだろ?」
「ん……そうだね……」
佐久間くんの手を握ったまま、目を閉じる。
眠りに落ちる間際、岩本くんが何かを呟いたけれど……その声を上手く聞き取ることは出来なかった。
「くっ付くのは時間の問題だろ。気づいてねぇのはお前だけだよ。まあ、なんだ…………佐久間を頼むぞ、目黒」
---
翌日
午前中から個人仕事が入っていたので、岩本くんと入れ替わりで病院へやってきたふっかさんに佐久間くんを託して部屋を後にした。
部屋の前にはマネが居て、2人でその場を離れる。
朝イチは雑誌の撮影、そこからアンバサダーを務めているブランドのスチール撮影に行って、じき収録に入るドラマのスタッフや共演者たちとの打ち合わせ……と、いつものようにタイトなスケジュール。
でも今日の仕事は夕方には終わるので、その足で佐久間くんを迎えに行く予定。
ちなみに、拠点になるのは佐久間くんの家に決まった。
佐久間家の猫ちゃんは繊細なところがあって、環境を変えるとストレスになるだろうからってことで。
うちのモコはその点、お出かけ大好きだし実家に連れて行っても大喜びするから大丈夫だろう。
出かける時、昨日よりいくらか元気になった佐久間くんに『蓮、行ってらっしゃい!』と見送ってもらえて、ちょっとホクホクだ。
……明日からはしばらく、見送ってもらえるんだなぁ……と思うと、余計にニヤニヤしてしまう。
一緒に暮らす理由が理由だし、浮かれている場合じゃないのは分かっている……けれど。
新婚さんみたいだよなぁ
……なんてね。
「……おい」
「いてっ!」
後ろから伸びてきた手に、後頭部をはたかれた。
そこを押さえながら振り返ると、呆れ顔のしょっぴーが立っている。
そういえば、今日の雑誌の撮影はしょっぴーと一緒だったっけ。
「何すんの、しょっぴー」
「何すんの、じゃねーよ。お前さ、めちゃくちゃ浮かれてんな?」
「うっ」
「どーせ、佐久間と同棲嬉しいなーとか思ってたんだろ」
「どっ…………い、いやいや。まさかそんな……」
っていうか、当然のようにしょっぴーにも俺の気持ちが筒抜けなことがなんていうか……気恥ずかしい。
「照れてんじゃねーっての。ったく……お前、危機感ねぇなぁ」
「いや……ちゃんと、分かってるって。佐久間くんを護らなきゃならないんだから、浮かれてる場合じゃないってことくらい───」
「バーカ。お前も狙われてんだっつの」
今度は額を指で弾かれた。
「しっかりしてくれよ。怪我でもなんでも、ひとり欠けたらSnow Manじゃなくなるって自覚持てよな」
「……うん……ごめん、しょっぴー。気をつけるよ」
「そうしてくれ。……あと、俺と居る時は自分の身は自分で護れよ。俺は格闘不向きだし」
「ああ……か弱そうだもんね……」
「うっせー」
もう一度額を弾かれそうになり、背伸びをして逃げる。
こらこら、アイドルが舌打ちしないの。
しょっぴーとくだらないやり取りをしている内に、撮影の時間になった。
とりあえず切り替えて、サクッとこなそう。
出来れば巻きで終わらせてしまって……佐久間くんを早く迎えに行きたい。
「よし、早く撮ってもらって早く取材受けよう」
「……まさかめめがここまで色ボケになると思ってなかったわ」
「俺も、自分でびっくりしてる」
真顔でそう返すと、しょっぴーがいつもの感じで大笑いする。
昨日から張り詰めていたけれど……そのおかげで、少しだけいつもの自分を取り戻せたような気がした。
---
その後、予定通り仕事をこなして病院へ戻る。
病室の前にはふっかさんと付き添いの交代をしたあべちゃんが居て、こちらへ向かって軽く手を上げた。
「めめ、おつかれ」
「あべちゃんも、おつかれ。……佐久間くんはどう?」
「脳震盪の影響はなさそうだから、昨日言われた通り退院しても大丈夫だって。……あと、さっきまで佐久間のお母さんが来てたよ」
「えっ……そうなの?」
「家族には状況を伝えておいた方がいいだろうってことでね。しばらくめめと一緒に暮らしてもらうって伝えたら、よろしく伝えてくださいってさ」
「そっか……ちゃんと挨拶しておきたかったな」
「ま、いずれその機会もあるんじゃない?あとは……警察の人も来たよ」
少しだけ声のトーンを落とすあべちゃんに、俺も自然と声をひそめる。
「……何か分かった?」
「いや……犯人の手がかりは相変わらず。でも、佐久間から話を聞いて……あと、めめから聞いてた第三者がその場に居た可能性の話もして、事件性が高いって判断してくれたみたい。捜査に入ってくれるってさ」
「じゃあ……捕まるのも時間の問題かな」
「うん。進展があればすぐに連絡くれるそうだよ。それから……事務所の上の方にも報告はしておいた」
大事な所属タレントが怪我を負わされたのだから、流石に黙ってはいられないということで。
こちらも警察に全面協力するとのことだった。
それと、マスコミの対応も。
「テレビ局で事件が起きたんだ。きっとすぐに話は広まる。救急車も呼んじゃったしね」
「だよね……むしろ、移動中囲まれなかったのが不思議なくらいだったんだけど」
「事務所がマスコミを抑え込んでくれてるんだと思う。捜査にも支障をきたすかもしれないし。あと……お前と佐久間が期間限定でも一緒に暮らすならさ。絶対、面白おかしく書き立てる週刊誌もあるだろうから」
「……なるべく、バレないように注意しなきゃだ」
ほら、浮かれてるばかりじゃいられないんだ。
各所に気を配りながら、ひっそり生活しなければいけない。
俄かに高まる緊張感にギュッと唇を引き結ぶと、あべちゃんが笑って俺の背中を叩いた。
「まあね、気をつけるべきところはあるんだけど。基本的にはいつも通り生活して大丈夫。ただ……」
「アイドルだって自覚を持って、でしょ?岩本くんにもしょっぴーにも言われたよ」
「分かってるならいい───」
「ねえねえ、あべちゃん。いつまで部屋の前で喋ってんのぉ?蓮、帰ってきたんじゃねーの?」
部屋の外でボソボソ喋っていたのが気になったらしい。
中から佐久間くんの声が聞こえてきて、俺たちは顔を見合わせて小さく笑う。
「ごめんごめん、色々報告があったからさ」
あべちゃんがそう言いながら、ドアを開く。
彼に続いて病室へ入ると、佐久間くんが俺を見てパアッと笑みを浮かべた。
「蓮、おかえり〜!」
「……っ、ただいま、佐久間くん」
無邪気すぎる可愛い笑顔に、言葉を詰まらせてしまう。
思わずニヤニヤする俺の背中を、あべちゃんがベチンと叩いた。
「佐久間、帰る支度は済んだ?」
「うん。って言っても、着替えるくらいだけどな〜」
「まあ、入院するための荷物を持ち込んでたわけじゃないからね。……じゃ、めめ。後は頼んだ」
「ん、任せて」
「あべちゃん、ありがとね。今から仕事あんのに付き添ってもらっちゃって」
「いえいえ。とにかく明日までは家で大人しくしときなよ?明後日はスケジュール通り、YouTubeのロケがあるからね」
「はぁーい」
ひらひらと手を振って部屋を出ていくあべちゃんを見送ってから、俺は佐久間くんへ向き直る。
「退院時の注意事項はもう聞いたんだよね?」
「うん。蓮が戻ってくるまで待たせてもらってただけだから、いつでも帰って大丈夫だってさ」
「そっか。……じゃ、俺たちも行こう」
「だな!まずは蓮の家までモコちゃん迎えにいかねーと!」
「……嬉しそうだなぁ」
「だってぇ!モコちゃん可愛いし!ツナシャチと仲良くしてくれたらいーなぁ」
佐久間くんの荷物を持ち、もう片方の手で背中をそっと押した。
「ちょっとの間、面倒かけちゃうけど……よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。面倒かけるのはお互い様だからね?」
「ん。早く元通りになるといいな」
「……そうだね」
早く犯人をあぶり出したいのはもちろんだけれど
俺としては、ずっと一緒に暮らすのもアリかな、なんて思うわけで。
(……そんなこと、言えないけどね)
苦笑を浮かべながら、俺は佐久間くんと連れ立って病室を後にした。
*****
本音もダダ漏れ^^
コメント
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🖤は常々2つの事同時に出来ないって言ってるから感情ダダ漏れは仕方が無いけど🩷は気付かない(´;ω;`)ウッ… でも🩷は恋愛赤ちゃんと言われてるからね( ´Д`)=3 2人と3匹の生活が楽しみで犯人の動機が分かるといいな
お疲れ様、ROYさん!第4話、読ませてもらいました。 もうね、めめの気持ちがダダ漏れすぎてにやにやが止まらなかったよ…!岩本くんに「佐久間を見てる目の甘さが照れる」って言われるシーン、めめ本人が自覚ないのがまた尊い。しょっぴーに「色ボケ」って言われて真顔で「自分でびっくりしてる」って返すのもツボった。 そして何より、佐久間くんの「蓮、おかえり〜!」であの顔になるめめ…ズルすぎる(笑) 周りのメンバーがみんな優しくて温かいのも、この作品の好きなところです。久しぶりにちゃんと恋愛してるアイドルもの読めて満たされました。続きも楽しみにしてますね!