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気を失ってからどれくらい時が過ぎたのだろう……。再度目を覚ました時目の前には動物の亡骸が数体ころがっていた。突然の事で状況を把握出来てない私にあの声が話しかけてきた。

「人間が食う量が分からないがこんなもんだろう?」

どうやら私が気を失っている間にこの竜が気を使って食料を確保してくれたのだろう。この竜の行動のせいで散々言われてきた竜のイメージとはかけ離れていく。

「人に優しくとかできるんだ」

「いや?我はただお主が気に入ってるだけだ。ここまで竜に対して関心がないやつが現れるとはな」

そのあと別に聞いてもいないのに彼の境遇を長いこと聞かされた。まとめて言えば、彼が出会ってきた人はみな冒険者で彼らは口を揃えて『名声と富のために!』とか言ってたらしい。それを蹴散らして生きてきたからか人とは強欲で穢らわしい存在だと認知していたとのこと。別に何一つ間違ってはない。付け加えるなら虚勢を張るしかできない臆病者達でそのくせして欲を満たそうとする生き物だと思う。そう思うもそれを口に出すことなく淡々と動物を解体していき、火をくべて肉を焼いていく。

「して?お主はなぜこんな森の中一人で暮らしておる?普通ならば大人と共に町や村に暮らしてるもんだが…」

「その村から逃げ出したの。」

「ほぉー?その歳でなかなか思いきった行動とるんだねぇ?」

「だって、私の親は私を産んだことで死んだしこの額の痣のせいで変に村人から忌み嫌われたからね。」

「痣?」

「なんか生まれたときからあったみたいなんだけどその模様が竜を連想させるんだとさ」

「となると我のせいか!」

「は?」

「いやー!我が最強すぎて人々の心に住み着いてしまってるんだもんな!ハッハッハッ!!強すぎてすまんなあ?」

「いい迷惑だよホント……て、言いたいところだけどあんたら竜に非はないでしょ?」

「?」

「人が勝手に恐れて、討伐を考えてそれで敗れて結果的にまた人は竜に恐れおののく。あんたに非はなくない?」

「………やはり面白いのぉ、お前さんは」

「別に嬉しくない。」

焼きあがった肉を手に取り食べながら竜とそんな会話をする。他者が見ればこの光景はきっと異様なものと思うのだろう。だって人は竜を恐れて討伐対象にしているのに、彼女はただ横に座って焼きあがった肉を食べいるのだから。なにより、竜が人を襲わず会話を交し、談笑しているという事実が異様でしかない。

「つかぬ事を聞くが、お主これからどうするのだ?」

「別に目的なんかないよ。死ぬ理由も生きる理由もないから、何も考えてない。」

「幼いくせして考え方が達観しているなぁ」

「ま、強いて言えば死にたいからあんた私のこと食ってくんない?」

「おっ!いいのか!?」

「別に死ぬことに恐怖はないからさ。ただ、私が居た村で死ぬのは癪だからあそこでは死にたくなかっただけだしね。」

「なら、お前さんを頂こうかな!」

「えぇ。一口でいっちゃえばいいわ」

「けど、まだその時じゃない!」

「は?」

「だってお前さん細すぎるんだもん。食っても上手くなさそうだし」

「そう…」

「だからもっと飯食って肥えてきたら食うことにする。」

「じゃあ死ねるのはまだ先ね」

「あと、我から離れて暮らすのも今後禁止だな」

「そのくらい好きに生きさせてよ」

「我の知らんとこで死なれるのは困る!それすなわち飯食えないってことになるからな!」

「あぁ……確かに言われればそうかもね。なら、いいわ。あんたの元で暮らしてあげる」

「うし!んじゃまずお前さんにはその肉をたらふく食ってもらって、川を見つけてもらおう!」

「飲み物も確保ってこと?」

「それもあるがお主……臭うぞ?」

「女の人にそれは失礼ってやつかも。村のブス達がそんなこと話してたしね」

「ま、とにかく今後よろしく頼むな!」

「食い時になったら遠慮なく食べてもらって構わないから。」

「うむ!そうするつもりだから案ずるな!!」

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