俺はそのあと麗華さんからゲンコツを喰らい、風呂にぶち込まれた。どうやらここは麗華さんの自宅らしい。服は濡れていたしアルコール臭かったから風呂はありがたかったけど、こんないい匂いのする風呂に入るのは初めてで正直落ち着かない。
風呂からあがったらスウェットの上下が用意されていた。それは俺にちょうどよかった。いくら麗華さんが背が高いからといって俺のサイズを着ることはないだろう。
風呂からあがってリビングに向かった。麗華さんはキッチンでなにやら忙しそうにしていた。俺は風呂をいただいた礼を言った。
「ねえ、麗華さん。これって麗華さんの彼氏のヤツ?」俺はスウェットを指した。麗華さんは一瞥するとすぐに作業に戻っていった。
「彼氏なんかいないわよ」
「じゃあ元彼のか」
ダンッと大きな音がした。しまった、麗華さんは包丁を持っていたのだ。包丁はまな板に突き刺さっていた。
「……デリカシーがないわね。黙ってあっちに行ってて!」
怒られてしまった。やはり元彼というワードはあまりよいものではないらしい。俺は仕方なくリビングのソファに座った。
ぼんやりと部屋を見回す。ここのリビングだけでも結構広い。キッチンだって相当広い。それが仕切りなくつながってるから二十畳以上あるんじゃないだろうか? 風呂も広かったし、奥に部屋があるようだった。広いし、本牧だし、最上階だし。家賃はいったい幾らくらいなんだろうな。
そうこうしてると麗華さんは食事を持ってやって来た。
「お腹空いてるでしょ?」確かに。緊張してて今日はほとんど食べていなかった。
テーブルに並べられたのは豆のスープにメキシカンライス。メキシカンライスにはアボカドとゆで卵とブロッコリーが添えられていた。なんかお洒落な食べ物だな。しかも美味い。あとで作り方を教えてもらおう。
「あのさ。真中さんって麗華さんの常連さんなんだろ?」
「ええ、まあ」
「真中さんはどういう鳴き真似するんだ?」
「は?」
「豚の。俺がoink oinkって鳴いたら麗華さん驚いてたじゃん? 正解は何なのかと思って」
麗華さんは吹き出しそうになって咽せた。ケホケホ咳き込んでいる。
「他人のプレイの話は基本的にしないんだけど、真中さんの名誉のために言っておくわ。真中さんはプレイしないから。基本的に見てるだけ」
そうなんだ。見てるだけって何が楽しいのか分からないけど、そういう人もいるんだな。
「大半が『ブーブー』じゃないかしら?」
「それは違うな」
「なんでそんなにドヤ顔なのよ!?」







