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『7・03』
女の子が見せた数字。
頭から離れなかった。
七時三分?
七月三日?
部屋番号?
何の意味だ。
俺は工場を出ても、その数字のことばかり考えていた。
「おい」
後ろから声がした。
振り返る。
誰もいない。
気のせいか。
そう思った時だった。
小さな石が足元に転がってきた。
カラン、と音を立てる。
石には輪ゴムで紙が留められていた。
俺は周囲を見回す。
工場の影。
誰も見えない。
急いで紙を外す。
そこには一行だけ。
**『時計を見ろ』**
俺は反射的に腕時計を見る。
時刻は
**19時03分。**
「……!」
そういうことか。
7・03は時間だった。
その瞬間。
工場の二階。
一つだけ窓が開いた。
42番の女の子が立っている。
ほんの数秒。
俺と目が合う。
そして。
静かに窓を閉めた。
それだけだった。
でも。
十分だった。
あれは偶然じゃない。
あの子は俺に何かを伝えようとしている。
帰宅後。
俺は部屋を隅々まで調べ始めた。
クローゼット。
テレビの裏。
机の下。
コンセント。
何かあるはずだ。
監視されている理由が。
三十分ほど探した頃だった。
机の裏に、指先ほどの黒い物が貼り付いているのを見つけた。
「……何だこれ」
小さな丸い機械。
見たことがない。
恐る恐る剥がす。
ランプが一度だけ点滅した。
盗聴器。
そう思った瞬間。
背筋が冷えた。
俺は急いで袋に入れ、近所の川へ向かった。
橋の上から思い切り投げ捨てる。
小さな音を立てて、水の中へ沈んでいった。
「これで……」
少しだけ安心した。
その時だった。
スマホが震える。
例のアカウント。
俺は恐る恐る開く。
【参加者番号17】
一呼吸置いて。
次の文章が表示される。
【部屋の清掃、お疲れさまでした】
俺は凍りついた。
どうして。
盗聴器を捨てたことまで知っている。
画面はさらに更新される。
【安心してください】
【予備を設置済みです】
俺はその場で膝をついた。
呼吸が浅くなる。
終わってる。
もう。
全部。
終わってる。
その時。
スマホとは別の音が鳴った。
ピコン。
机の引き出しの中だった。
開ける。
見覚えのない小さなスマートフォンが入っている。
黒い画面が光る。
そこには、たった一つだけメッセージが表示されていた。
**『信じるな。組織にも裏切り者がいる。』**
送り主の名前はなかった。
(第二十一話へ続く)
コメント
1件
いやもう、冒頭からゾクゾクしました…。「7・03」が時間だと気づく瞬間、そして女の子が窓に立っていた場面の緊張感、そこから自室の盗聴器発見まで、一気に引き込まれました。特に「部屋の清掃、お疲れさまでした」の一文、最高に不気味で鳥肌立ちました。最後の謎のスマホからのメッセージで次回が気になって仕方ないです。るしゅさんの伏線の張り方、本当に好きです。