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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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福島の桃が届いた。大きいのが6つ。千歳は『すごくでかい!』と喜んでいた。
とりあえず一個、お昼のデザートに千歳が剥いて切り分けてくれた。
『柔らかすぎなくて剥きやすかった』
「うん、熟しても硬い桃選んだからね」
福島は硬い桃で有名なのだ。
桃をひとくちかじると、フレッシュな果物特有の心地よい甘さと、りんご寄りの硬めの食感を感じられた。鼻に抜ける香りは甘いながら爽やかさがあり、香料のベタッと甘い桃の香りとは比べものにならなかった。
『うーまい! めちゃくちゃうまい! 高級な果物ってこんなうまいんだなあ』
千歳はにこにこで二切れ目の桃にフォークを伸ばした。
「食べれてよかったよ……こんなにおいしいなら、もっと早く買えばよかったな」
でも、人生にずっと余裕なかったからなあ。余裕があればこそ、か。
『桃、あと5つか。こんなにあるんなら、アレンジしたのも食べたいな』
千歳は3切れ目をかじりながら言った。
「どんなアレンジ?」
『まずやりたいのはアールグレイマリネ』
アールグレイマリネ? どんなアレンジなのか、イメージがわかない。
「どんなの?」
『はちみつとレモン汁と、アールグレイの紅茶の茶葉を細かくして桃と和えるだけ』
「へえ、おいしそう」
ちょっと大人の味って感じだ。
『じゃあ明日のおやつはそれな! あと、油多くなっちゃうけど桃モッツァレラもやりたいんだよな……』
千歳は悩む顔になった。
「それは、桃とモッツァレラチーズを一緒に食べるの?」
『そこに、オリーブオイルとレモンの皮と黒こしょう』
なるほど、カプレーゼの亜種みたいなのか。
「たまにはそういうのも食べたいな」
『そうか?』
「千歳の料理なら、絶対においしいし」
『褒めても何も出ないぞ?』
そんなこと言いつつも、千歳は嬉しそうに笑った。
『じゃ、明後日の飯は全体的に油少なめにして、桃モッツァレラ食べても大丈夫にしよう。午後に材料買ってくる』
「ありがとう」
千歳と一緒においしいものが食べられて嬉しい。千歳の作ったご飯が食べられるのが嬉しい。
……千歳と一緒に過ごす時間が、あとほんの少しなのが、悲しい。
コメント
1件
ああ、これエモすぎる……! 桃の描写が瑞々しくて、読んでるこっちまで「うまい!」って声出そうになったわ。福島の硬め桃、アールグレイマリネとか桃モッツァレラというアレンジ案も具体的で、千歳の料理愛が伝わってきてじんわりした。最後の「あとほんの少しなのが、悲しい」で一気に胸が締め付けられた。日常の温かさと別れの予感、このバランスが刺さるよ……。