side―康夫―
【SBA放送局広報部】
「よう!沢村!今度の日曜みんなで琵琶湖でジェットスキー乗りに行こうって言ってんだけどお前どうする? 」
「そうそう同期同士でさ!こいつのインスタ今フォロワーすごいからみんなで映り込もうって話してんだ」
康夫のデスクに同期のキャスター二人が声をかけにやってきた、康夫が感心したように言う
「すごいな・・でもどうやってそんなにフォロワー集められるんだ?」
「マメに投稿しかないな!俺インスタのために最近自炊やってるんだ。その動画が凄く人気でさ!」
「へぇ~・・・いいな 」
「お前もやってみろよ」
途端に康夫の頭の中で子供のおもちゃや、その他モロモロでしっちゃかめっちゃかになっている我が家のリビングが思い浮かんだ
あんな汚い家とてもではないがインスタにアップなんかできない
「あ~・・俺はそういうの苦手だからいいよ・・・ 」
お天気ニュースで人気の康夫の同期が言う
「テレビの顔とプライベートの顔のギャップがいいんだよ、親近感がわくらしいんだ 」
「これからはキャスターも自分で自分をプロモーションする時代だぞ、みんなで仲良い所インスタにUPしようぜ、んで?日曜日!来れるか?」
康夫は少し困った顔をした
日曜日は・・・たしか昼から晴美の親父さんの定年祝いに行かないと行けなかったよな・・・
「あ~・・・俺・・・」
するともう一人の同期が言った
「バカだな!いくら俺らと同期だからといって、妻子持ちを日曜日に誘うのはダメだよ! 」
「あっ!そうか!ごめんな」
「いや!いいよ・・・ 」
じっと康夫は独身組の彼らのスーツを見つめる
―コイツらまた新しいスーツ新調したな―
康夫は思った、同じ同期で入社したヤツで、沢山報道ニュースに携わっている者と、裏方の仕事をやらされている者がいる・・・
華々しく表舞台で活躍しているのは、同期でもみんな独身組だ。それは無理もない彼らは時間にも拘束されないし、多少の局側の無理も聞ける気軽に使える人材だ・・・
そして独身貴族の彼らの週末の華やかさも、局の視聴率を上げる材料になる
今の目の前にいるコイツも、先日サッカーのスポーツ中継と言う大仕事を務めた、コイツはテレビ映りがよかった
一方同期で裏方仕事をやらされている者はほとんどが既婚者・・・「窓際族」だ
24歳で晴美にせかされて結婚した、そして今自分は31歳・・・・
今だに自分は看板番組を任されていない、結婚が自分の仕事のキャリアの邪魔になるとは思わなかった
でもまだ自分は出世競争に負けたとは思いたくない、まだあがらいたい
「そうだよな!誘ってゴメン、やっぱ無理だよな! 」
「それじゃ」
去って行こうとする同僚に康夫が駆け寄った
「待てよ!やっぱり行くよ!俺もそろそろインスタやろうかと思ってたんだ!色々教えてくれよ」
コイツらが自分のいない所で何の話をするのか知りたかった
「ええ?」
「いいのかい?奥さんは?」
康夫は笑った
「大丈夫!大丈夫!ウチのヤツそういう所、物分かり良いから!」
同期は感心した
「へぇ~良い奥さんだな!」
「じゃぁ何時に集合する?」
「誰が車出すって?」
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