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コメント
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もうっ、この二人の関係性に胸がぎゅうぎゅう詰めです!!😭💕 専務もひよりさんも、お互いのことをこっそり気にかけて、書いてたんだね…「俺はお前の十二本を書いていて」「私は専務の七箱を書いていました」って、めっちゃエモすぎるでしょ!!三年前からずっと、名前も出さずに支え合ってたんだなあって思うと、もう尊いの域超えてる🥺💖 でも最後の小森さんの言葉で一気に空気が…!氷室さんがまた動いてるみたいで、しかも課長が「台帳持って私物って本当?」って。次が待ちきれないよ…!次の更新、楽しみにしてます!!続き、待ってます!!🌸✨
二階 水瀬 青0.5 月十二本。
私は、上着を着たまま、台所に戻った。専務は椅子に座っていて、私の手の中の紙を見て、何も言わなかった。
「これは」
紙を、机の上に置いた。替え芯の袋も、その横に。
「……ポケットに入っていたか」
「はい」
専務は、紙を見た。自分の字を、少しのあいだ見てから、言った。
「現場の要望を、手で書く。それだけだ」
「要望」
「各階を回ったときに、足りていない物、壊れている物、申請が通らずに困っている物。聞いたことを、その場で書く。あとで、まとめる」
机の上の青いペンの束。会社の机にも、書斎にも。
「それで、青いペンが減るんですか」
「減る。月に八本だと、お前が言った」
「はい」
「書く量が多い。それだけだ」
私は、紙をもう一度見た。二階、水瀬。私の消費量。
「私のペンの本数も、書いていたんですか」
専務は、答えるまでに、少し時間をかけた。
「……書いていた」
「どうして」
「二階で、いちばん使う人間だからだ。月に十二本。お前は、自分の分を台帳に書かない」
本当だった。自分の机のペンの数は、書いていない。棚から取って、使って、なくなったらまた取る。数えていなかった。
「数が合わないのは嫌いだ、と言った人間が、自分の分だけ数えていない」
「……気づいていたんですか」
「気づく。台帳を読めば、二階の合計から、お前の分が抜けている」
私は、椅子に座った。上着は、まだ肩にかかっていた。
専務の手帳のことを考えた。現場の要望を、青いペンで書く。規定で買えない物は、自分で買って棚に置く。そして、私の分だけ抜けている台帳を、半年読んでいた。
言うか、言わないか。
三年、言わなかった。この人が言うなと言ったから、ではない。言うなと言われたのは、一か月前だ。三年前から、私は自分で言わないと決めていた。名前を書かずに済むように、匿名、と付けていた。
でも、この人は、私の分を書いていた。
私は、鞄から台帳を出した。
開いた。二階の欄。品目の横の、小さな字の欄。
「私も、書いていました」
専務が、顔を上げた。
「寄贈(匿名)って。経費で買っていないのに、棚に増えた物を。三年ぶんです」
台帳を、専務のほうに向けた。
コーヒーのフィルター、七箱。カイロ、二箱。ホッチキスの針。加湿器のフィルター。先月の、加湿器一台。全部、同じ字で、同じ欄に。寄贈(匿名)。
専務の手が、止まった。
台帳の上に、伸ばしかけた手が、そのまま。
「……お前が」
「数が合わないのは、嫌いなので」
専務は、台帳の欄を、長く見た。ページをめくった。三年前の十月。同じ欄。同じ字。まためくった。
「三年前から、か」
「はい」
「誰が、と書いていない」
「匿名、なので」
「……俺だと、分かっていて」
「たぶん、と思っていました。確かめませんでした。確かめたら、書かなければならなくなるので」
専務は、台帳を閉じた。閉じて、表紙に手を置いた。緑の表紙。角が擦れている。
長かった。
「俺は、お前の十二本を書いていて」
「私は、専務の七箱を書いていました」
「……そうか」
二度目の、そうか、だった。今まででいちばん低くて、いちばん長かった。
専務は、台帳を私に返した。返すときに、言った。
「言うな、と言ったのは、取り消す」
「はい」
「書いていい。名前は、書かなくていい」
「書きません」
「……俺も、お前の十二本は書き続ける」
#年の差
当麻月菜
1,226
星キラリ

1,535
#略奪
秘翠ミツキ
1,891
美並ナナ
1,572
「どうぞ」
「要望の欄に、お前の分はない。お前は、何も要望しない」
それは、そうだった。三年、私は要望を出したことがない。棚に足りない物があれば、自分で申請書を書く。それだけだ。
「書き続けるなら、専務の分も、書き続けます」
私は台帳を鞄に戻した。上着を脱いで、椅子の背にかけた。専務は、それを見ていた。
「寒くないか」
「もう、大丈夫です」
「そうか」
三度目だった。数えるのをやめた。
月曜の朝、小森さんが給湯室で言った。いつもより、早口だった。
「ひよりさん。氷室さんが、言い回ってます」
「何を」
「ひよりさんが、総務のデータを私物化してるって。会社の記録を自分の物みたいに扱って、人に見せないって」
台帳のことだ。
「秘書室の人から、人事の人に行って、営業のほうにも。常務の耳にも入ってるって」
「そう」
「そう、って。ひよりさん」
「会社の記録は、全部データで出してる。私物は、私物」
小森さんは、納得していない顔で、でも、うなずいた。
その週、第二回の報告会の日程が決まった。十一月二十七日、金曜。佐伯さんから、メールで数字の要求が来た。課長をCCに。文面は丁寧で、中身は、全部の階の最新の消費量だった。私は、データで返した。
木曜の午後、課長が常務室に呼ばれた。
戻ってきたときの顔色が、悪かった。
課長は、私の机の前に来て、立ったまま、言った。
「水瀬さん」
「はい」
「台帳、私物って、本当?」
「……備忘です。前からそう言っています」
「会社の記録を私物にしてるって、常務が。明日、持ってこいって」
課長は、私の机の上の、緑の台帳を見た。