幼い頃、まだ 汚いガキだった俺を助けてくれた人がいた
その人はいつも仮面を被ってて、ジプソ達を撒いていた。 それに美味い飯を食わせてくれた
その味は大人になった今でもよく覚えている
仮面越しの瞳を見ると暖かくて、どこか寂しそうだった
だから、俺が守ってやろうと思ったんだけどな…
「…ほんっとどこいったねん…」
…行方不明
あの事件が起きてからパタリと連絡が途絶えた
俺はあの人にお世話になった人達みんなに聞いていた
答えは…『そんな人とは会ったことがない』もしくは『その人はもうここにはいない』
答えは様々だったが、いちばん多かったのがあの人と会った記憶がないということ
「…一生恨むで」
「カラスバ様、あの人はもう…」
「黙れジプソ」
「俺はあの人に恩返しをしたいんや、ついでにこの恨みもな」
次に多かったのがジプソが言ったことで、 『会ったことはあるけどあの事件で亡くなった』だった
どっちの意見もあの人の存在を否定していた
あの人を守るために…強くなって…言葉遣いも少しはよくしたのに…
「…今までやってきた俺の努力は何の意味が…」
「…カラスバ様、本当は私だって信じたいですよ…ですがあの姿を見たら…誰だってもうあの人は居ないと思いますよ」
「…ジプソ、その話詳しく」
俺はその話に食い付いていた。もちろん、嘘だと思っている
「…あの人はみんなを庇ったんです…身体が傷だらけにもかかわらず」
「…は?」
声がこぼれた後に色んな感情が湧き出ていた
怒り…苦しい…悔しい…言葉にできないのもあった
「…恐らく、その記憶があるのが私達です」
「…じゃあなんで俺は記憶があるんだよ」
「俺らはあの時、建物に隠れていたのに、俺だけはあの人と会った記憶があるん?」
「その話を真だとすると、建物に隠れてたやつらはあの人と会った記憶がないんやろ?」
苦しかった
あの時の状況を思い出すなんてもう二度とないと思ってた。
俺らは無力で、あの人の手がかりも掴めずに生きていたから
誰にも邪魔されない場所でふと、時計を見ると夕方だった
「…みんな元気なのかな」
みんなはあの時の私を覚えているのは数少ないと思っている
だって、今の私は姿も声も違うから
昔は目立ちまくっていたけれども、今は静かに誰かを助けている。
できるだけ、誰にも姿を見られぬように
「でも…正直、カラスバ達には顔を見せに行かないとだし…」
カラスバはもう覚えていないかもしれないけれど、カラスバが幼い頃、約束をしていた
「…おれがでかくなっても、いっしょにいてくれるか?」
幼い声で、そんなことを言っていた
「…ずっと一緒に居てあげる」
私の答えは冷たかった
あの時から一緒に居てあげることなんてできなかったから
私はそのことを知りながらも答えていたから
「…明日向かうよ、カラスバ」
私は5年前から止まっていた時を動かした
あれからジプソ達と話し合って数時間すぎた
突然スマホロトムがピロリンッと音がなり、確認するとあの人からの連絡だった
内容は『…明後日向かうよ、カラスバ』『今まで姿を消しててごめんね』 だった
5年の時が過ぎて、ようやく俺が感じていた気持ちが動いていた
「…っ!」
今まで無かった、涙がぶわっと込み上げていた
嬉しかった。それに、初めてあの人から連絡をくれたから
「カラスバ様!?どうしたんですか!?」
「…ジプソ…あの人から連絡が来たんや…」
「えっ!?それは本当なんですか!?」
「あぁ、本当や…明後日顔出しに来るってさ…」
それに、今まであの人の姿を思い出せなかったのが、今だとバカみたいに思い出せる
あの人は狐の仮面を被っていて、誰にも顔を見せなかった
それでも、唯一見せてくれたのが俺だった
瞳は鮮やかな星空のようで、キラキラしていた。
「ジプソ…俺は嬉しいんや…」
「同感です、カラスバ様」
「いや、ジプソお前が感じている嬉しいと、俺が感じてる嬉しいは違うものなんや」
「お前はあの人が生きていて嬉しいだと思うが、俺は今まで思い出せなかった事が手に取るようにわかるんよ」
その言葉を口にして、少しだけ落ち着いた
「…やっと戦える」
「俺らの気持ち、あいつにぶつけるで」
「えぇ」
コメント
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めっっっっちゃええやん!!!痺れたで。俺の気持ちもぶつけてええか~? 「もっと書いてくれぇ~!!」
文章の書き方が天才すぎて 一生見れる🫶💕