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コメント
1件
切ない😢
画面の向こう側の拓人が、大きく深いため息をついた。
『一つ目は…………女風だった俺の店を……廉に買い取って欲しい。もちろん、あの建物をどうするか、それはお前の好きにして構わない。二つ目は…………』
友人は、言いあぐねているのか、言葉を失わせている。
『二つ目は…………何だ?』
拓人が、その先の言葉を、なかなか言おうとしない。
痺れが切れ掛けた所で、廉は男に詰め寄った。
『……あの女の中には…………廉。お前がいる』
友人の言葉に、廉は絶句してしまったが、あの女、というのは優子の事だと確信した。
『あの女って…………優子の事だよな?』
『ああ、そうだ。二つ目の頼み事は…………あの女を……廉が支えて欲しい』
何を突拍子もない事を言っているのか、と思う廉だったが、ここで一つ、友人に確認しようと考えた。
『その前に、拓人。一つ確かめたい事がある』
『何だ?』
『…………お前……優子の事…………好きなのか? いや…………愛しているのか?』
廉の問い掛けに、拓人がまたも息を呑み込み、無言を貫く。
『…………ああ。俺はあの女が好きだし、愛おしさすら感じている。だが…………俺は、この気持ちを本人に言うつもりはない。墓場まで持っていくつもりだ』
やがて、降参したように、優子への想いを吐露した拓人。
『墓場までって…………お前……』
『俺みたいに、女を商売道具と思ってる奴は…………恋愛をする資格がない。だが、あの女と一緒にいて……楽しかったし…………いつしか……俺は…………あの女に惚れていた……』
拓人の、優子に対する想いを知り、廉は喉の奥が苦しくなってしまう。
『けど、あの女の心には……廉がいる。お前の事をサラリと聞いてみると、どこか切ない表情を……見せるんだ……』
『…………』
『俺では、一生日陰の人生を歩み続けるあの女に、手を差し伸べて、日の当たる道へ引き上げる事はできない。それをできるのは、お前だけだ。俺の中にある想いを…………廉。お前に継いでもらいたい』
友人の真摯な言葉に、彼はスマートフォンを持つ手に、力が込められていった。