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第1話 目覚めた屋敷
冷たい床の感触で、紫苑は目を覚ました。
薄暗い天井。見覚えのないシャンデリア。鼻につく古い木の匂い。
体を起こすと、背中に鈍い痛みが走る。
紫苑
「……ここ、どこだよ」
周囲は広いホールだった。
巨大な暖炉。赤い絨毯。壁には色あせた肖像画が何枚も飾られている。
窓の外は真っ暗だった。
山奥なのか、風が窓を叩く音だけが響いている。
その時。
???
「紫苑!?」
聞き慣れた声に、紫苑は勢いよく振り向いた。
黒髪を少し乱した青年が駆け寄ってくる。
湊
「よかった……お前もいたのか」
紫苑の幼なじみ、**湊(みなと)**だった。
紫苑
「湊……なんでお前まで」
湊
「わかんねぇよ。俺も気づいたらここ」
その時、別の方向から声が上がる。
陽菜
「ちょっと!誰か説明してよ!」
見ると、ホールにはすでに他にも人が集まっていた。
全部で十二人。
みんな年齢はバラバラだが、十代後半〜二十代くらい。
見知らぬ顔ばかりだ。
紫苑は一人ずつ視線を向ける。
湊(紫苑の友達)
陽菜(気が強そうな女子)
蓮(無口な男)
玲奈(落ち着いた女性)
拓真(体格のいい男)
真白(小柄な少女)
圭吾(眼鏡の男)
奏(明るい青年)
美月(無表情な女)
修司(年上っぽい男)
七海(長い黒髪の女)
紫苑(主人公)
全員、困惑していた。
拓真
「監禁ってことか?」
陽菜
「冗談じゃないんだけど!」
圭吾が玄関の方へ走った。
圭吾
「外に出られるはずだ!」
重厚な扉に手をかける。
ガチャ、ガチャ。
開かない。
圭吾
「……嘘だろ」
拓真も加わる。
二人が全力で押すが、びくともしない。
湊
「鍵かかってる?」
玲奈
「鍵穴がない」
全員が凍りついた。
紫苑は扉を見つめる。
本当に、鍵穴がない。
ただ黒い鉄の装飾が施された巨大な扉。
まるで最初から開けることを想定していないみたいだった。
その時だった。
館内にノイズ混じりの音が流れた。
「──ガガッ……」
全員が顔を上げる。
天井のスピーカーから声が響いた。
???
『お目覚めですか』
陽菜
「誰!?」
???
『皆様には、ここでしばらく生活していただきます』
奏
「は?」
???
『屋敷から出る条件は一つ』
一瞬、ノイズ。
そして。
???
『最後の一人になること』
空気が止まった。
真白
「……え?」
美月
「冗談でしょう」
???
『なお、館内には食料・寝室・風呂があります。不自由はありません』
修司
「ふざけるな!」
???
『ルール違反はありません。ただし、外には出られません』
蓮
「……つまり」
蓮が低く呟く。
蓮
「俺たちが死ぬまで閉じ込めるってことか」
誰も言葉を返せなかった。
スピーカーは最後にこう告げた。
???
『では、良い夜を』
ブツッ。
静寂。
風の音だけが戻る。
陽菜
「なにあれ……」
七海
「最悪……」
湊が紫苑の袖を掴む。
湊
「なぁ、これ本気だと思うか?」
紫苑は答えられなかった。
ただ、妙な違和感だけがあった。
十二人。
閉ざされた屋敷。
最後の一人。
でも、もっと引っかかることがある。
紫苑
「……なあ」
全員が紫苑を見る。
紫苑
「俺たち、ここに来る前の記憶あるか?」
沈黙。
数秒後。
玲奈
「……ない」
圭吾
「俺も」
真白
「思い出せない……」
背筋が凍った。
紫苑も、湊も、何も思い出せない。
どうやってここへ来たのか。
なぜ選ばれたのか。
最後に何をしていたのか。
全部、空白だった。
その時。
二階から、
ギィ……
と、ゆっくり扉が開く音がした。
全員が硬直する。
誰も二階にはいないはずだった。
なのに。
暗い廊下の奥。
開きっぱなしになった扉が、ひとつだけ揺れている。
真白
「……誰か、いるの?」
返事はない。
ただ、暗闇だけがそこにあった。
紫苑は息を呑む。
なぜか分からない。
でも、確信した。
この屋敷には、自分たち以外にも何かがいる。
第1話 終
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