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#一次創作
なべたろう🩵🐧推し
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「では、できるだけ掻い摘んでお話しさせて頂きます。実は、私今期から王立クラルス学園に入学する予定なのですが……」
「クラルス学園ですか!!」
ラリーさんが興奮気味に声をあげた。こんなところで同期生に会えるとは想像していなかったのだろう。しかも、コニー嬢の年齢は14歳でラリーさんと同い年。学園への入学を間近に控え、不安を募らせていたラリーさんは一気にコニー嬢への親近感が芽生えたようだ。
「はい。それで先ほど申し上げたように、私の実家は東部の田舎です。そこから王都にあるクラルス学園に通うのは難しいため、寮に入ることにしたのです」
地方領主の全てがタウンハウスを持っているわけではない。クラルス学園は遠方から通うことになる生徒たちのために学生寮が併設されていた。
私はジェムラート家のご好意でお屋敷から馬車で送迎して貰っていたので寮に入ることはなかった。当然ラリーさんもご自宅から通われる予定である。
「寮に入る子は今の時期は準備で大変でしょう? 慣れない土地で生活する不安もあるだろうしね」
「はい。でも、私は楽しみという気持ちの方が強かったので、全く苦ではありませんでした」
「そっかー……コニーさんはポジティブなんだね。誰かさんもちょっと見習った方がいいかもよ」
「誰のことでしょうかねぇ……ルーイ様……」
ルーイ先生ったら、またそんな意地の悪い……
自分について言われたのだと悟ったラリーさんは、眉間に皺を寄せている。
クライヴさんがハラハラした顔でラリーさんと先生を交互に見ているが、心配する必要はない。このふたりは仲が良すぎるゆえ、このような軽口の応酬はいつものこと。ラリーさんは先生に全幅の信頼を寄せているし、先生も彼女をとても大切に思っている。レオン殿下がヤキモチを焼いてしまうくらいには親密な関係なのである。
案の定、それ以上ふたりが言い争うことはなく、引き続きコニー嬢の話に耳を傾けた。
「私が現在王都に滞在しているのはそのような理由からです。準備も滞りなく終わって、後は入学を待つばかりという段階になり、安心しきっていました。そんな時に問題が発生したのです」
コニー嬢は大きく息を吸って吐き出した。今のところ彼女の自己紹介の延長で『とまり木』との関連性は感じられなかったけど、どうやらここからが話の肝のようだ。
「えーと……皆さんは『アルバン・ドーセ』をご存知でしょうか? 『ユニレーム』という名前の商会を運営している人物なのですが……」
「お会いしたことはありませんが、商会のお名前くらいなら……」
コニー嬢の問い掛けに答えたのはラリーさんだった。ユニレームというと……確か、東部の生産品を主に扱っていて、最近は外国からの輸入品にも力を入れているとか。王都でもそれなりに名を聞く商会である。ジェムラート家にも行商で品物を売り込みに来たことがあった。そのため、ラリーさんも認知しているのだ。応対をしたのは旦那様と執事のライナスさんであったので、ラリーさんご本人はドーセ氏と直接的な面識はない。
「アルバン・ドーセは私の母の兄なんです。そのため、ユニレーム商会とうちの家は縁故関係にあります。アルバン・ドーセ……つまり私の叔父ですが、彼には私と同年代の娘がいまして、彼女も今期からクラルス学園に入学するのです」
ドーセ氏の娘の名前は『オレリー』というらしい。品物の購入などでドーセ氏は忙しなく国内外を行き来しているが、家族は王都に居を構え生活しているそうだ。
「それではドーセ氏の娘さんはご自宅から学園に通われるのですね」
「はい。親戚ではありますが、オレリーと私の間にそこまで親密な交流はありませんでした。でも、せっかく同じ学園に通うので挨拶くらいはしておいた方が良いかと思いまして……本日、ドーセの屋敷を訪問したんです」
コニー嬢は再び大きな溜息を吐いた。彼女が言うには、そのオレリー嬢と会った際に『とまり木』を巻き込む問題が発生したのだという。
ジェムラート家もディセンシア家もユニレーム商会と現時点で大きな取り引きなどはしていないはず……せいぜいお薦めされた商品を個人用に2、3点購入したくらいではないだろうか。一体どんなトラブルが起きたというのだろう。
「オレリーとの会話の中でこちらのお店……『とまり木』の話題が出たのです。王都で知る人ぞ知る名店なのだと……オレリーは常連だそうで、私に得意気に語ってくれました。私も兄を経由に噂だけは聞いていたので、王都に来た際には是非一度お邪魔してみたいなと思っていたんです」
「へー……そうなんだ。名店だなんて嬉しいね。確かにうちの店の料理は評価されて然るべきだけどね」
お店を褒められて先生はご機嫌だ。クライヴさんもラリーさんも満更ではなさそうで、照れくさそうな表情を浮かべていた。
「それで……オレリーと『とまり木』の話で盛り上がったまでは良かったのですが、ここで私がうっかり『店に行ってみたいと』口に出してしまったのがいけませんでした。オレリーは私のために『とまり木』を貸切にしてやると言ってきたのです。自分は常連であるし、従業員と親しい仲だから簡単だと……」
「えっ……!?」
いきなり雲行きが怪しくなってきたな。貸切と聞いて私たちは揃って声を上げてしまった。席の予約ならともかく、店舗ごと貸切なんて今まで受け付けたことはない。それは常連のお客様相手であっても同じだ。
「皆さんの反応……やっぱり貸切なんて出来ないのですね」
「出来ない……というか、前例が無いね。そうだよね、クライヴ君?」
「はい。『とまり木』はなんというかその……普通の店とは色々な意味で違いますので……」
もとはセドリックさんが趣味の延長で始めた店だからな。特殊な営業体制を取っているので、お客さんの希望する日時に貸切対応なんて不可能だろう。実際今だって従業員がほぼ全員、本業に駆り出されているため長期休暇中なのだから。
「私は兄からその辺りの事情も少しだけ聞いていました。従業員が軍の関係者であることや、今は店がお休みだということも知っていました。貸切なんて無理だとオレリーを止めたのですが、聞き入れて貰えませんでした。むしろますますムキになってしまい……どんな手を使ってでも貸切にすると譲らなくて……」
コニー嬢は自分の何気ない発言が原因でこのようなことになってしまい、大層慌てたのだそうだ。このままでは迷惑をかけてしまうと、居ても立っても居られなくなり『とまり木』まで来てしまったのだそうだ。
「つまり……自分のせいで親戚の娘が店に押しかけてくるかもしれない。止める事は出来なかったが、せめて事前にこちらに事情を説明して、対策なりを取って欲しかった……ということでいいのかな?」
「その通りでございます」
先生の問い掛けにコニー嬢は心痛な面持ちで首を縦に振った。