テラーノベル
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(深澤視点)
「夏が始まった合図がした〜!!」
夏休みが始まって、俺、佐久間、翔太はプール掃除をしてた。
無駄にでかいプールに、佐久間の歌声が響いてる。
こんなに暑いのに元気だよな。
暑さにうんざりしながらも、俺はモップをとにかく動かし続ける。
「歌詞を繋いで曲を歌いきれ〜!歌詞リレ〜!あの日見渡し渚を〜、今も思い出すんだ〜♪」
なんか始めたよ…
佐久間が歌い始めたけど、翔太、まさか乗らないよな…?
「砂の上に刻んだ言葉〜、君の後ろ姿〜♪」
乗るのかよっ!!!
相変わらず歌はうめぇし、俺も乗んないといけないやつじゃん…
「寄り返す波が〜、足元をよぎり何かを攫う〜♪」
俺も乗っかってやれば、佐久間は楽しそうに笑って続ける。
「夕凪の中〜、日暮だけが通り過ぎて行く〜♪」
次は翔太のパートだけど……
「「「パッと光って咲いた〜、花火を見ていた〜♪」」」
声がハモる。
サビだしな、佐久間も俺も歌いてぇよ。
「俺のパートだろーが!」
「えぇ?サビだし歌いたいじゃ〜ん!」
翔太と佐久間が言い合ってるのを横目に、俺はモップを動かし続ける。
何かをしてないと、落ち着かないんだ。
ひたすら何かをし続けてないと、俺は…
『………っ……!』
あの時の、傷ついた岩本の顔が頭から離れない…
俺……ほんとに何やってんだろう…
何でこんなことしてるんだろう…
誰かを傷つけないと、俺は生きられないの?
誰かを傷つけて、逃げるなんて…そんな最低な生き方で、俺は…
「………」
こんな俺……早く消えればいいのn
「ふっか!!!!」
「うわっ!!佐久間!暑い!!」
何だよ、急に抱きついてくんなって……
佐久間はごめんごめんなんて笑ってる。
ほんと、何がしたいんだか…
「うわっ!!!虫!!!佐久間、虫!!!!」
「翔太、ビビりすぎ!笑」
俺に抱きついてた佐久間は、翔太に呼ばれてあっさり離れてく。
佐久間は、すぐに離れてくれるからいいな。
佐久間と翔太とこんなに長く一緒にいられるのは、2人ともあっさりしてる性格だからなのかな。
友達って何なんだろうな…
これくらいの距離感は、友達なのかな…
親友……確か辞書には親しい友達、心から信頼し合える人、だったかな…
心から信頼なんて、本当にできるの?
信頼って何…?
誰だって、隠し事の1つや2つはあるでしょ?
隠し事があるのは、心から信頼してるって言えるの…?
「あー!!!!!!終わったーーーーーーー!!!!!」
デカすぎるプール掃除。
だいたい2時間くらいかな?
ようやく終わって、翔太が大きな声を出す。
佐久間もうるさいけど、翔太もだよなぁ……
「この後どっかで飯食おうぜ!」
「あー、いいね」
俺もお腹すいたし、どこかでご飯食べたいなって思ってたんだよね。
俺は佐久間の提案に賛成。
翔太は、ゆっくり俺らの振り返って
「悪い、涼太が迎えに来てるから」
結構うざいドヤ顔をかました。
「「うわっ!!」」
急なマウントに、俺と佐久間は声をハモらせる。
そんな俺らに背中を向けて、笑いながら帰ってった……
うっっっっっざ!!!!!
「ご飯、2人で行く?」
しょうがないから佐久間と2人で行こうと思って佐久間の方を向く。
「ん〜……ふっか、その前に1ついい?」
佐久間に笑顔で問いかけられる。
「…?構わないけど?」
何だろう?
プールじゃ暑いからってことで、ちょうど日陰になって涼しい校舎裏に移動。
ここのコケもいっぱい増えたなぁ…
でも、何だろう?
別にご飯食べながらでもいい気がするけど……
「もしかしてなんだけどさ、照と何かあった?」
「………ぇ……」
佐久間の口から出た言葉。
俺はその場で動けなくなる。
佐久間はニコニコしてるけど……何かを察してる。
俺と岩本に何かあったってわかってる……
「ふっか、元気ないよね。何かあった?」
「……別に、何も…」
岩本が、佐久間に話したとは思えないし……
佐久間の勘…?
「照もさ、何か元気ないんだよね。ふっかと話した後でしょ?」
わかってるんでしょ…?
なのに、俺の口から聞こうとしてる。
「照、悲しそうな顔してたんだよね。いまのふっかは、辛そうな顔してる」
「………え…?」
思わず頬をなぞる。
辛そうな、顔……?
それに、岩本は悲しそうな顔してたんだ……
そう、だよね……
俺が傷つけたから…
「照と喧嘩した?」
「……喧嘩、じゃなくて…」
俺が、一方的に傷つけたんだ。
それを、喧嘩っては言わないよね。
「照もふっかもさ、俺の大事な友達だから、2人が元気ないと俺も嫌だよ」
「……っ…」
大事な友達……?
俺が、佐久間の…?
「ごめん……」
こんな俺、佐久間に友達って言われる資格なんてないよ。
「……そんなに、俺のこと信用してない?」
「…え……?」
佐久間が俺に近づいてくる。
俺よりも身長が低いのに、見上げてくる視線が鋭くて、思わず息を呑む。
「ふっかはさ、俺も翔太も、友達だとは思ってないの?」
「…そう、いうことじゃ……」
否定、しきれない。
俺は、佐久間と翔太の友達でいたい。
でも、俺は本当に2人の友達でいていいの…?
俺の胸に、佐久間の拳が置かれる。
「どうして、ふっかはごめんって言って、俺らから距離置こうとすんの?」
すごい、寂しそうな目が俺を見てる。
「俺はさ、ふっかのこと全然知らないんだと思う。お前が隠してることの内容だってわかんない。それでも無理に聞かなかったのは、お前がいつか話してくれるって思ってたからだよ」
「………佐久間…」
そっか…佐久間にもバレてたんだ。
俺が佐久間たちと線を引いてることも、隠し事してることも、全部……
気づいてるのに聞かなかったのは、俺を信頼してたから……?
いつか、俺の口から聞こうって思っててくれたからなの…?
俺、最低だよ………
佐久間は、こんなに俺のこと思ってくれてるのに、俺はその信頼に1つも答えられてない。
「悩んでるんだったらさ、話してよ……1人で、全部抱え込もうとすんなよ…」
俺の胸に、佐久間が頭を埋める。
1人で、抱え込もうとするな、か……
俺は、みんなを巻き込みたくないだけなんだけどな…
阿部ちゃんと距離を置いたのも、岩本を傷つけたのも、佐久間たちと線を引いてるのも……
俺のことで、巻き込みたくないだけなのに…
「ふっか、今苦しいんでしょ?照と、何かあったんでしょ?だったら、教えてよ…」
「…………っ……」
苦しい……苦しいのかな、俺……
岩本の傷ついた顔が、ずっと頭から離れない。
佐久間が、俺に真剣に向き合ってくれてるのが辛い。
みんな、俺に近づこうとしてくれる。
なのに、俺はみんなを遠ざけてるんだ。
「……ごめん、俺、傷つけてばっかだね…」
せめて、岩本の傷だけは治せたらいいのに……
「俺が、岩本のこと傷つけたんだよ…」
どうすればいいんだろう……
どうすれば、よかったのかなぁ……?
「岩本を……俺が、否定した……」
何で、俺は人を傷つけることでしか逃げられないんだろう……
(佐久間視点)
「岩本を……俺が、否定した……」
ようやく口を開いたと思ったら、そういうことかよ……
何となく、照の顔を見てわかってた。
照はいつも通りにしようとしてたけど、すんごい傷ついた顔してたもん…
何でだよ……
何で、照の恋愛対象が男だって知ってるんだよって思った。
最初は、わかんなかった。
誰が照を傷つけたんだろうって、絶対そいつ許さないって思ってた。
照がどんな思いで生きてきたか知ってるからこそ、許せなかった。
だから、照を傷つけたやつを見つけたら絶対ボコるって思ってた。
………でも、その日から照はふっかに話しかけに行かなくなってた。
まだ、その時は確証がなかった。
だって、ふっかがその事実を知ってるわけないから。
それと同時に、噂が流れてることも知った。
どこから流れたのかわからない噂。
“照は男を好きになるから彼女がいない“っていう噂。
情報通のふっかが、この噂を知らないわけないだろ?
幸い、照はそういう情報に疎いから、噂が流れてることも知らない。
それに、所詮噂だから、夏休み明けには消えてるだろうしね。
でも、だからこそ、ふっかじゃないって思いたかった。
だって、ふっかはそんな噂……それこそ、その人の人生を否定するようなやつじゃないじゃん…
でも、もしかしたらって……
ふっかが俺らから一線引いてるみたいに、照とも線を引こうとしたんじゃないかって…
でも、照ってさ、めっちゃしつこいとこあるじゃん?
だから、相当なことしないと離れないよなって…
だから……ふっかは、照のこと……
ふっかもさ、傷ついた顔してるよ。
ほんとは、そんなことしたくなかったんだろ?
なのに、お前は照を突き放そうとした。
否定してでも、逃げたかったの?
「………ふっかは、何から逃げてるんだよ…」
結構、踏み込んだ質問だと思う。
ふっかは、自分自身のことを聞かれるのが嫌いなこと知ってる。
でも、俺ももう嫌だよ…
俺は、ふっかのこと友達だって思ってるのに、ふっかは俺らと線引いてるなんて……
「……わかんない…」
「……じゃあ、何で俺らと距離置こうとするの…….?」
「………わかんない…」
「俺らと、一緒にいたくない…?俺らとは、距離置いてたい…?」
「…っ…違う…っ…!違うよ……!」
これだけは、否定してくれるんだ。
「わかんないよ……っ…もう、わかんない……っ…」
ふっかは、張り詰めてた糸が切れたみたいにその場に座り込んで、両手で顔を隠せて泣き始める。
…… 何だよ、やっぱり苦しいんじゃん。
わかんないよな、そうだよな。
ずっと無理してたのわかるよ。
俺は、ふっかが何を抱えてるのか知らない。
照のことを傷つけたことも、ちゃんと怒ってるよ。
でも、ふっかも苦しかったんだよな。
どうしても、俺らとは距離を置いておきたかった理由もあるんだよな。
声を上げずに泣くふっかを抱きしめる。
俺はお前のことを何も知らない。
無理に聞こうとも思わない。
それでも、せめて隣で支えさせてよ。
俺はふっかと一緒にいるし、悪いことしたらちゃんと怒る。
それが、友達ってやつだろ?
コメント
4件
さく〜🩷いいコだなぁ〜(T_T) ふっか💜人を信じる事を覚えてこ?

ふぁっ…っ!?!?😭💦💦 深澤くんの苦しみが痛いほど伝わってきて、胸がぎゅーってなったよ…!!佐久間が「俺はふっかと一緒にいるし、悪いことしたらちゃんと怒る。それが友達ってやつだろ?」って言ったところ、マジでエモすぎて泣いた…⚠️ 友達の定義ってなんだろうって考えさせられるし、深澤くんが泣き崩れたシーンはもう…一緒に抱きしめてあげたくなったよ…!次が気になりすぎる!!
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
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