テラーノベル
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つまる所、荒唐無稽に見えてどれほど馬鹿げた意見であっても、大きい声で主張する事で一定の成果は得られる、特に実現不可能な極論ほど判り易く、普段現状を鑑みない層に程、響いたりしちゃう物なのである。
知性に長けた竜王の里では、そう言った稚拙な意見は常に却下され続けていた、普通に。
『は? 地球と戦うだって? 昔の人類みたいにかぁ? お前らが? ふーん…… まあ、いいや、それよりお前って今日便所掃除、当番だったよな? 早く済ませて置けよー』
だとか。
『ほう、中々の覚悟じゃないか…… 随分力が有り余っているらしいなぁー、良しっ! じゃあ修練所に来いよっ! 今日はたっぷり可愛がってやろうじゃないかぁ! くはははっ!』
だとか?
『ん? 何だって? ああ、そう言う夢みたいな事は暇な時に言ってくれよ、全く、こちとら忙しいって言うのに…… ええっと、食糧の備蓄がぁ…… うん、今月は何とかなるかな? 後は新参の竜がぁ、えっ! こ、こんなに? ああ、取り敢えず住処と修行場か…… 参ったな…… 来月は竜の神様、竜神様の例大祭だっていうのに…… お、君達もう良いよな? また時間のある時にでも楽しい未来の話でも聞かせておくれよ、ああ、忙しい、忙しい……』
等の尤もな意見を返して、子供染みた理想論、所謂小児病を打ち消し続けて来たのである。
立派な大人の行いだと思う、かくあるべしっ!
ところが、メルルメノクによるとごく最近になって様子が変わって来てしまったらしい、と言うのだ。
二年ほど前、若い竜達の中で中心的な存在が台頭し日を追う毎にその支持を増やし続けているそうだ。
集団の主張の最たるものは件の、地球許すまじっ、らしいのだが、これまでと違い、一向に下火になる事無く影響力は里の中央が無視できないほどに拡大していると言う。
アスタロトがメルルメノクに言う。
『新たなカリスマの台頭って事だな、まあ、有り得ない事ではなかろう? まして危機的な状況であれば奇抜な意見に縋りたくなるのもまた情だろうしな』
『勿論ですが、どうも釈然としないんです…… 対抗していた若い者グループのリーダー達や、若者に殊更厳しかった長老や幹部なんかもいつの間にやら彼の支持者になってしまいまして……』
『ふむ、まあでもな、なあテューポーン』
話を振られたテューポーンはメルルメノクに向かって答える。
『それも無くは無い話でしょう? 新たな力なんてヤツは往々にして理不尽なほどの勢いで広がりますからなぁ、それでその事がどう繋がるんですか? 竜王グラム・ランドの玉砕って話に』
判り易く諭されたメルルメノクはテューポーンに向けて大きく長い首を近づけて捲くし立てる。
『それなんですっ! 竜王様は仰ったんですよ! 『どれ、跳ね返り者とやらを我自らが論破してくれよう、なんなら一つ喰らわしてやるわ! ガハハハァッ!』、いつも通り豪快に言い放って謁見に臨んだのですっ!』
『ええ、それで?』
純白のズメイはここまでで一番苦い表情を浮かべて言う。
『謁見の時、近くに控えていた従者によると…… 彼の者を一瞥した竜王様は一言も発する事無くその場、謁見の間を離れてしまったそうなのです…… そして直後、私達四天王と長老たちを集めて御下命になられました…… 地球と戦い雌雄を決する、と……』
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