13回目の夢が始まる。
そして今回、夢へ誘われたのは…
「私もついに…きちゃったのか…」
今泉花はベッドから起き上がる。
扉を開けると、反対側の扉から同時のタイミングで赤谷蓮が出てきた。
「ついに今泉さんも…」
赤谷蓮は不安そうな今泉花を安心させるため優しく、そっと抱きしめてあげる
「大丈夫だよ今泉さん。絶対に僕が守るから…」
安心したのか肩の力が抜けるのがわかる。
「ありがとう。赤谷…」
今回の夢でどんな困難が待ち受けていようと、赤谷蓮は必ず今泉花も守ると心に誓う。
「赤い扉を探すんでしょ?行こ!」
今泉花は赤谷蓮の手を引っ張り、2人で次の扉を開ける。
「あ、待ってくれ」
赤谷蓮は図書室へ行く。
後ろから今泉花がついてくる
赤谷蓮は今日現実で起きたことを思い出す
「確かこのへんに…」
本棚を退けると、崩れそうな壁を見つける。
壁を蹴り壊すと明るく電気が通っている道を見つけた。
「あれ…電気なんか通ってたかな…まあいいか」
壁の周りにはたくさんの子供の落書きが書いてある。
「……..」
今泉花は黙ったままで、怖いのか赤谷蓮から離れようとしない。
「ちょっと今泉さん動きづらいよ…」
頬を赤くしている今泉さんの顔を見て、赤谷蓮も恥ずかしくなる。
周りの落書きの絵には、子供と怪物が手を繋いでいる。
「なんなんだこれ…不気味だな…」
他にもたくさんの怪物達が描かれている。
腕がぐるぐるになっている怪物や、ドリルのようになっている怪物、巨大な怪物や、煙のように消えそうな怪物、髪が長い怪物など、他にもたくさんの怪物が描かれていた。
そしてその全ての怪物の中心には黒いローブを着た男が描かれている。
「だれだろう…この男…」
ずっと見ていると、具合が悪くなってくる。
「早くでよう…」
長い廊下を出ると、別館の和室の部屋へ出る。
和室は現実とは違い綺麗だった。
部屋から出ようとするが、現実と同じようにやはり鍵がかかっていた。
現実ではここで黒いローブの男に殺されかけた。
思い出すだけで怖くなる。
「この扉…内側に鍵穴がある…」
今泉花は仏壇の方を調べていると、中に鍵置いてあるのを見つける。
「あった!これでそこの扉は開くよ!」
今泉花が鍵を回すと扉が開く。
すると長い廊下が続き、左右にはたくさんの怪物の像が置いてある。
廊下を渡り、奥の扉を開けると別館の玄関ホール2階へ出てきた。
1階へ降り、別館の玄関ホール正面の扉を開ける。
「昨日はこの先に白くて広い部屋があったんだけど…」
話す途中で扉を開けると、その先には白い部屋ではなく、地下への階段が続いていた。
「えっ…」
赤谷蓮は驚く。
「どうしたの?」
今泉花は驚く赤谷蓮と顔を覗く。
赤谷蓮は前回と景色が違うことを伝える。
するといきなり後ろの方から殺気を感じる
振り返ると怪物が襲ってきた。
「グォォォォォォォォォオ」
気づいた瞬間怪物は叫びながら追いかけてくる
赤谷蓮は今泉花の腕を引っ張り、階段を降りる。
「ちょちょちょっと!!」
今泉花は転びそうになるが赤谷蓮がお姫様抱っこで持ち上げる。
階段を降り終えると、横に看板がある
迷いの洞窟と書かれている。
真っ直ぐ走っていると、左右に分かれる道と真っ直ぐに続く道がある。
真っ直ぐの道を選択し、ずっと走っていると、また左右に分かれる道と、真っ直ぐに続く道が出てくる。
「長いな…」
真っ直ぐ走るが、ずっと似たような場所だ。
後ろから怪物が来ていたはずだが、いつの間にかいなくなっていた。
「ねぇ…」
ずっと今泉花を抱っこしたままだったので、降ろしてあげる。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
流石に疲れたのか、赤谷蓮は床に座り込む。
左右に分かれる道も真っ直ぐの道も、奥は暗くどうなっているのか見えない。
「なんなんだ…この道…」
いくら進んでもどの部屋にもでないし、赤い扉も見当たらない。
「こんどは右へ行ってみるか…」
2人は暗い洞窟の中を進み続けるが、全く景色は変わらない。
「どうなってるんだ…」
地下だから酸素が薄いのか息をするのがキツくなってくる。
すると突然正面から怪物が姿を現す。
「うわぁ」
引き返そうとするが、後ろからもまた別の怪物が出てくる。
「グゥゥゥゥゥ」
挟まれてしまい絶対絶命だ。
赤谷蓮は絶対に自分の能力を見せたくないので、今泉花の耳を両手で防ぎ、叫ぶ。
「お前ら、死ねっ!!」
怪物達を睨み叫ぶが、怪物達には全く効かない。
「なっ…」
今泉花が心配そうな顔をして赤谷蓮の顔をみる。
「れん…」
怪物が大きい腕を振りかざす。
今泉花を庇うが、赤谷蓮は壁に打ちのめされる。
「ぐはっ…」
口から血を吐き出す。
もう一体の怪物が赤谷蓮にとどめを刺そうとしてきたが、今泉花が赤谷蓮を庇う。
「花!?」
今泉花の血が赤谷蓮に飛び散る。
「あっ…」
今泉花は倒れる。
目の前で今泉花が倒れ、赤谷蓮は呆然とする。
「お…おれは…」
絶望し目の前が真っ暗になる。
「今泉さん…」
さっき力が使えていたら、助けることができただろう。
きっと憎しみが足りなかったのだ。
「もういちど…やり直すしか…」
いまの憎しみがあればきっと怪物達を殺せる憎しみがある。
「やりなおすんだ…もういちど…」
今泉花を抱きしめ、涙を流す。
赤谷蓮は時間逆行し、最初のベッドの部屋へ戻った。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
ベッドから起き上がり、ドアを開けると、目の前の扉から今泉花が出てきた。
「い、いまいずみさんっ!!」
赤谷蓮は泣きながら今泉花へ抱きつく。
「え、ちょっと…どうしたの??何かあったの?」
今泉花は驚き戸惑っている。
「う…うぅ…よかった…」
赤谷蓮は涙が止まらなかった。
子供の頃はこの力のせいで友達ができなかったが、今は誰かを助けることができる。
人の役に立っている。
赤谷蓮は泣くのをやめ、涙を拭う。
「行こう!今度こそ絶対に俺が守る!」
だがあの迷いの洞窟はどういう理屈なのか、いくら真っ直ぐ行っても、突き当たりはなかった。
どれだけ広いのか、それともループ説が頭をよぎるが、まだわからない。
「どうやったらあの洞窟から脱出できるだろうか」
時が戻っているので、今泉花はもちろんこの先に何が待っているのか知らないので赤谷蓮も今泉花に相談することはできない。
力のことがバレてしまえばまた虐められるからだ。
特に好きな人には1番バレたくない。
「何かヒントになるようなものはないのだろうか…」
赤谷蓮は図書室へ行き、本棚の中からあの地下の洞窟の突破方法がないか探してみる。
今泉花も後ろからついてくる。
だがいくら探しても手掛かりになるような物はなかった。
まあ抜け道を通ろうと思い、本棚を退け、崩れそうな壁を壊す。
「え!なんで…」
今泉花は驚いている。
壁が壊れた先にはまた更に続く道が出てきたからだ。
「あ、前回の夢で見つけたんだよ」
赤谷蓮は誤魔化した。
そして明るく電気が通っている道を通る。
周りにはたくさんの子供の不気味な落書きが描かれている。
今泉花は怖くなったのか、さっきと同様、赤谷蓮から離れようとしない。
「早くでよう…」
今泉花が早く出たがろうとしているが、
赤谷蓮はこの落書きに少し違和感を感じていた。
「ちょっとまってくれ…」
赤谷蓮は立ち止まり、子供の落書きを観察する。
「俺達がこの子供だとすると…」
怪物の数を全て数えると全部で13体。
もしあの洞窟がループする迷路だったらと頭の中で考える。
「俺達がこの黒いローブの謎の男のところへ行くためには、途中にいる怪物13体を避けなくちゃいけないってことか!!」
赤谷蓮はこれしかないと閃きだしテンションが上がる。
よくわかっていない今泉花は急にテンションが高くなった赤谷蓮にびっくりしている。
「つまりこの怪物が壁だとすると…右、左、前、右、左、左、前だ!!」
喜ぶ赤谷蓮を見て、今泉花は驚いている。
「さぁ行こう!今泉さん!」
今泉花の手を引っ張り、赤谷蓮は地下の洞窟へと向かった。
地下の洞窟へ辿り着く。
間違えないように、頭の中で繰り返したながら進む。
「右行って…次が左…」
暗くて怖いのか今泉花は離れようとはしない。
「動きづらいって今泉さん…」
怯えているのか今泉さんは震えが止まらない。
「そして最後が…前だ!!」
暗闇の中を進んでいくと赤い扉が出てきた。
「や、やった!これで脱出できる!!」
一安心したと思い、赤い扉の前で座りこんでいると、赤い扉が急に開きだした。
キィ…
「え、なんだ…」
赤谷蓮は驚き凝視していると、赤い扉の中から、黒いローブの謎の男が姿を現した。
「な、なんで!?」
黒いローブの謎の男は自身の長い刀を抜き、構える。
赤谷蓮は今泉花の目の前で力を使うことを一瞬躊躇ったが今泉花を庇う。
「ごめん…今泉さん」
この力を使って好きな人から嫌われても、この先虐められるようになっても好きな人を守るためならと使うしかないと決断した。
黒いローブの謎の男は一瞬にして間合いに入る。
赤谷蓮は目を見開き、黒いローブの謎の男に一言言う。
「しねっ」
次の瞬間、黒いローブの謎の男は誰かわからないぐらいに体内から大爆発した。
「きゃぁぁぁぁぁぁあ」
今泉花は目の前の光景が信じきれず叫んだ。
力を使いすぎたのか、赤谷蓮は気分が悪くなる。
「だれにも…見せたくなかったんだけどな…これは俺の呪いだ…」
赤谷蓮の力。
それは呪い。
人の言葉には呪いがある。
普段皆んなが使っている暴言にも、呪いは存在する。
赤谷蓮はその呪いの力が強大すぎるのだ。
「今まで…辛かったんだね…」
今泉花は赤谷蓮の力のことは気にせずに、いつも通り接してくれた。
赤谷蓮はその優しさに涙が出てくる。
「辛かった…怖かったんだ…誰にも言えない…この力が…」
好きな人だからなのか赤谷蓮は全てを吐いた。
「大変だったね…お疲れ様…」
泣きじゃくる赤谷蓮の耳元にそっと呟く…
「出よう…夢から…」
そして今泉花と赤谷蓮は夢から脱出した。
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