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#闇バイト
るしゅ
199
74
1,998
土橋真二郎
215
指定された住所は住宅街の中にあった。
駅から歩いて十五分。
静かな場所だった。
高級住宅街というわけでもない。
かといってボロい家ばかりでもない。
普通の街。
本当に普通だった。
俺は封筒の写真と目の前の家を見比べる。
間違いない。
ここだ。
白い二階建て。
庭付き。
車も停まっている。
どこにでもありそうな家。
スマホを確認する。
指示はシンプルだった。
【対象住宅を確認】
【五分間滞在】
【終了後報告】
それだけ。
意味が分からない。
何を確認するんだ。
俺は少し離れた電柱の横に立った。
近所の人から見たら不審者だ。
完全に。
でも帰るわけにもいかない。
三十万円。
その数字が足を止めていた。
時間が過ぎる。
一分。
二分。
三分。
何も起きない。
家の中から笑い声が聞こえた。
子供だろうか。
楽しそうな声だった。
しばらくして玄関が開く。
男の子が出てきた。
小学生くらい。
手にはサッカーボール。
後ろから母親らしき女性が顔を出す。
「気をつけてねー!」
「はーい!」
男の子は走っていった。
その光景を見て。
なぜか胸がざわついた。
なんなんだ。
本当に。
俺は何を見せられてるんだ。
四分。
五分。
スマホが震える。
【報告してください】
俺は画面を見る。
報告欄が表示されていた。
入力項目。
・対象確認
・家族構成
・車両有無
・防犯設備
俺は固まった。
意味が分からなかった。
いや。
意味は分かる。
分かってしまった。
だから嫌だった。
「なんだよ……これ」
喉が渇く。
家族構成?
防犯設備?
そんなもの。
普通の荷物運びに必要ない。
俺は家を見る。
さっきまで普通の家だった。
だけど今は違う。
何かがおかしい。
嫌な予感がする。
頭の中で警報が鳴っている。
帰れ。
帰れ。
帰れ。
でも。
指は動かなかった。
三十万円。
その数字が頭から離れない。
俺はスマホに入力した。
【対象確認】
その一文だけ。
家族構成は空欄。
防犯設備も空欄。
送信。
数秒後。
返信が来た。
【情報不足】
【再確認してください】
俺は思わず舌打ちした。
「ふざけんな……」
その時だった。
突然。
誰かに肩を叩かれた。
ビクッと身体が跳ねる。
振り返る。
そこに立っていたのは
海斗だった。
「お前……」
思わず声が漏れる。
連絡先交換は禁止だったはずだ。
なのに。
海斗は青ざめた顔で俺を見ていた。
そして小さな声で言った。
「悠真」
「これ、ヤバいかもしれない」
(第八話へ続く)
コメント
1件
うわ、第7話、めっちゃ怖かったです……! 最初はただの不審者バイトかと思ったら、依頼内容が「五分間滞在」って不気味すぎます。笑い声やサッカーボールの少年で一瞬和んだのに、報告項目の「家族構成」「防犯設備」で一気に空気が変わって、背筋が冷えました。海斗が突然現れたのも衝撃で、続きが気になりすぎます! るしゅさんの空気の作り方、本当に上手ですね。