テラーノベル
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「いいかクソガキ?アンタは召喚士と魔物使いの二つの顔を持っていて、それでいて速さに極振りしてる近中距離のアタッカーなんだ。近接が苦手な私のために肉壁になることを誓え。」
「よくその言葉を並べて私が頷くと思ったなぁ?いくら馬鹿とか言われてる私でもそれに対して首を縦に振ると思うなよ?」
「お前は馬鹿だからその力を最大限活かせるか不安なんだよ私は!だから私が補助輪付けてやってるの!あの槍斧使いの腕前からして確かな実力者なのは分かるだろ?」
「大盾使いのおっさんもやられてたもんね」
「とはいえこっちは数的有利をとってるし、なんなら作ることも出来るわけだ。」
「私のスキルで翻弄しろって言うこと?」
「そういうことだ。ぶっちゃけソイツらでカールマがやられるとは思ってないが、モンスターをぶつける事で相手のスタミナを削ることは出来る。お前のスキルとカールマは相性がいいんだよ。欠点は火力不足ということだが…。」
「クソ魔法使いならそれを補えると?」
「魔法使いという職種は一撃のロマンが詰まってる職だからな。という訳でお前は私を守りながら戦えな?」
「そんなに私スペック高くないぞ!?ルーマちゃんと一緒にやれてたらもっと簡単にアイツ倒せるんだけどなぁ…。」
「じゃあ諦めて私らここで死ぬか。」
「それも嫌だ!」
「じゃあ死ぬ気で戦いながら私を守りな!」
「子供に対しての負荷のかけ方が鬼だぞ!」
「大丈夫大丈夫!社会出ればこういう理不尽日常茶飯事だからさ!」
「明るい未来ある若者に対して現実の暗い側面を見せてくんな!」
「仲間割れしてるところ申し訳ないが私も少し本気で行くよ!」
地を蹴りまずは司令塔であるミーシャに狙いを定めて刺突を繰り出す。
「クソガキ私を守れ!」
「腹立つけど仕方ないなぁ!?【スライムの笛】それと召喚【白兎】」
ベルノのスキルによって大量の白兎が現れ視界を奪いつつ威力減衰を図る。更にスライムの笛によって水の壁を作り出しミーシャへの攻撃を見事守ることに成功する。
「ちっ…やはりそう簡単には攻撃を通して貰えないか!」
「気に入らないけどクソ魔法使いがやられたら私倒す術がないからさ!」
「よーくわかってんなぁ?お利口さんだぞぉベルノちゃぁん?」
「ルーマちゃんと合流したら絶対倒す!」
「そのためにもまずはここを切り抜ける事に全力をかけるといいぞクソガキぃ?」
「分かってるよそんなこと!」
(ベルノという子のメインの職業は召喚士か魔物使いのどちらか…。私の予想では魔物使いだとは思ってる。
召喚士も魔法使いと同じく杖を持ってるとランクの高いモンスターを召喚する際の詠唱時間やコストを削減できるというメリットがあるからだ。対して魔物使いはモンスターと戦いその中で絆を芽生えさせるというコンセプトの職種なため剣士や戦士のように体を張った戦闘をしないといけない。
そこでベルノの装備を見ると打撃攻撃も可能としてるガントレットを装備してる。更にさっきのミーシャとやらの『近中距離のアタッカー』発言。召喚士には近接を得意とする攻撃法がおそらく無いはずだ。となると召喚士ではなく魔物使いの線が濃厚だ。
しかし、そうなると私はかなり苦しい戦況となる。【守護者】は幾つかの型が存在しておりその中で私は攻撃寄りのビルドにしてる。守護者の基本の形は盾に槍斧という名の通り守り寄りの形だが私は盾を外し両手持ちの槍斧で機動性を確保したもの。しかしやはり元の攻撃力が低く範囲攻撃を持っていたとしても殲滅力はそこまで高くない。
そういう点で私と魔物使いや召喚士は相性が良くないのだ。数で囲んで倒す戦い方とヒットアンドアウェイを繰り返して比較的堅実的に立ち回る私では正直分が悪い。そんなヤツを盾にして後ろから魔法による高火力をぶつけてくるこの構成は私対策過ぎるな…。だが、魔物使いならMPもそれほど多くないためスキルを多用させれば勝機はある。大盾使いの奴にやった風の壁で時間を稼ぐか。)
「後ろの魔法使いに攻撃ができないとなるとお前をやるしかないが覚悟は出来てるか?」
「ふっ…ぐもんだな。全くできてないね!」
「堂々としてればかっこよくなるとでも思ったかアホガキが…。」
「私の個性のひとつに根拠なき自信とデカイ声がある。これらを組み合わせることであたかも『何かしら秘策があるのか?』と誤認させることが私には出来るのだよ!!」
「全部解説したらダメじゃないか?それ全部解説しちゃうところが馬鹿って言われるんだよベルノちゃん?敵である私もビックリしちゃった。曇りなき真っ直ぐな瞳でそんな力説されたらねぇ?」
「とにかく私には現状覚悟がないから出来れば逃がして欲しい!」
「私のポイントになってもらうんだからそれは出来ない。けどまぁそうね…。なら私からのせめてもの情けで一撃で沈めてあげる。」
「いーや!ここはお互いのために争わないことがいいと思うんだ私は!」
「問答無用よ。大盾使いをも倒した私の技であんたら二人を返り討ちにしてくれる!【荒れ狂う風の舞】」
遠くから見ていた時と同じような彼女を中心とした円形の風の壁が作り出される。
「さぁ!勝負よ!!」
「………。あれ?これって。」
「くっ、またその技かよ!ベルノちょっとこっちに来い!あれを突破する策を思いついた!」
「えっ?いやでも……。」
「いいから来い!!」
「う、うん。」
少し警戒しながらミーシャの元に行き小声で会話をする。
(クソ魔法使い?あれってさ風の壁が厚すぎて私達もあの人見えないけどあの人も私らの事見えないよね?)
(あぁそうだ。だからこのうちに逃げるぞ。 )
(逃げれるの?)
(私にいい案がある。お前の召喚士と魔物使いのスキルを使ってあの壁を突破する風を装うんだ。術師が近くにいなくても彼らは命令さえしてくれればずっと戦うだろ?)
(まぁ、そうだけど。それでもバレそうじゃない?私だけの攻撃じゃあアイツ意外と勘良さそうだし…。)
(その点も問題ない。私が大技を打つフリをする。その間にお前はさっき私らが乗ってた銀狼の準備をしておいてくれ。私は【トラップアップ】という技で時間差の攻撃が出来るんだが、それを使って攻撃を仕掛ける。トラップアップが発動する数秒前には私らは銀狼に乗って逃げる準備をして私の偽物の大技の掛け声の後にマップの中心目掛けて走り出すんだ。いいな?)
(分かった!)
(極力悟られないようにあたかも突破を試みてる風の演技を忘れるなよ?)
(もちろん!逃げるという目的は一致してるからね!)
(それじゃあ作戦決行だ!)
「よぉし!作戦は決まったな!?いくぞベルノ!」
「クソ魔法使いの言いなりは嫌だけどそれしかないならやるしかないもんね!【アタックボアの笛】数を用意して壁の耐久性を落とすよ!」
「緩んだところに私の特大魔法でこじ開けてジエンドだカールマ!」
(さっきの大盾使いとの戦闘を見て学んだか?だが、突破してくるとしても方向は今私が見ている正面からだろう!これを抜けるためには1点に対して圧をかけないといけないからな。現にあの大盾使いも下手な小細工なしに一点突破してきたのだから…。つまり来ると分かっている方向に対して警戒さえしていれば恐れることは何もない!)
「アタックボア達突撃だァァ!」
「私の特大魔法でぶっ飛ばしてやるから安心してやられていいぞぉ!」
「やっぱり人の心捨ててる!魔法使いってみんなクソ野郎なんだ!!」
「うるせぇお前も巻き込んで吹き飛ばすぞ!?」
「はいすいません!それだけは勘弁してください!」
(この位の数で足ります?一応50体くらい呼び出したんですけど……。)
(十分だ。MP量は問題ないか?)
(まだ半分はあるからもしもの時にも対応できるよ!)
(なら銀狼呼び出して逃げてる時にマナポーション飲んで回復しておくんだな。)
(もちろんそうする!)
(そんじゃああとは私に任せろ。)
「こんだけの数がいればこの壁を壊せるだろうよ!」
「少しでも壁に歪みが出来ればそこ目掛けて私の特大魔法でこじ開けてそのままカールマも一緒に吹き飛ばしてやるよ!」
(何かが私の風の壁にぶつかってくる?さっきの笛の音はベルノか!となると今ぶつかってきてるのはそれで呼び出したモンスター!不味いな…。呼び出されたモンスター次第では緩んでしまうかもしれん…。しかし、今解いたら呼び出した奴らとミーシャの魔法の餌食になる…。ここはこの壁を信じて耐えるしかない!)
「そろそろ壁の耐久がなくなってくる頃か?」
「私MPほぼ無くなったからこれで決めてね」
「おいコラクソガキ!これで倒せなかった時罪じゃねぇか!?」
「あんたが思ってるほど私のスキルの消費MP小さくないの!だから頼むわ!」
「もしやれなかったらマジで肉壁頼むからな!?」
(こっちは準備できたよ!)
(なら私もそっちに行こう!)
「こいつを喰らいなぁ!?初級魔法も極めればここまで出来る!【アイスランス・ヴィグラン】」
大声で技名を発したあと直ぐに銀狼の背に乗りその場を後にする。ふたりが去った数秒後【トラップアップ】が発動し、ただちょっとだけ大きくなったアイスランスが風の障壁にぶつかり弾ける。
「どうやら私の壁を壊すことは出来なかったようね!それじゃあこれで終わりにしましょう!!」
高らかに勝利宣言を発しながら風の壁を解除するとそこに二人の姿はなく代わりに【トラップアップ】によって現れた土の壁、その壁に一言『お先に失礼します』とだけ書かれていた。
それを見たカールマは怒りで震え、そして最大威力の技を拳に乗せて土の壁を壊して咆哮をあげる。
「許さん……許さんぞォォォォォォォォ!!ベェェルノォォォォ!ミーシャァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ!!」
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