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天気は快晴! 空は雲ひとつなくて、まるで今日の体育祭のために神様(※この世界では悪だけど)が用意したみたいにキラキラしてる。
朝、開会を知らせる【炎魔法】の花火が空にドーン!って上がった時は、うっかり「おぉっ」って声出ちゃった。なんだろ、懐かしい気持ちになったなぁ。日本での運動会も、朝の号砲とかあったよね?
この町唯一のこの学園の体育祭だから、生徒の親だけじゃなく、冒険者ギルドの関係者らしき人や、他国から来たって噂の貴族様とか、色んな人が見に来てるらしい。
なかには、「あの人の目に止まったら、将来の冒険者依頼が優遇される」なんて、まことしやかな都市伝説も流れてて……いや、ちょっと本気で信じてる子もいたな。みんなの気合の入り方、すごいもん。
それから、この世界ならではって感じなのが、市場の人たちがこぞって来て、校庭の端っこに屋台をずらーっと並べてるところ! 焼き串に、甘いお菓子、スープの匂いまで漂ってきて、もうお祭りじゃんこれ……!
白い体操服に赤いライン――胸元はピッタリ張りつく生地で、汗ばんだ肌が透けて見えそうだった。
俺とルカはおそろいで髪をポニーテールにまとめているけど……何より問題なのは。
「なんでこの時代でブルマなんだ……」
何時代だよ!
露出度高すぎだろ!?
太ももなんて全開だし、角度によっては――うっかり“見える”んじゃないかってレベル。
魔法でポロリ防止されてるらしいけど、安心感より不安のほうが勝つ。
特に下……布の際ギリギリで、アソコの毛が、マジで数ミリの差で守られてる感じ。
いやマジで、昨夜思い立って剃ろうとしてやめた自分を褒めたい。
やってたら、今、完全にアウトだった。
「何してるのじゃ?」
「って、まだ始まってもないのに何でそんなに屋台の食べもの持ってるの!? まだ朝だよ!?」
ルカは手から落ちそうなほど両手いっぱいに食べ物を抱えて、口をモゴモゴしながら近づいてきた。
「うむ、何か知らぬがサービスしてくれたのじゃ。アオイも食うのじゃ? この《クバブ》などうまいのじゃ」
「え、ケバブじゃなくてクバブなの? なんか一文字違うだけで急に異世界感すごいね……」
見れば焼き串、フライ、揚げ団子、謎のキラキラゼリー……明らかに戦う前の補給量じゃない。
「ルカ、それ……体育祭じゃなくて“胃袋の祭典”になってない?」
「ふむ、競技が始まる前にエネルギーを蓄えるのは当然なのじゃ! ほら、アオイも食え、遠慮するなのじゃ!」
「じゃあちょっとだけ……あ、うまっ!? このクバブ……クバブ……めっちゃジューシー!」
「のじゃろ!? やはり屋台の味は次元が違うのじゃ!」
そう言いながら、もにゅもにゅと口を動かしながら、幸せそうに食べるルカ。
「それより、そろそろ僕たち生徒はグラウンドに集合してってよー。開会式、始まっちゃうし。《アドベンチャー科》の先輩たちも、イベントには帰ってきてるみたい」
このへんは《アドベンチャー科》に入って初めて知ったことだけど――
この学校、二年生からは“ほぼ野外サバイバル”になる。
場所は、ミクラル王国が管理してる訓練用の島。
実戦形式の授業で“生き残る力”を学ぶ、まさに職業訓練校スタイル。
知識より体力!
筆記より魔物討伐!
そのため、先輩たちが学校に帰ってくるのはこういう大イベントの日か、あとは《クラス代表会議》のときくらい。
「うむ、行くのじゃ」
ルカは手に残った屋台フードたちを、転送魔皮紙へとぽいぽい投げ入れていく。
これ、普通なら「えっ、食べ物そんな適当に入れて大丈夫!?」って思うよね?
でも大丈夫、この魔皮紙は超便利な冷蔵魔法付き。
家の冷蔵庫に、自動で、しかもキレイな状態で届く仕様。
便利だよねぇ……
「えーっと、ここだね。一年は」
グラウンドに出ると、すでに何人かの生徒が整列していた。
朝の空気はまだ涼しくて、土と草の匂いがなんだか懐かしい。
……それはいいんだけど。
なんで女子だけブルマなんだろうね?
男子は普通のハーフパンツ。
こっちはというと、太もも全開の魔法のブルマ。
「んぅ……」
ちょっとだけ内股になると、布がずれてお尻のラインが強調される感じがして――え、これ、後ろから見られてるよね?
「……やば、気にしない気にしない、気づいてないふり……」
べつに怒ってるわけじゃないけど、もうちょっとバランス取ってくれてもいいと思う。
「はぁ……これ、絶対あとでルカと買い食いして忘れよう」
視線が集まるのも仕方ないのかなって、ちょっと思っちゃった自分が悔しい。
数分後、《アリスト科》の生徒会長が前に出てきた。
ちなみにアリスト科の人は競技をしないので制服姿だ。
「来賓の皆様、本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございます。私はこの《モルノスクール》の生徒会長です。生徒一人一人が最高のパフォーマンスを披露しますので、ご声援よろしくお願いします。みなは今日、楽しむところは全力で楽しみ、競うところは全力で競い、応援するところは全力で応援して――」
そこで一度、会長は息を吸う。
「魔力が尽きるまで!血反吐はいても全力を出しきる様に……みんなでよい体育祭を作り上げていきましょう!」
……んん?
血反吐……???
その場の熱に押されて一瞬ついていきそうになったけど、今なんかとんでもないワード聞こえなかった!?
いや、ネタだよね……!? さすがにネタであってほしい。
そして、生徒会長は手を掲げて宣言する。
「《モルノスクール》体育祭を――開催する!」
「「「「おおおおおお!!」」」」
会場が一気に湧く!
前のほうの男子がうぉー!って叫んでて、魔力で火花が出てるし!いや、それ火傷になるからやめて!
それにしてもこの学校のノリ……嫌いじゃないけど、なんだろう、時々命の軽さがギャグにならないくらい重い気がするのは俺だけ?
そして、魔力と青春がぶつかり合う《体育祭》が開催された。
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【一般衣類】
冒険者以外の人々が日常的に着用する衣類には、戦闘向けの【攻撃魔法陣】は基本的に組み込まれていない。
代わりに、快適な生活を支えるための【補助魔法陣】が多く施されている。以下は主に使用されている魔法の例である:
● 温度調節魔法
着ている人の体温や外気に応じて自動で衣服の温度を調整する。全ての衣類に最低限組み込まれている基本魔法。
● 紫外線遮断魔法
肌の露出が多い衣服に使用される。日焼けやシミを防ぐため、美容を気にする者に人気。
● 速乾魔法
雨や汗などで濡れてもすぐに乾かす。特に下着や運動着には必須とされる。
● 消臭魔法
汗や食べ物、煙などの生活臭を消す魔法。衣類自体から発生する臭いも抑える。
● 蘇生補助魔法(高級品)
着用者が致命傷を負った際、心肺停止を一時的に遅らせる処置が施される。救助が間に合えば命を取り留める可能性が高くなる。ただし魔力消費が大きいため、使用は一回限り。
● しわ・ほつれ修復魔法
日常の軽度な衣類ダメージを自動修復。学生服や制服、フォーマル衣装に多く用いられる。
● 静電気防止魔法
冬季や乾燥地域では特に人気。魔法具との接触時の誤作動を防ぐ効果もある。
● 騒音遮断魔法(パーソナル)
着用者の周囲一定範囲の雑音を軽減。集中したいときや読書時に好まれる。
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なお、組み込まれる魔法陣が多ければ多いほど衣類の価格は高騰する。また、布面積が狭い衣類(例:水着や露出の高い服)に多機能魔法を詰め込むのは高い技術を要するため、高額になりやすい。
そのため、見た目がシンプルでも価格が高騰する衣類も存在し、一般層にはなかなか手が出せないことも多い。