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「兄上、このゴブリンは『グリューンゴブリン』だ。手に持つ“モーニングスター”の威力は強烈だ。回避せぬと死ぬぞ」
忠告の間にもその凶器が向かってきた。っておい、モーニングスターって、そんな武器を使ってくるのかよ。
俺は、ゲイルチュールで応戦。
見事にモーニングスターを受け止め、弾いた。あっぶねぇ、顔面にメリ込むところだったぞ。危うく俺の顔が潰れてしまうところだった。
「ていうか、なんで温泉にモンスターが沸いているんだよ」
「そやつは仕切りを飛び越えてきたのだ。身軽でずる賢いヤツなんだよ」
そういう事か。となると、レベルも高いと見た。迂闊に手を出せば、反撃を食らうだろうな。
敵の出方を伺っていると、グリューンゴブリンはいきなり暴走。仕切りを破壊しまくった。って、あああああああ……!! せっかく作った仕切りがあああああああああああああ……!!!
「お、おのれ緑の悪魔ァ!!」
「あらら……。兄上よ、やっぱり温泉は混浴でいいのでは」
「う、うるさいっ」
もう許さん、これ以上は家に危険が及ぶ。その前に倒す。ゲイルチュールを強く握り、俺は攻撃を仕掛けようとしたのだが――
「ラスティさぁ~ん、また温泉に入りにきましたぁー!」
「ス、スコル! 来ちゃダメだ!! 今はモンスターが……」
遅かった。
グリューンゴブリンは、ニヤリと笑い……スコルの方へ駆け出していく。そして、襲い掛かった。やべぇ、服をビリビリ破ろうとしている……ふざけんなッ!!
させるかってーの!!
石とか投げている暇もない。
なら、これしかないだろ。
「ゲイルチュールをブン投げるッ!!」
おらぁッ――と、俺は“つるはし”を投擲。クルクルと高速回転し、一瞬でグリューンゴブリンの背中に突き刺さった。
『ボギャアアアアアアアアア…………』
汚らしい断末魔を上げ、グリューンゴブリンは塵と化した。ついでにアイテムをドロップした。『鈍器(未鑑定)』だった。どう考えても、さっきのモーニングスターじゃねぇか!
「ふぅ、ギリギリ服は破られなかったな。大丈夫か、スコル」
「……ラスティさん。うあぁぁん、怖かったですぅ……」
抱き着いて泣き喚くスコルを、俺は受け止めた。こんなに子供のように泣かれるとは、よっぽど怖かったらしい。
そうかぁ、モンスターの奇襲もあるっちゃあるんだな。今回の事態を重く受け止めた俺は、家の周辺を固めるべきだと考えた。
調理器具なんて作っている場合じゃないかもな。だが、生活も防衛も両立だ。今はそうしていこう。
「可哀想にスコル」
ハヴァマールがスコルの頭を撫でる。そや、こいつも襲われそうになっていたんだよな。けど、随分と冷静というか余裕がある顔だ。
「ハヴァマール、悪いけどスコルを頼む。俺は徹夜で『トゲトゲバリケード』を設置してくるよ。そうしないと安心して眠れないだろ」
「分かった。後で余も手伝いに行く。それに、スコルは兄上が運べい。余が警戒しておくから」
「? なんで俺が」
「はぁ……、兄上は乙女心が分からんヤツだな」
何の事だか分からんが、まあいいか。スコルは大切な仲間だ。部屋まで送ろう。