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The 熱戦 in 購買部―――。
「焼きそばパン、残りわずかだぞ!」
「よこせ!俺が狙ってたんだ!」
「俺の方が先並んでただろーがっ!」
「てめっ横取りすんなっ!」
大人気メニュー、『ウィンナーたっぷり焼きそばパン』を我が物にしようと、男子たちは今日も野獣さながらだ。
「しゃー!ラスト一個ゲット!
ついにラグビー部の男の子が最後の一個をつかみ取った―――
「…っ、ぁあああ!!」
かと思いきや、後ろから伸びてきた手がパンを弾いた。
高く高く飛び上がったパンをもぎ取ったのは、
「っしゃー!ナイスリバウンドっ!」
バスケ部の男の子だ。
「ってめぇー!バスケ部!いつもいつも卑怯やりやがって!!」
「卑怯じゃねぇよープレイスキルだよーん、っでぇ!!」
ラグビー部くん、タックル。
「よこせぇええ!」
「させるかぁ!」
バスケ部くんも全力死守。
「ああ…ほんと…」
私の隣で、親友の明姫奈がかわいい顔に似合わない冷淡な独り言をつぶやいた。
「毎日毎日バカやって、あきないよねぇ…」
つられて私も苦笑する。
そうこうしているうちに、縦にも横にも圧迫感があるラグビー部くんに襲いかかられ、バスケ部くん絶体絶命のピンチ。
「くそぉお…! なんとしてでも焼きそばパンを俺のものにぃ…っ!」
苦渋の声を漏らした、その時だった。
「おい、こっちにパス」
涼しげな声が、人ごみの中から聞こえてきた。
「そ、蒼(そう)っ!?」
「ほらこっち、ノーマークだぞ」
「…くぅー、いいところにぃい!!」
「たのむ!」とたかーく放り上げられ、パンは、
パシっ!
と長い腕につかみ取られた。
そして、人混みを横切ってスタスタとレジのおばさんへ持って行かれ、
「はーい、百二十円ねー。いっつもご苦労さん」
すんなりゲット。
「きゃぁ…!蒼くんナイスフォロー…!」
「あっという間だったねぇ!超カッコいい…!」
その鮮やかさに、人混み中の女の子たちからも思わず黄色い悲鳴が…
って、ちょっと待て待て、たかが焼きそばパンでしょ…。
「蒼ぉおう!! 俺の恩人!神様ぁああ!! ほんっと、いい所にポジショニングしてくれたなっ!!」
唖然とするラグビー部くんを突き飛ばすと、バスケ部くん―――窪田岳緒(くぼたたけお)くんは救世主の元へ駆け寄っていった。
救世主―――もとい、相模蒼(さがみそう)は、溜息まじりに岳緒くんにパンをわたす。
「…おまえは…パンくらいで毎日毎日大袈裟なんだよ」
「この恩は一生忘れないから、蒼! 今日の昼飯おごる…って、焼きそばパンはダメだけど…っ!」
「べつにいいって」
「遠慮するなってーぇ! ほーんと蒼はクールなんだからなぁー! 憎らしいくらいだぜぇ、って、あ」
あ。
「蓮さーん!こんちわー!」
…岳緒くんと、目合っちゃった…。