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(何今の爆発!?)
信じられないものを目の当たりにした気がした。
「アウローラいまのって!?」
「ステラ様、足下注意ですよ。攻撃している最中、私、防御魔法使えないので」
「え、え、あっ」
足下からズッと突き出た氷は私達を襲う。アウローラは、防御魔法は出来無いものの、素早くそれを避け、核にむかって爆弾を投げ続けていた。
(魔力が尽きたら、終わりじゃん……)
アウローラの魔力がどれほどのものか分からないけれど、粉砕しても、この氷の柱は無限に湧いて出てくる。だからこそ、魔力が持つか持たないかの勝負だ。
私は、無防備なアウローラを狙う氷を防御魔法で防ぎながら、少しずつ前に行くアウローラについて行く。私も、考えずに突っ込んでしまうタイプだから、気持ちが分からなくもなかった。そして、そういうときに限って怪我をしてしまうと。
「ほんと、うじみたいに湧いてきますね!壊しても、壊しても、切りがないじゃないですか!」
「だから、方法を考えなきゃ……でも、アウローラの攻撃は効いてる」
「じゃあ、ステラ様どうすればいいと思います?」
「考えなしに突っ込んだの!?」
私が叫ぶと、アウローラは、あははは! と笑い出した。笑い事じゃない。なんてことだ。彼女を信じてついてきたのに、これじゃあ……
けれど、ここまで来たら、もう前に進むしかなかったあ。多少攻撃が当たっても、治癒魔法が使えるから……自分には使えないけれど、屋敷に戻ればどうにかなると思った。多分。
(氷、堅くは無いけど、本当に幾らでも湧いてくる……)
人工魔物の内部は、魔力に満ちあふれている。フィーバス卿のように、無限の魔力。だからこそ、尽きることはないのだろう。けれど、魔法を発動するのに、ラグは生じる。それを狙って攻撃すれば……いや、そんな簡単な話じゃないのだ。
「アウローラ、魔力は大丈夫そう?」
「いーや、このまま行ったら、死んじゃいますね」
「え、え、どんだけつかったの!?」
「ステラ様、私を、核の側までとばしてくれることとか出来ます?」
「で、出来ないわけじゃ無いけど、そんなことしたら、アウローラが狙われるんじゃ」
「大丈夫ですって!ステラ様が、防御魔法掛けてくれて、隙を作ってくれれば!」
「な、何で私……」
「火力は、私の方が出るので。じゃあ、手筈通りにお願いします」
と、勝手に話を進めて、アウローラはスタッと地面に足をついた。何が何だか分からない。全く気もあわない相手と初見で合わせないといけないなんて、そんなの私には不可能だ。でも、アウローラのいっていることは筋が通っている。彼女の作戦にのるしか方法はないようだ。私が、幾ら魔力無限だったとしても、氷を壊せるほどの魔力をぶっぱなてば、必ずアウローラにも影響が出てしまう。大きな槍を作ることは出来るが、同時に幾つもの魔法を使えるほど、想像力が追いつかない。それに、魔力が無限といっても、私だって、次の魔法を放つためのタイムラグがある……
(そう思えば、アウローラの攻撃なら、火力もあるし、その場で爆発している気がするのよね……)
よくよく観察すれば、アウローラは、爆弾のような魔法を使っているが、彼女が爆発に巻き込まれることも、途中で不発することもない。それは、ただの爆弾ではなく、魔法だからであって、アウローラが制御しているからだろう。細かいところまで、魔法への意識が行き届いているのが凄い。センスか、それとも、彼女の努力による結晶か。
やっぱり、そう思うと私の魔法ってまだまだだなと思ってしまう。何処かで意識がかけて、中途半端な魔法に。それに、彼女たちは、私にはない覚悟を持っている。私だって、あの身体を取り戻すために、ここに戻ってきたはずなのに。生温い、優しさに甘えすぎていたと、そう痛感させられる。このままじゃダメだ。強くなりたいのに。誰かに助けを求めてしまう。
一人で戦っていける力が、これからどうすれば。
人を傷付けられる、魔法はそんな暴力性を持っていると自覚しながら、優しくも、暴力的に魔法を使えなければ、魔道士には向いていないのかも知れない。愛とかきれい事で、世界が救えるのは、ゲームだったから。実際は、そんなことない。
「ステラ様、いちにのさん、でお願いします」
「え、え、いちにの……さ……え?」
「頼みますよ!」
いや、タイミング。勝手に決められても困るんだけど!? そう思いながらあたふたしていれば、アウローラは、私を信じてか飛び込んでしまった。だから、どのタイミングでの、いちにさんなのだろうか。信用してくれているという点に関しては、いいのかも知れないけれど。
私は、防御魔法を駆使しつつ、アウローラのタイミングを待った。というか、待つしかなかった。本当に無茶をすると、でも私も昔はそうだったから、人のことを言えないなと思った。もうやるしかないのだから。
「ステラ様!」
「え、はい!いちにのさんですよ!」
「え、え、だから――」
「いち、にの、――さん!」
本当にどんなタイミングなんだと思った。でも、言われたからには何かしらの魔法を撃たなければと、身体が瞬間的に動く。私は氷の柱がガッと表に出てきた瞬間を狙い、火の魔法を放った。イメージした。光魔法が放つ、火の魔法とはどんなものか。
私の手から飛び出したのは、白い炎だった。属性の得意不得意によって、色が変わるのだろうか。神秘の炎が、氷の柱を全てとかし尽くし、核が露わになる。今なら狙えると、私は思わず叫んでしまった。
「アウローラ今!」
「分かってますよ――と!」
彼女は特大の爆弾を、核にむかって投げつけた。あんなに大きな爆弾を軽々と持って。きっと、それも彼女は調節しているんだろう。どうやったら、そんな魔法が使える余蘊あるのか。ここから出たら、教えて貰えるだろうか。そんなことを考えながら、私は見守った。彼女の、その爆弾の威力を信じていたから。
案の定、彼女の爆弾は、核に命中し、まばゆい光を放った。爆発に巻き込まれる事はないだろうと思いつつも、私は彼女に手を伸ばしていた。
「アウローラ!」
パシンと手と手が触れ合う。何とか、彼女の手を掴めたようで、私とアウローラは、眩しさ故、目を閉じて、その白い光に包まれた。
「んん……」
「ステラ様死なないで下さい、ステラ様!」
「し、死んでない……って、アウローラ」
「よかったです。目を覚まさなかったら……と思ったら!ね!」
ね! なんて、どんなごり押し言葉だと思った。それに、核を潰したのだから、私達が死ぬことはない。ということは、アウローラは、知らなかったかも知れない。先にいっておけばよかったなあと思いながら、私は辺りを見渡した。肉塊の姿は何処にもない。倒すことが出来たのだろう。先ほどよりも、温かな場所に出たが、まだ肌寒さは感じていた。
「大丈夫ですか。凍死していないですか」
「凍死してないから、大丈夫……えっと、アウローラは?」
「何ですか?」
「大丈夫……?爆発に巻き込まれたりは……」
「自分の魔法で、攻撃喰らうわけないじゃないですか。ステラ様だって、自分の火の魔法で、攻撃を受けないでしょ?それと一緒です」
「自爆とか……」
「しませんし!まあ、そんな風に喋れるなら安心ですね!」
と、彼女は笑っていた。それでいいのかと思ったが、これ以上突っ込む気にはなれなかった。
私は、身体を起こして、もう一度辺りを見渡す。後ろには大きな壁があり、フィーバス辺境伯領と、外を阻むものだと察した。最初はここじゃなかったから、肉塊の中に居るうちに、肉塊がここまで移動していたんだろう。
「……」
「ステラ!」
私が、深く考えていると、聞き覚えるのある声がし、私はパッと顔を上げた。その横で、さらに目を輝かせて尻尾を振っているアウローラ。
護衛もつけずに、この人は……というか、なんで。
「お父様」
「ステラ、大丈夫なのか」
「大丈夫なのかは、お父様の方です。何故外に?」
「……一時的に、結界を広くした。だが、長くは持たない。ステラ、何故ボロボロになっているかは、帰ってから聞く、いいな?」
「はい」
何だか目が怖い。きっと心配してきてくれたんだろうけど、リスキーな。で、もの凄く怒っているように見えた。そんな隣でアウローラは、ブンブンと尻尾を振り続けていて、何だか、さっきの事が嘘のように、私はドッと疲れが出てきた。
「帰りましょうか。お父様」