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がくじゅつてき・あかげ
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午後、色々調べてみた。日給1.5万円が相場だから、倍にしたら3万円か。2人に月20日来てもらうとして、月120万。これが躊躇なく払える掛川さんの遺産、本当にすごいな……。 家事使用人は労災保険なし、社会保険なしで雇えるんだって。でもそれはどうなのかなあという気がする。家事もする労働者として雇ったら、その辺ちゃんとしてあげられるかなあ。
さらに調べてみた。労災保険と社会保険に入ってもらうなら、雇ってから10日以内に書類そろえて電子申請しなきゃいけないのか。うーん、まあ家から出ないなら何とかなるかな、社労士さんのオンライン相談も予約しておこう。手取りで60万払いたいから、その分お給金増やさないといけないな。
翌日。トマトスープとハムエッグとバタートーストの朝ご飯を食べたあと、私はいろんなテンプレートを使って、とりあえず雇用契約書兼労働条件通知書の雛形を作った。ヤカにも見てもらって、細かいところを詰めていく。
「やってもらうこときっちり決めすぎると予定外のことが起きた時困るから、広めにとって家事一般、買い物、雑用、および雇用主の外出付き添いその他をやってもらうってことにしたんだけど、どう?」
{いいと思う}
「住み込みのほうがいい? 通いのほうがいい?」
{日中ずっといてくれるなら、あとは相手の好む方に決めてくれて構わない}
「そうね、その辺は相談で。住み込みなら食費と部屋も考えなきゃいけないけど」
他にもいろいろ相談し合ったけど、あとはお弟子さん達本人と話し合わなきゃわかんないねってことになった。明日を待つかー!
結構作業した割に、二度寝しようという気にならなかった。珍しいな、私にしちゃ。
達成感を感じていたら、ヤカがお昼を持ってきてくれた。ケチャップたっぷりスペイン風オムレツとポークビーンズとバケットのガーリックトースト。2人でいただきますをして食べる。
「おいしいー、じゃがいもほっくほく」
{午後は寝てしまうか?}
「意外と寝なくても大丈夫そう。久々にYouTube見ようかな、追ってるVTuber……その、配信者がいてさ」
{あの水色の髪の漫画の少女か?}
「あ、見てた? まあ漫画じゃないんだけども」
{?}
不思議そうに首を傾げるヤカ。私は説明した。
「えっと、今は技術が進んでてね。絵の人間とか、仮想空間上の3次元の人体を、現実の人間の動き通りに動かせるのね。私が見てる子、柴胡ロジーっていう名前なんだけど、裏に人がいて、その人の動き通りに絵とか3次元の人体データが動いてるの」
{……? 着ぐるみのようなものか?}
「そうね、バーチャル着ぐるみみたいなもんね。で、そういうバーチャル着ぐるみを着て、面白おかしく喋ったり、面白おかしい企画をしたり、面白おかしく実況しながらゲームしたりする人たちがいて、そういう人たちをバーチャルのYouTuber、略してVTuberと呼ぶ」
{知らない言葉だ……}
ヤカはずっと不思議そうだ。そりゃ80代のおじいちゃんとずっと暮らしてたなら、知る機会ないよね。
「で、その水色の髪の子、柴胡ロジーも裏に人はいるんだけど、着ぐるみの中の人のことを聞くのは野暮よね。VTuberの中の人、魂ともいうけど、それを詮索するのはタブーとされています」
{知らない世界だ……。しかし、あの子の話は面白いと思う}
「でしょ! あの子しゃべりで大人気になったからね! やってみた企画もいっつも面白いし!」
私は思わず身を乗り出した。
{あなたはあの子が好きなのか?}
「ふふ、まあ、好きと言っていいのかな」
推しとは、少し違う。でもあの子が活躍することを祈ってる。他の人があの子をほめてくれたら、嬉しい。
{その……私もその、柴胡ロジーの話を一緒に聞いて構わないだろうか?}
「うん、一緒に見よ!」
お昼が終わってから、ヤカと二人でタブレットを見る。ヤカのことでバタバタしてた間に、企画動画1本、毎週のおやすみロジック配信、ゲーム実況の配信が上がってた。どれから見ようかな。
ヤカが触手で企画動画を示した。
{この、「【多摩川】鯛でエビを釣る【荒川】」というのを見てみたいのだが、いいだろうか?}
「見よ見よ」
私は早速動画を流した。柴胡ロジーがかわいらしい声でしゃべりだす。
「エビで鯛を釣れるなら! 鯛でエビを釣るのはアリなのか! 釣れたらおいしく食べよう! そういう訳で、テナガエビ釣りの名所に鯛と仕掛けを持って挑戦してみました!」
テナガエビ釣りの解説とともに、本格的な釣りの仕掛けがドカドカ映り、鯛のお刺身も映る。贅沢な企画……いや、私、食べようと思えば鯛のお刺身なんていくらでも食べられる懐になったけども。
ヤカが聞いてきた。
{この子は、こういうことばかりしているのか?}
「こういうことばっかりしてるから人気」
{よくやるな……しかし、見てみたくはなる}
「こういうことばっかりやってるのがYouTuberだから。たくさん見てもらえたらたくさんお金入る仕組みになってるから」
{なるほど……}
なんだかんだでヤカは面白く見ていたようなので、私は次におやすみロジックの配信アーカイブを開いた。
{面白く話すものか?}
「うんそう、さっきの動画は編集したやつだけど、おやすみロジックは夜に生放送でやってて、私たちはその記録……アーカイブを見る感じ」
{録画なのか}
「まあ、似たようなもんね」
それから、二人で柴胡ロジーのおやすみロジックを聞いた。
ヤカに会うまで、私はずっと一人で柴胡ロジーの配信を見てた。実家で、ずっと一人きり。だから、柴胡ロジーの配信を誰かと一緒に見るだなんて、しかも肩を寄せ合って一緒に見るだなんて、想像もしてなかったな……。
コメント
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みぅです🤍読了しました。 第34話、お昼ご飯シーンがあったかくて、ほっこりしましたね。ヤカが触手で動画のタイトルを指すところ、めっちゃ可愛かったです(笑)VTuber「柴胡ロジー」の説明を一生懸命する主人公と、不思議そうに首を傾げるヤカの温度差がすごく良くて、でも最後に肩寄せ合って一緒に見る展開……「一人で見てた配信を誰かと見る」って、それだけでぐっときました。日常の積み重ねがじんわり沁みる回でした🥀