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暗闇の精神世界は、レクト・サンダリオスの意識を冷たく締め付ける。
父を乗っ取る何者かがレクトを閉じ込めたのは、
レクトの心の中だった。
そこに閉じ込められたレクトは、目の前の炎に照らされる。
黒い瞳が闇に光り、炎魔法が不自然に脈動し、黒い瘴気が渦を巻く。
「そんなに言うならこれまで活かした技を使え、レクト。俺を倒してみろ。」
パイオニアの声は低く、嘲笑が虚空に響く。バトルが始まる。
レクトは杖を握って、フルーツ魔法を起動する。アルフォンスに教わった形状変化、スイカ割りで掴んだ感覚制御を呼び起こす。
「絶対に負けない!」
杖からドリアンが現れ、緑と茶の棘が鋭く尖る。
星型みかんの技を応用し、棘を刃に変える。
「これで突き刺す!!」
無数の棘がパイオニアに向かって飛ぶ。
だが、彼が手を振ると、炎が渦を巻き、ドリアンを一瞬で焼き尽くす。
灰が暗闇に舞い、焦げた果実の匂いが鼻をつく。
レクトの額に汗が滲み、息が乱れる。
「くそっ、こんなの……!」
パイオニアが笑う。
「無駄だ。」
彼の手が動くと、レクトの体が勝手に震える。
果実の瘴気が心を縛り、フルーツ魔法が暴走する。
「何!?」
杖から新たなドリアンが生まれるが、意思に反して棘が無数の槍に変わる。
暗闇に人影が浮かぶ――
ヴェル、ビータ、カイザ、セレスティア魔法学園の生徒たち。
彼らの顔は、レクトを忘れた無表情そのものだ。
「え……え……?」
レクトは叫ぶが、ドリアンの棘がヴェルに向かって飛ぶ。
「ヴェル、逃げて!」
棘が彼女の頬をかすめ、赤い血が一滴落ちる。
ビータの腕を掠め、カイザの肩を浅く刺す。
レクトは必死に抵抗する。
ビーチでヴェルが笑い、カイザが海のトラウマを話した近い近い夏の記憶が胸を刺す。
「やめろって!」
だが、瘴気が意識を締め付け、ドリアンの棘は止まらない。
次の瞬間、
鋭い棘がヴェルの胸を貫き、
ビータの腹を突き、
カイザの首を刺す。
血が暗闇に飛び散り、悲鳴が虚空を裂く。
「やめろって……っ!!!!」
レクトは頭を抱え、発狂する。
精神世界の惨劇は、冷たい現実を映す。
外世界では、パイオニアの力で操られたレクトが、
セレスティア魔法学園を破壊する。
校庭にドリアンの棘が雨のように降り注ぎ、
芝生を血で染める。
星光寮のステンドグラスが砕け、破片が朝日を浴びて虹色に散乱する。
生徒たちが叫びながら逃げ惑うが、棘は容赦なく彼らを貫く。
ゼンが校庭の隅で立ち尽くし、棘に胸を刺される。
血が彼の制服を赤く染め、静かに倒れる。
フロウナ先生が風魔法で生徒を守ろうとするが、果物アレルギーで咳き込み、棘に膝を刺されて崩れ落ちる。
「生徒たちを……!」
彼女の声は途切れる。
食堂では、ヴェルが震度2の魔法で机を揺らし、
逃げようとするが、
ドリアンの棘が彼女の肩を貫く。
「うっ!」
血が床に滴り横たわる。
ビータは時間遡行を試みるが、棘が彼の背中を突す。
カイザは電気魔法でスパークを放つが、棘が首を貫き、倒れる。
「くそ……何だ、これ……」彼のスパークが弱く瞬き、消える。
星光寮の廊下は血と果汁に濡れ、ステンドグラスの破片が月光のように光る。
学園は1分間で地獄と化す。
グランドランドの街も同じだ。
市場の屋台が棘に砕かれ、
商人や市民が血を流して倒れる。
シャドウランドの塔が崩れ、ストームランドの港が炎に包まれる。
火事が広がり、煙が空を覆う。
国民はパニックに叫び、逃げ惑う。
たった1分間の惨劇――レクトのフルーツ魔法が、かつて学園を救った巨大レモンとは逆に、破壊の刃となる。
血と果汁が地面を濡らし、焦げたドリアンの匂いが風に混じる。
精神世界で、パイオニアが嘲笑う。
「戦争なんて興味ない。このまま全部壊してダメにすればいい。」
彼の炎が暗闇を照らし、レクトの操られた体が次々とドリアンを召喚。
棘が世界を貫き、血と炎が広がる。
「お前は私の傑作だ、レクト。フルーツ魔法で全てを滅ぼせ。」
炎が渦を巻き、黒い瘴気がレクトの体を締め付ける。
ヴェルの血、ビータの倒れた姿、カイザの最後のスパークが頭を埋める。
「いやだ……こんなの、俺じゃない!」
レクトの意識が薄れ、気を失いかける。
だが、仲間と笑った時間が、胸の奥で微かに光る。
「ダメだ……!」彼は目を見開き、力を振り絞る。
「フルーツは人を殺す道具じゃない……本来戦う道具でもない!」
叫びが暗闇を震わせる。
バナナの杖から更にバナナが生まれる。
連鎖技を思い出し、バナナが黄金の杖に変化。
黄金の杖を振り、輝く光が暗闇を切り裂く。
「なに……!?」
杖の先から黄金の果汁が迸り、
パイオニアの炎に突き刺さる。
「うあああああああ!」
光が彼を包むが、
瘴気が再びレクトの体を縛る。
パイオニアが笑う。
「……っ、無駄だ。瘴気はお前を離さない。」
炎が杖を焼き、黒い煙がレクトを覆う。
反撃は届かず、意識が沈む。
外の世界では、操られたレクトのドリアンが学園と街を破壊し続ける。
校庭は血と棘に埋まり、星光寮の壁が崩れる。
国民の叫び声が空を裂き、火事が世界を赤く染める。
それでもレクトは諦めなかった。
黄金の杖の輝きはまだ始まったばかりだ!
次話 11月15日更新!