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マットを折りたたんで仕舞った後、テントの外に出る。
テントも半ば凍り付いているのを、何とかたたんで仕舞った。
「何か、凍った分だけ重いような気がします」
僕はテントの下に敷くシートをザックに入れている。
テント本体を持っている先生は、もっと重く感じるだろう。
「でも帰りは楽ですよ。距離自体、短いですしね」
実際、そうだった。
もう足が雪に慣れているので、アイゼン無しでも普通に下りられる。
多少滑っても、それなりにバランスを取れたりもする。
「これって、尻餅をついた姿勢で一気に滑れば、早いような気がするのだ」
「そういう下り方もありますよ。靴の裏で滑りながら下りる方法をグリセード、お尻で滑り降りるのをシリセードって言います。ただ、こういう登山道でそれをやると、登る人が段差が無くなって大変になるんです。だから、ちゃんと歩きましょう」
そんな話をしながら、どんどん下りる。
時々、ちょうどいい枝があると、誰かがピッケルで叩いて雪を落としたりもする。
舞う雪がきらきらして、やっぱり綺麗だ。
そんなこんなで休憩1回、2時間もしないうちに温泉まで辿り着いてしまった。
「温泉は、車に荷物を置いて、着替えを持ってきてから入りますよ」
「全て了解なのだ!」
ああ、また3時間待たされるのか。
思わず、僕はため息をついてしまう。
◇◇◇
温泉は、僕が思った以上に良かった。
温泉そのものは、大きい浴槽と小さい浴槽、それに打たせ湯があるだけ。
露天風呂は、この寒さなので当然無い。
でも、木と石を組み合わせた凄くセンスのいい、いかにも山の湯という作りだ。
浴槽も熱めとぬるめがあり、さらに打たせ湯は、じつは水で結構冷たい。
これを交互に入ると、それなりに時間も経つ。
入る前に、
「帰りの時間もあるので、今から90分。午後1時に集合して下さいね」
と先生が指定。
でも、そのうち1時間以上、ゆっくりと風呂を堪能してしまった。
しかもこの宿、剥製だのドライフラワーだの、色々飾ってあったりして面白い。
こんな所に泊まるのも面白いかな、と思ったくらいだ。
成分のせいか、時間が経っても暖かい感じが続くし。
風呂がスーパー銭湯ほど広くないせいか、今回は亜里砂さんもしっかり時間を守ってくれた。
結果、僕も全然待たずに済んだ。
そんな訳で、気分良く車に乗る。
◇◇◇
「皆さんは、この後の冬休みの予定はどうですか。私は実家の手伝いがあるので、28日から4日まで実家なのですけれど」
「私と未亜は実家です。4日までは行事がありますから」
美洋さんは、ちょっと大変そうだ。
「私は実家、と言っても縦浜のマンションに帰るだけなのだ。父が29日に帰ってくるので、頑張って残りの山用具もせしめてくるのだ」
おいおい。
でも、ふと気づく。
そう言えば、亜里砂さんはお父さんの話ばかりで、お母さんの話はしないな。
でも、それは聞かない方がいいのかな。
「僕は年末、30日に実家に帰って、2日には戻ってこようかと思っています」
僕は特に親戚付き合いをするわけでも無いし、親しい友人がいる訳でも無い。
だから、何か理由をつけて、さっさと帰ってこようと思う。
「私は冬は寮に残留だな。彩香もか」
「うん」
「なら2人で年越しそばでも食べて、初日の出を見て、初詣でも行こうぜ」
何かそっちに参加する方が、実家にいるより楽しそうな気もする。
まあでも、帰らないとまずいだろうな。
車の中でそんな事を思いつつ、冬合宿は幕を閉じた。