テラーノベル
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第2話 久しぶりのはじめまして
次のイベントへ行こう。
あの夜そう決めた私は、その約束を思ったより早く果たすことになった。
その日も本来の目的は別にあった。
研修の一時帰宅中、配属先へ通うための通勤経路を確認する日。
だから親にはアイドルのイベントへ行くとは言わなかった。
嘘をついたわけじゃない。
実際に通勤経路の確認もする。
ただ、そのついでに会いに行くだけだった。
そう、自分に言い聞かせていた。
会場へ向かう道中は少しだけ緊張していた。
二年。
たった二年かもしれない。
でも私にとっては長い時間だった。
会場に着くと、ステージには見覚えのある姿があった。
もちろんメンバーの変化はある。
二年前とは違う部分もたくさんある。
それでも不思議なことに、ステージから伝わってくる空気は変わっていなかった。
懐かしい。
そんな気持ちが自然と浮かんだ。
ライブはあっという間だった。
そして特典会。
並びながら、何を話そうか何度も考える。
だけど順番が近づくにつれて頭の中は真っ白になっていった。
最初に話したのは隼也くんだった。
「初めましてだっけ?」
そんな言葉に思わず笑ってしまう。
二年前に一度だけ会ったことがあることを伝える。
名前の話になり、どうしてまた来ようと思ったのか聞かれた。
上手く説明できた自信はない。
ただ、ずっと行きたいと思っていたことだけは伝えられた気がする。
「来てくれてありがとう」
その言葉が嬉しかった。
たったそれだけなのに、来て良かったと思えた。
次に話したのは滉明くんだった。
こちらも二年前に一度来たことを話す。
でも話したことはなかったらしい。
「それじゃあ、はじめましてだね」
そう言われて少しだけ笑った。
確かにそうかもしれない。
二年前に同じ場所にいたとしても、こうして言葉を交わすのは初めてだった。
三部もいるのかと聞かれて頷く。
楽しんでね。
そう送り出してくれた。
特典会が終わったあとも、しばらく余韻が残っていた。
二年ぶり。
正直、少し怖かった。
覚えられていなくても仕方ないと思っていた。
初めましてみたいになっても当然だと思っていた。
だけど、それで良かった。
むしろ嬉しかった。
またここから始められる気がしたから。
帰り道、私は思っていた。
やっぱり来て良かった。
そして。
また会いたい。
今度は二年も空けずに。
あの日の私は、ただ再会できたことに満足していた。
だけど数日後、このイベントをきっかけに思いがけない出会いが待っていることを、まだ知らなかった。
第3話「思いがけない出会い」へ続く。
水 翠 蝶 夢 /猫星みゅう
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うんちくん
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コメント
1件
ともともさん、2話読みました!「初めましてだね」の台詞にすごくグッときました。2年のブランクがあっても、言葉を交わすのが初めてなら“初めまして”でいいんだという発想の転換が温かいです。それでもちゃんと“久しぶり”を覚えている隼也くんの優しさも相まって、読後感がとても柔らかかったです。次、どうなるのかな?